サニーサイドアップフォーチュン

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『東京喰種』感想

東京喰種見てきました。

原作未読、アニメ未見、初演未見、ウィキペディアすら未履修で、つまりは全くなにも知らないまま観に行った感想がこちら。

 

・アニメみたいな映像

オープニング、アニメみたいな映像だなと思った。すぐウユニ塩湖にするところとかピクシブでよく見る光景だと思っていた。

 アニメだった。

あと凛として時雨みたいだと思ったら凛として時雨だった。

映像流れる前の金木くんの独白のさらにその前、その時に流れた曲がすごく良かったと思った。

 

・「食人」という行為(ストーリーの話)

デュルケムは「犯罪行為が存在していること」は「犯罪の存在しない社会がない」故に、「正常な状態」だと述べている。

これがいわゆる、「聖人君子の犯罪」だと思うのだけど。

社会(われわれ)が犯罪であると糾弾することによって犯罪が生まれることから、犯罪のない社会とは、ある行為を「犯罪だ」と区別する基準や価値観が存在しない社会であると言える。一種の「未開状態」、未開社会の文化背景についてはレヴィ=ストロースが論じたんじゃなかったっけ。

反社会的行為も、社会(われわれ)が反社会的だと決めているだけであって、社会から生み出された行為だ。

何が言いたいのかと言うと、喰種にとって共喰いとは犯罪行為に当たるのかどうかがわからない。マダムAは共喰いを忌避するように怒って見せていた。それは喰種としての倫理観において犯罪だったからなのか、それとも騙されたが故の怒りなのか。

人間側から見れば食人という行為は犯罪だ。それは人間の倫理観によって規定された犯罪であって、喰種の倫理観ではただの「食事」ーー犯罪ではない。

喰種の社会において犯罪とはなんなのか。共喰いが罪であればそこ(喰種の社会)には秩序と彼らなりの倫理観があったと言えると思う。

で、なんでこんなこと言いだしたかと言うと、こういう作品は確実に狂ったやつが出てくる。狂ったやつがシリアルキラーさながらの謎思考回路で狂った自分の正義を振りかざしてくる。レヴィ=ストロースはどんな未開社会にも文明があると論じていたような気がするが、秩序ゼロ、倫理ゼロで果たして社会と言えるのか。

喰種であったとしても理性を持つ以上社会的な動物であり、そして人間というマジョリティに狩られる側(っぽい)以上共同体を構成することが一つ手段としてある。ウェーバー曰く「国家は暴力装置」、一人で殺し回れば殺人者、組織で力を振るえばそれはレジスタンス。ノー倫理、ノー秩序でそんな共同体を作れるとは思えない。

故に、すぐ絶滅しそうな種だと、観てる間ずっと思ってた。

あんまりストーリーが好きじゃない。

 

・中二の時読んだラノベみたいなバトル

肉弾戦メインに見えたから地味な絵面だなと思ってたんだけれど、意外と特殊能力出て来てプロジェクションマッピング〜〜って思った。

トーカのカグネ? がなんか羽なのとか「わかるヒロインの特殊能力は羽だよね」って思った。

 

・錦がチョロい。が、どう考えても錦が一番魅力的

錦が「お姉ちゃん」って言いだしてからだんだん成長していく様が、月並みだがすごいと思った。インフェルノでリッカの子供時代をそのままアフレコしてた時の、あの会場の微笑ましい雰囲気は一切無く、ただただ「お姉ちゃん絶対に死ぬやん……」という虚無感がジワジワと悲しかった。

で、そんなことがあって、人を殺した錦が、貴未に心をあっさり開いてることが心配である。錦が優しすぎる。そんなんじゃいつかその優しさにつけ込まれて錦は傷つくと思う。

おばさんは心配です。

あとヨモさん?も「もっと強く止めておけば」とか言ってたけどほんとに止めてた?

漫画特有の詰めの甘い登場人物に不安が募る。

錦はどう考えても大人気キャラだと思うのだけど、どうだろう。金木くんがどういうつもりで行動してるのかが私には分かりづらくて、その反対に錦は分かりやすくて魅力的だ。錦が幸せになれる世界が来たら良いと思う。

 

・月山どうした

アニメもあんな感じなの? と途中から不安に襲われていた。めっちゃ歌うけど?

あとなんかこの変態のキャラクター、変態と思っていいのかわからなかったんだけど、みんな金木くんの「変態!」に笑ってたから良いらしい。

あと月山、人間の食べ物食べれないくせに人間の書いた食事への渇望の文章諳んじまくりだったし、人間になりたいのかなぁ(妄想です)。

なんにせよヒデ様お疲れ様です。

 

プロジェクションマッピングとセットと衣装チェンジ

プロジェクションマッピングとっても綺麗だった。ステンドグラスやカグネの表現が、ナルステーープロジェクションマッピングというある種の工夫でこそ出来たことなのだろうなと思った。

衣装替えが多いのとか、その衣装が久々の現代劇であるが故に地味なところとか、なかなか新鮮だった。貴未の靴の色、あれで正解なの?

血が流れる、というのも生々しくて良かったと思う。見慣れた殺陣の舞台で血を流す事ってそうそう無い(真剣必殺くらいかな)し、想像で補うのではない「血を流す」「傷つく」という表現が、生と死、喰べる喰べられるということを生々しくしてるんだろうなって思った。単純に、流れる血を見慣れてないからギョッとする。

 

・ゴミ箱の蓋

サンドイッチを頬張った金木くんが、カウンター裏に駆け込んでゴミ箱の蓋を開ける。程なく音がする。吐き出した音が。

トーカはヨリコの料理を食べ、みんな水を口にする。コーヒーの匂いがする。

喰べる作品であるからして、食べる描写に手を抜かないところがすごいなと思った。

舞台の上は客席とは隔絶されてるはずなのだが、ミートボールにしろ、ペットボトルの水にしろ、サンドイッチにしろ、コーヒーにしろ、日常的なものがそこーー即ち舞台の上にあるということが、食べるという事を考える要因の一つになる。と思った。わからんけど。

 

勝吾氏演じる錦が魅力的だったのと、カテコの挨拶でクソ長いサブタイトルを流れるように読む松田氏がスゲェと思いました。

 

ベートーヴェンの『月光』を戦闘シーンに使っていた本舞台に、最後にこの言葉を贈ろう。

月も出ていない、死者の脂が燃えて雲底を紅く照らし出す地獄のような夜には、皮肉としか言いようのない美しい曲だ。

p55『虐殺器官伊藤計劃

インスタ画像はなし、感想薄め。書き直すかもしれないと思いながら多分書き直さない。

これからいろんな人の感想を読むのを解禁です。