夜明けの星を待ってる

メロン果汁入りメロンパンは邪道では

万年無気力培養床

なんだかよくわからないけど、会社に行けなかった。

 
その日はなんか、具合が良くなかった。
その日は、というか、前日からおかしかった。
荷物は確かに、普通のOLよりは重いと思う。それにしてもおばあちゃんに追い抜かれた。
いつもならついていける先輩の速度に置いて行かれた。
関節がうまく動かなかった。
ずっと目眩がしてた。
電車で酔った。
でもご飯も食べれていたし、寝たら治ると思ったから、次の日も起きて会社に行った。
飲み会が予定されてた。ちゃんと行った。
ちょっと具合が悪いと思ったくらいでバックれて、幹事や先輩に悪し様に酒の肴にされると思うと、怖くて仕方がなかったから、行った。
私は飲み会が苦手で、それはまずお酒や煙草が苦手だってことに起因するものだと思っている。
お酒は一滴も飲まなかった。食事も、あまり食べれ無かった。飲み会で、食事を摂るのって、どうしてあんなに難しいのかわからない。
煙草は私の意思とは関係ないけど、副流煙に気を使ってくれる人ばかりだと思う。
私は会社の人が嫌いじゃないし、こんなに役に立たないのに良くしてくれてむしろ好きだ。煙草くらい、我慢できなくてどうする。
お酒が回って機嫌が良くなったおじ様方が、私をいじる。食事は進まない。お茶はせめて、コップ二杯は飲もうと思って、追加してもらった。
 
飲み会が苦手なのは、夜遅くなることも含めてだ。
このままだと日付が変わっちゃうんじゃないかなと思った。帰ると言えなかった。
案の定、本当ならもう寝ていたい時間にお開きになった。帰り着くのは日付が変わった後だろうと思われた。
腹痛が酷かった。せっかく座れた、最終間近で混雑する電車を降りて休憩したりした。
休めないと思った。次の日休んで、方々に迷惑かけるのが怖かった。
反面、もうどんなに頑張っても、朝定時に出社するのは難しいと判断してる自分がいた。
だんだん、その諦めてる自分が思考のほとんどを占めて行った。私はたくさん眠らないと動けない人間で、もうその時点でその晩はほとんど眠れないようなものだと思っていたから、もうなんか面倒臭くなって、早く家に帰らないといけないという一心だった。
 
電車が、なんだか理由はよくわからないけど、止まって。全然動かなくなった。
家に着くのは、何時になるだろうと考えた。
乗り合わせた乗客は、誰も怒らなかった。辟易していたのだろうと思うけれど、みんな疲れが身体中から滲み出ていた。
ただ、私の目の前に座っていた、明らかに酒に酔ったサラリーマンが「気分が悪い」と言い出したのには参った。
私の方に体を曲げて、まるで今にも戻しそうなものだから、本当に嫌だった。
 
腹痛が酷くて、でもここでこの電車を諦めたら、もうどうやって帰ればいいかわからないから、耐えた。
せめてあともう少し。二駅、いや一駅だけでも。そう考えてるうちに、いつの間にか最寄駅に着いた。タクシーに乗った。
シャワーだけでも浴びて、楽な体勢を探って体を捩っている間に少し眠ってまた少し目が覚めて眠って、早起きな父の生活音で目が覚めた。
父が何か喋っている。母も起きたのだろうと思った。いつもなら気にならない父の声が私の上長の声と重なって、責めているみたいに聞こえた。こんなところでなにしてる、仕事をしろ。
 
気づいたら、夜がすっかり明けていて、始業時間寸前だった。私は電話をしようと、持って帰ってきていたパソコンを取り出した。体を起こすと、腹から鈍痛がした。もう、本当にお腹が痛いのか、痛いという妄想なのか、わからなかった。パソコンで、誰が会社にいるかを確認することは辛うじて出来た。
でも液晶画面を長時間見ていることができなくて、誰に電話すべきかを判断できなかった。
一番話しやすい人を選んで、その人に電話をした。
せめて半休が欲しい、でももう行きたくない。と子供のように駄々をこねた。その人は方々に話をつけてくれて、寝てなさいと言ってくれた。
痛かったのだと思うのだけど、満足に眠っていない頭ではもうそれもわからなくて、その電話の後気絶するように眠りに落ちた。
 
そのままずっと、昼時を過ぎるくらいまで眠って。ふと喉が渇いたので起き上がった。白湯を飲んで、フォローしてくれている同期に連絡をし、先輩に謝罪の電話をした。
少し食事まがいのものを胃に入れて、またこんこんと眠った。目を開けていたのは一時間だった。
 
そのあと、夕方に一度目が覚めた。私は枕元に文庫本を積む癖があって、一番上の、最後のところを少し残してあった小説を読んで、ツイッターに面白かった旨報告して、また眠った。
 
夜目が覚めて、食事をきちんと摂った。腹痛がまた始まる。今度は、まともに食べてなかった胃腸が急な食事に驚く所為だから、あったかくして、耐えるしかない。
 
怖いのは、こんなよくわからない理由で欠勤した会社に、また行かなければいけないということだ。
熱は、多分なかった、咳もない。鼻水もないし、目に見える不調はきっとほとんどない。
あれだけ気持ち悪くて見れなかった液晶に、今これだけの文章を書き込むことだってできる。
肌荒れとニキビと口内炎が酷かったが、それに気づいてくれたのは家族だけだ。それでも風邪予防のついでに、顔を隠せるマスクをしていたのは、さすがに会社の人だって気づいてくれてるだろうか。
私は、会社をサボったのだろうか。行きたくなかったから、行かなかったのだろうか。それとも、行けなかったのだろうか。
体調が悪かったのだろうか。本当に?
嘘をついていたわけではなくて?
怖いな、と思う。それだけ。
お腹が痛い。