ネタバレあり。かつ、あまり肯定的ではない話もしてる。
見終わったのち、「まあなんとも言いづらい映画作ったな」と私は思った。Vシネというものは良くも悪くも賛否両論、過去そういった諸々の話があった旨、先達のお歴々より伺ってはいたものの。そう知っていることと、実際に経験することの隔たりを目の当たりにした気分だった。
いつもと違って繰り返し観に行ってない。
内容について不可分あるかもしれないが、どうかご容赦いただきたい。
また、感想についても一個人の思いでしかない。無理して読まなくて良いと思う。
良かったと思うところ
作画
顔の作画が良い!
相変わらず誰の顔がアップになっても最高である。ビルドの新規スチルこれが最後かと思うと涙出てきた。
助けに来るグリス&ローグ
わかっててもピンチに駆けつけるグリスとローグがカッコいい。来る、とわかってるのに出て来たときに興奮した。
Foreverの時も最高にカッコよかったわけだが、今回もピンチに颯爽と駆けつけてくれ一撃を与え、クールに挨拶する二人が最高だった。
「俺のヒーロー」
龍我にとっては戦兎くんがヒーローであると明言されることの尊さにちょっと涙した。
夏、相棒。冬、ヒーロー。
見返りを求めないヒーローとして
言われてみれば、確かに自分の手の届く範囲の、自分の身近な人のための戦いだったわけで、それに対して私は「戦兎くんが自分を犠牲にしてるんだから戦兎くんの周囲くらい戦兎くんを優先してくれてもいいんじゃないの」くらいにしか思ってなかったわけだけど。
ここに来て龍我が「見返りを求めずにみんなを助けるヒーロー」となるのは、ビルド世界において戦兎くんと龍我が並び立つヒーローなんだなとなって良さがある。
クローズエボルのかっこよさ
ギャラクシー感あるカラーリングもそうなのだけど、どちらかというとエボルト寄りのデザインなんだけど、それが割と真っ当にカッコよかったビルドのフォームとは違ってて良い。そこはかとないヴィラン感が、清濁併せ持つクローズエボルのカッコよさなのだろう。
テーマソング
クローズマグマのテーマが一番好きだったので、今回の曲もかっこいいなと思う。
気に食わなかったところ
超個性派キルバス
まるで好きになれない。
この人が公共の電波に乗って宣戦布告した時、「本来の柿崎とこの世界の万丈は今どうしてんだろうか」ということが気になってしまってそれどころではなかった。
めちゃくちゃ強そうな感じで出て来て、「一度も勝ったことないよな」といった「負けそう」なセリフを連発し、結構いいようにエボルトにされてて可哀想だなと思った。
あと裸ジャケットが単純に苦手なので、「苦手だな……」と思いながら見ていた。
感情ジェットコースターヒロイン
1時間しかないのになんでこんな振り幅あるヒロインにした?
1時間しかないのに暴力型ヒロインがサラッとヒーローを受け入れて、恋みたいな展開に持ち込むのは強引すぎてついていけない。
本作最大の地雷ポイントの一つは「恋のキューピッド*1」発言だったのだが、あんなにキレてた女の子がそんなこと言います? 由衣ちゃんは物語の最後に与えられるだけのトロフィーかなんかですか? 見返りの象徴か何かですか?
みんなと彼女の間に何か絆が生まれてると思えない視聴者を置き去りにしてる感がある。
香澄さんの扱いと記憶の取り戻し方の雑さ
データとしては使われてたのに話に出ない。
香澄さんも改造手術を受けているので、思い出して然るべきである。
あとは個人的に、龍我の行動の中に香澄さんへの想いがあるのが好きだったので……。
この「いかにもみんなが登場する必要があるので記憶を取り戻しました」というような感じが雑*2で、もっと本気出してドラマチックに描いてくれよ!!と思った。
エボルトが復活すること
いやもうなに?
一年めちゃくちゃ頑張って、ファイナルステージでめちゃくちゃカッコよく倒したのに復活して。復活することすらちょっと無理だったのに宇宙に放出って何?
またどこかの文明が滅んでしまうのでは?
これで続編などが作られてエボルトとまた戦う話になったら……。
「ベストマッチ」Tシャツ芸
気を失うかと思った。
龍我のベストマッチの相手は由衣なんです? あんなに一年間いっしょに頑張ってきた相棒も、腕の中で看取った恋人も差し置いて?
ベストマッチって、ビルド的には結構重い言葉だと思うんだけど……。
恋愛オチみたいなの
なぜ「恋」に近しい形でしかハッピーエンドに出来なかったんです?
なぜ東映は「大人向け」みたいなのを意識するとすぐに恋愛関係を描きたがるんです?
一年間育まれて来たはずの絆はどこ行ったんです?
この「ポッと出の美女との恋愛オチ」みたいなの、一番納得いかなくないです?
一年間共に観てきたものを軽んじられてると思ってしまうし、幸福の形として男女のそういう在り方しか引き出しないのかよと思うし、ビルドってそういう感情以外の信仰や執着の描き方が好きだっただけにあまりにも無理だった。
相棒大好き腐れファン*3の主張って言われたら私にそういうつもりがなくとも、もう私が女の時点で何言っても虚言かなってなるので弁明しない。
ただ、男女の恋によって得られるものを、龍我に最後に与えられる幸福として物語の最後に描くなら、それは違うだろうと私は思う。幸福の一つだったとしても、それに限定されることへの違和感を拭えない。
と、言っても、あのラストは由衣ちゃんと龍我が完全な恋仲であるかどうかは解釈の分かれどころであり、私はそうではないと思いたい派なのでそう思うことにする。
エンドロール
元気出せよってことかなこれ。
戦兎くんは、幸せだったのかな。みんなの記憶が戻ってそれで……。あんなに必死に作った新世界がこんなにあっさり覆されて……。
あと戦兎くんについては、彼が戦場に出てきたら『クローズ』ではなく『ビルド』になるわけだから仕方ないかなと思う。
さいごに
「Vシネはしんどい」──これは私が特撮を見るようになって、先達に言われた事の一つだ。
基本的に公式と解釈違いを起こしてきた先達の、言っていた意味が今やっとわかる。
Foreverの時間軸が冬なので、夏のVシネはその前なのかもしれないが、存在そのものを無視してしまえばテレビシリーズからForeverとなるわけで、その方が私的にもスッキリするなと思った。せっかくほろ苦いエンディングでよかったのに、その良さはどこ行ったのとなるし。
これで小説が出て、これで思いっきり恋愛関係で描かれてて、エボルトの危機が再来して……──。想像しただけで辛いが、もうそうなるのかなと思っている。ここにきて公式と解釈違いを起こすとは思わなかった。かわいそうに1月14日までの私。
ジーニアスフルボトルについてはファイナルステージで復活してたからそういうことなのだろう。
私が『ビルド』を信仰しすぎだったんだよな、といまは思っている。信仰していただけに、受け入れられなかった部分の影響が大きすぎた。
戦兎くんと龍我の、ではなく、全体として、『仮面ライダービルド』という一つの物語であってキャラクターのディテールに囚われていない人であれば、きっと百パーセント楽しめる映画なのだろう。
大丈夫な人は大丈夫だろうし、好きな人は好きなんだろう。
でも私はなんかダメだった。ありよりのなしだった。そういうことだ。