サニーサイドアップフォーチュン

映画、特撮、演劇、ダンスボーカルグループ

映画『爪先の宇宙』感想

映画『爪先の宇宙』を観てきたので感想を述べる。

うまくリンクが貼れなかったので、ストーリーを転載すると以下のようになる。

漫画配信アプリ「comico」連載の同名漫画を実写映画化。固く心を閉ざし、人とのかかわりを絶って生きてきた主人公の再生の物語を描く。高校時代に親友から放たれたある一言がきっかけで心を閉ざし、親との関係も原因で思ったことを口に出すことができなくなってしまった吉河亜紀。自分を変えるために小さなカラオケボックスでアルバイトを始めた亜紀は、バイト仲間との交流を通して少しずつ変化していく。

爪先の宇宙 : 作品情報 - 映画.com

ちなみに、いろいろ思うところはあるが私はこの映画嫌いではない。なんなら少し泣いた。

 

・ダブル主演という形をとったことについて

主人公はアキちゃん(演 桐嶋ノドカ)だ。そのため、まずはアキちゃんがトラウマを乗り越えていく必要がある。アキちゃんのトラウマはそれ即ち高校時代の友人との揉め事である。アンジ(演 北村諒)はそのトラウマに対するアキちゃんの向き合い方に口を出したりというよりは、トラウマに苛まれたあとのアキちゃんに関わる「うまくいかない人間関係」の代表である。(うまくいく人間関係はユメコさん)

アキちゃんの社会復帰を助けるという意味で、アンジのぶっきらぼうさに自らアキちゃんが歩み寄らなければならないという意味で、ある種アンジの存在が訓練であったというのはストーリー的に理解できる。

が、それだからと言ってアンジが主演の一人となるのはなんかよくわからん。主演ならもっとアンジの見せ場あってもいいと思う。上演時間は67分。あと30分頑張って、アキちゃんとアンジの始まりかけの恋みたいなの見せてくれるだけでも良かったのに。

映画では若干アンジの家のこととか将来のこととか匂わせて描いて、アンジがアキちゃんという不安定で変化して行こうとするものに出会って、少し変わって行こうとしている(=成長)みたいな描き方してたけど、それも薄くて主演というには物足りなかった。

アンジの主演感が薄すぎて消化不良。

 

・唐突な恋愛フラグ

例えば調理場担当のアンジの隣で皿を洗うとか、事故きっかけでアキちゃんのトラウマをアンジが目の当たりにするとか、そういう地味なフラグは序盤から立っている。漫画も確か立っていた。

ユメコさんが前髪をいじって来たアキちゃんの変化に気づいて、こう言う。「男子気づくかなあ」私は思う。今までのどこにアキちゃんがアンジに惚れる要素があったのと。今にして思えば「上手くいかない人間関係」であったためにアキちゃんが積極的に関わろうとして、それが恋愛的なやつにすり替わったのかなとも思うけど、そんな事推測しなきゃわからんというのもアレだし、推測ということは私の深読みでしかない気もする。

でも最後急にトラウマを乗り越えたアキちゃんがアンジに前髪のことを訊いて、アンジがアキちゃんの好意をちょっと察する。で、映画が終わる。消化不良!

例えば少しずつ恋愛しながらクライマックスでトモちゃん(アキちゃんの友人、トラウマの元凶)と和解し、それをアンジが見守り、初デートの約束へとかだったら良かったのにと思って漫画読んだが、そんなことしたら原作丸無視ということになりかねなかった。

 

・やりたいことはわかる気がする

まあまあ、つまりこういうことなんじゃないの?

 何一つわかってない? だとしたら済みません。

私が言いたいのは、「若い女子向けスイーツ映画みたいに綺麗な登場人物と綺麗な色を綺麗に撮りたかったんじゃないの?」ということだ。

(なぜ近キョリ恋愛のドラマのリンクかというと、まともに見た若い女子向けがこれしかないから)

ときおり挿入されるスーパーボール演出や、雨に打たれていろんな光を反射する窓とか、そういう事かなと思った。

星モチーフを連想させたいんだったらこの項目は私の深読みだわ、ごめん。

序盤斜めから登場人物のことを映したり、画面揺らしたりしてたのが後半おさまって、だいぶ見やすい感じしたけどあれなんなんだろうな。シャフトかよと思ってたけど後半はそんな事も忘れてた。

 

・曲

映画の途中で主題歌とか流れてくるんだけど、その曲聴いて「ノイタミナみてえだな」と思ったら、ほぼほぼ正解だった。

ryo (supercell)のこのノイタミナ感な。

結構好き。

 

 

……と、まあこんな感じだ。

正直、ネットの漫画にありがちな「やたらトラウマを持っていて親とも上手くいってないヒロイン」アキちゃんも、性格のキッツいトモちゃんも、絶妙に感情移入できないのだが、この二人の関係性は、高校時代(ともすれば中学生時代)の閉塞的な関係性を彷彿とさせて仲直りの場面で少し泣いた。

 

以上!

 

『ジャー忍』『青エク』『Kステ』感想

いや舞台行けよみたいなね、気持ちにもなるよ、わかる。

タイタニックすらキャス変するからね、それについて書けってわたしの中のわたしが言ってる。

でもさ、また抜歯したんだよね。前回割とメソメソしたんだけど今回超余裕。痛い思いはしたけど前回に比べたら屁でもないから2回目というのはすごい。

 

そんなわけでしばらくぶりに舞台を観た。面倒なので一気にまとめる。なぜならモチベ皆無からの舞台週間だったからだ。

行くまでめちゃめちゃ具合悪かったのに、席着いたら急に元気になったのでまあそういうことだろう。

 

先に謝っておきたいのだが、Kステの感想がクソほど長い。そしてキモい。マジでごめんなさい。

 

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映画『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』感想

私は今、映画館近くのカフェでナポリタンを食べながらこの記事を書いている。

正確にはデザートのシフォンケーキまでしっかり食べた後に書いている。

今日は交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1の映画を観にきた。

私は、緊張しいだ。そして今回はうっかり前評判を調べてしまった。あまりの緊張に我慢できなかったのである。

なのでわずかばかりの情報は知っている。例えば「モーニング・グローリー」の手前で終わること。字幕の評判がクソほど悪いということである。

 

で、観てきたため感想を書く。

 

めっちゃ泣いたんだけど?

 

確かにみんなが言わんとしてることはわかる。字幕変わるの早いし時間関係が前後しまくっていて今がいつなのか、レントンはいつ軍学校を出て月光号に乗ってそこを出たのか、そういうことがわかりづらい。

たぶん、そこを理解させるために作ったわけじゃないんだろうなという風に感じた。時系列についてはパンフレットを買おう。

たくさん出る字幕は「これだけの情報量を必要とする部隊がこんなにあっけなく壊滅しました」という一つの指標であり、または「これだけの周囲との関係性がある人であってモブではありませんよ」という一つの示し方であり、字幕がたくさん流れてすぐ消えるのはとてもかっこいいという至極簡単な論理に基づいている印象があった。

つまりわざわざ読む必要はほとんど無く、考えるな感じろで充分なはずだ。

だいたい、字幕を読んでいたら冒頭の最高にかっこいい空中戦を見逃すことになる。この映画のとても重要なシーンはその「サマー・オブ・ラブ」で間違いない。

なんというか、好きなものを語るにあたっては好きであるという文脈の元でしか語れないとひしひしと感じている。

 

と、いうわけで感想である。バリバリに内容に触れることをご了承いただきたい。

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『宇宙戦隊キュウレンジャー Episode of スティンガー』

生まれて初めて特撮の現場に赴いた話をしたい。

 

生まれて初めての歯痛から数週間、経過も良好なれば舞台に行ったりフォト買ったりしていた結果、Vシネマ宇宙戦隊キュウレンジャー Episode of スティンガー」舞台挨拶付き完成披露上映会に行ったりして来た。

発売自体は10/25のためストーリーのネタバレはなしである。演出とか感じた事はガンガンに書くけど。またこういったジャンルについて言及することが初めてのため、問題があれば教えて欲しいと思う。

 

・内容の話

おっも……!! キュウレンから特撮デビューをした私にはキュウレンのハードさも驚きの事実だったのだが、めっちゃくちゃに重い。会場にいた小さなお友達のみんなは果たしてどうだったのだろう、おいてきぼりじゃなかったろうか。

それくらいハードだったが、先日の本編がメサイアの如しだったわけだか、それよりかはつむ鴨である。救いのなさが時代と故郷を憂う愛国の志士といった趣きを感じる。スティンガーは故郷のために兄を討たねばならず、その運命の過酷さと反して仲間は温かく、相反する二つに挟まれている彼はいかなる時でも最も人間くさく生きているな、と思った。宇宙人だけど。正義とか、世界のためとかいう理由で行動しない彼は、ラッキーと対になるような主人公的な気質の持ち主なわけで、つまり何が言いたいかというと「スティンガーのサイドストーリーって本編と雰囲気変わって絶対に良い感じだよね」ということである。

アクションもとてもかっこよかった。生身でのアクションや、映画であるからよりお金をかけて工夫されてる感じがとてもかっこいい。ワイヤーアクションでクルクルクルっと回転しながらのアクションがあるのだがそれがクセになるかっこよさである。本編でもやってくれ〜〜。

生身のアクションがとても多くて、それがとてもかっこいいが大人向けといった印象を持つ。特撮に明るくないのでなんともなのだが、変身→強化→戦闘という段階を踏む事で、登場人物がどう考えても人間より強そうな怪人と立ち向かう力を得る理由付けとなっていると思っていた。それは子どもたちにとってわかりやすい強さの表現の一つでもあるだろうし、変身によって極力生身感を抑えれば、戦闘の持つ暴力性を抑える事にも繋がるのかもしれないし……という事もあったりするんじゃないかと考えていた。今回は生身でのアクションが多く、それはほとんど喧嘩といって良いものから戦闘まで様々なのだが、あまりにも生々しいと思った。これはアクションというより、殺陣である。差はよくわからないが、もはや殺気立った画面は舞台でよく見るあの殺陣となんら変わらないと思った。

ハードボイルドなストーリー、命のやり取りの殺陣、そしてセクシーなヒロイン。完全に大人が好きなやつである。ちょっと涙ぐんだ。

公式学パロも可愛かった。学ランやブレザーの割り振りがあまりにもわかってるな……という感じである。

 

・周りの環境の話

めっちゃ子どもいる〜〜〜〜可愛い〜〜〜〜!!!

老若男女いる〜〜〜〜不思議〜〜〜〜!!!

 

・キャストの話

かっわ……。

岸くんのインスタライブ見たいがためにインスタを始めたわけだが、その岸くんの生歌をお聞かせいただいた。うま。歌うま。

あとキャスト、かっわ。

 

そんなわけでハードボイルドなスティンガーのスピンオフはなんとイッカクジュウキュータマが付いてくる初回限定版もあります!

 

 キュータマついてこない方。

 

宇宙戦隊キュウレンジャー Episode of スティンガー [Blu-ray]

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日記

抜いたぜ。

 

順を追って説明しよう。

 

朝と昼のちょうど間で予約してあり、朝胃に詰め込めるだけ詰め込んでから出発。到着し、緊張で無愛想になる私に対し歯医者の先生「無愛想じゃない?」

 

緊張してるんですよ、先生。

 

麻酔を塗られる。この時点で口の中がかなり熱い。じんわり麻痺していくのがわかる。

 問診。アレルギー云々について確認される。つい先日まで抗生剤を飲んでいたため、その旨申告。「ずいぶん強いの飲んでるんだねぇ」とのお言葉を頂戴する。まあもう持病と言っても過言ではないので、仕方がない。

 

一本目の注射。チクリとする。歯茎の内側二箇所、外側一箇所。のように感じた。正直、この辺りで表面的な麻痺に関して結構効いており、確かな感覚とは到底言えない。

また、ずいぶん診察用の椅子が倒されており、自動車免許のために習った気道確保を思い出す角度で口を開けている。鼻の穴も見えていることだろう。

 

約五分の待ち時間。マッサージしろと言われもちもち頬を押す。

 

二本目の注射。触った感覚がある。歯と歯茎のちょうど境目くらい。2回ほど。場所まではもうわからない。処置されるたびにうがいをする。面倒なのでうがい事情までは書かない。

「ちょっと触ってみるけど痛かったらすぐに左腕を上げてね」と言われながら、なんか金属的な音を立てるものと手で歯を突っつく。「痛いとかある?」「無いです(こんなに綺麗に発音できてはいない)」「よし抜こう」

なにか金属の器具が口の中に突っ込まれるが、必死に視線を外している私にはそれが何かを判別することが出来ない。

歯ががっちりホールドされているような感覚。恐らく何かペンチ的なアレで挟まれている。口の端に一瞬冷たいものが当たった。歯科衛生士さんと二人掛かりで口をと顎を押さえられながら、みしみしという音が歯に近い方の耳に聞こえる。先生がしきりに「痛かったら言ってね」「ほら抜けてるよ」「別のこと考えよう、帰ったらどんなテレビ見るとか」と言ってくれる。私はキュウレンジャーのことを考えながら顔をしかめて耐える。

親知らずと言えど元気な歯を抜くので、筋力のない私の首は歯につられて動きそうになるが、先生のびっくりするくらいの握力で顎を固定されているので、この時は顎の方が痛い。歯がずれる感覚がする。歯が移動する、というか、なんか存在感が無くなるのがわかる。体感一瞬、本当に30秒とかからず抜けた。

 

「持って帰る? 歯」

「いらないです(こんなに綺麗に発音できてはいない)」

傷口に抗生剤を放り込まれた後、今まで噛んだことのないどでかいガーゼを口に突っ込まれ、頭を倒したまま10分それを噛み続けた。そしてガーゼを取り替えてから、今度は体を起こして20分。あまりに噛まされているガーゼがデカイため、口の中がガーゼで渋滞し、周りの、例えば頬の肉とかの方が痛い。力がかかるべき歯が無いため、どれくらいの強さでガーゼを噛んだら良いかわからず戸惑う。「強く押さえなければ止血にならない」と先生。麻酔が効いているので、ガーゼを噛んでいる感覚が薄く、不安感がある。

最後にさらにチェックされ、新しいガーゼを噛み帰宅。30分程度したらガーゼを捨てて大人しく寝ようと思いつつ、ご褒美にキュウレンジャーを見る。

今週のキュウレンジャーはとてもメサく、バランスとナーガの幸いを願うばかりだが、今時の子はこのようなハードなものを見ているのかと思うと大層恐ろしい。

 

キュウレンジャーも半分を過ぎた辺りから、「あれ……歯(の跡地)、痛くない……?」と薄々痛いことに気付き始めたので、大人しく寝ることにする。ロキソニンと抗生剤を細々としたわずかな水で飲み、いそいそとベッドに横になる。痛い。最初に痛み始めた時とは違う。なぜなら歯がないから。周りの歯をグイグイ押して痛いわけではない。大穴がズキンズキンと痛む感覚。血の味がする。洗面台に吐き出して映画みたいな気分を味わおうかと思ったが、歯医者を出るときに先生に「無闇に吐き出したりして塞がりかけの傷口のかさぶたまで吐き出さないように」という言葉を思い出して、余計なことするのはやめようと思った。

 

その後、麻酔が切れる前に寝ることに成功し、今起きてレポを書いている。

 

今、とても、痛い。

 

寝ようと思うのだが、とてつもない空腹でそれをためらう自分がいる。すごいお腹減った。

痛いのにごはん食べれるのだろうか。

日記

生まれて初めて歯が痛い。

 

「?」という顔をした人もいることだと思う。だが今一度言うが、生まれて初めて、歯が痛い。

これまでの人生で虫歯になったのは一回、それも乳歯でそのあとさっさと抜けた。以後、歯茎の血流の不安はあれども、虫歯とは無縁の日々を過ごしてきた。実に、十年以上。

このまま逃げ切れるーー。私はその自信にあふれていた。このまま逃げ切り、85まで自分の歯で煎餅を食ってやると。

 

ある時、異様に歯茎が腫れていると思った。だがそう思うだけで、劇場と弊社は交互に私を追い立て、気づけばひと月……もしかしたらもっと、経っていたのかもしれないが、とにかく幾日か過ぎていた。

 

あんまりに痛むので、「痛え、痛え」と家族にちょろりと口の中を確認してもらった。ありがとう家族。家族と言えど口の中など確認したくはなかろうに。

 

「親知らず生えてるよ」

 

まごうことなき、絶望であった。前回の歯科検診ではなんともなかったはずだ。

 

親知らずを抜くのは、人生の一大イベントである。親知らずに良い話を聞いたことなど一度もない。まずは聞き込み調査だと話を聞いた。以下はその記録である。

「でっかいペンチみたいなので抜く」「抜けない時はハンマーで砕く」「麻酔の注射がそもそも痛い」「麻酔されてるからうがいも満足にできない」「麻酔切れたら地獄」「すげえ腫れる」……

生まれて初めての歯痛に震える女に、伝えたいことはそれだけなのかお前らこのやろう。

 

あぁ、私の親知らずよ。とんでもない生え方をしているらしい私の親知らずよ。頼むからスムーズに抜けてくれ。頼むからハンマーで砕くようなことになってくれるな。というかなんで生えてきたんだ。最後まで歯茎に埋まっていればこんなことにはならなかったしお前も85まで煎餅を食べれたというのに。

 

こうなったら親知らず抜歯レポしてやろう。そうでもしなければ発狂しそうだ。気を確かに持ち、抜歯に臨むしかない。目を瞑れば煌々と光る診察台のライトが見える。絶対に先生から鼻の穴が見えている。鼻の穴だぞ。人様に鼻の穴見せてんだぞ。どんなストレスだ。

 

だいたい本当に歯が痛いのかわからなくなってきた。

この歳にして初めての歯痛ですでに感覚が狂っている可能性もある。もしかしたら大した痛みでないものを「痛い痛い」と無様に言っている可能性もあるのではないだろうか。

 

いや、やっぱり痛い。

 

そうこう言ってる間にも抜歯の時は刻一刻と迫り、もはや目前にある。

 

親知らずを無事抜歯し、咀嚼に不自由を感じなくなった暁には、フランスパンを食べる。

フランスパンを食べるぞ。

『メサイア悠久乃刻』感想

昂まったので自分ルールを破って更新する。

 

〜これまでのメサイアと私〜

『メサイア暁乃刻』感想 - サニーサイドアップフォーチュン

 『メサイア極夜』感想 - サニーサイドアップフォーチュン

 

「もう二度と会えない人、もう二度と立ち寄らない場所、もう二度と触れないもの、もう二度と聴けない音楽」彼女は窓の方を眺めて目を細めた。「人生は、常にそんな別れの連続ですね」

女王の百年密室森博嗣

とうとう来たなーと思う。何が? そう、メサイアが。

しかし有賀さん、すごい半ズボンだな。

 

 悠久、という響きが良くない。幸せかもしれないと思ってしまう。ハッピーエンドかも、せめて翡翠のようにと。

 何をもってハッピーとするかは、本当はわからない。同じ板の上にメサイアがいるだけで幸せなのかもしれない。もし引き金が彼の指の震え一つで左右されたとしても。

「最後のシーンで」か。

希望のある最後みたいに思えるね。

 

間宮の話は、出てくるのだろうか。いや、避けて通る事の方が不自然か。

不自然かどうかを度外視して、極夜で間宮を描いたのだし。

暁で間宮の名を出したのだから、その責任は是非に取っていただきたい。

でもさー、グッズがさー。

「有賀×加々美 メモリアルフォトブック」って……。

終演後から、というグッズの多さが、卒業衣装や後輩メサイアくんたちの組み合わせを匂わせられていて動悸がする。

 

暁の、自分の感想を読み返したら、「暁には社会がない」と書いてあった。確かに、社会というものに向けられた悪意がないのが、暁だった。と思うけど私の感想でしかなくこれが一般論かどうか判断はできない。

じゃあ今回はどんな話になるのだろう。

出生が再び有賀を苛み、加々美にはまだ雲井の影が付きまとう。ということで、自己同一性の物語なのだろうか、と考えている。

 

思えば二人は、アイデンティティが初めから薄かった。生まれも育ちも、利用されて来た二人だ。誰のために、何のために、メサイアのためにという理由すら、暁で確固たるものになったのなら尚更だ。

暁を経た今、二人を規定するのはお互いがお互いの名を呼ぶ声なのかもしれない。メサイアと呼ぶ、その行為なのかもしれない。

だとしたらやはり、有賀は間宮とでは自己を規定出来なかったのかもしれない。メサイアと片方が呼べば拒絶する二人では、きっと。

「言葉は、言葉だけなのに、でも、結局、言葉が嬉しいわ」

女王の百年密室森博嗣

 

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