サニーサイドアップフォーチュン

映画、特撮、演劇、ダンスボーカルグループ

舞台『天守物語』感想的なもの

今日も今日とて感想がポエム

これ好きだなーと思った。アマテラスと同じような「好き」の感覚だと思う。

伝承と恐れの中の物語のなかで、愛情には敏感に反応する登場人物たちが面白く健気であると思う。

富姫は獅子頭を旦那様と呼ぶけれど自分より上位であるからというだけでそれ自体に愛着などさほどなさそうで、実際図書之助の前では獅子頭の存在は図書之助を引き寄せる何かくらいな扱いになっているのがいい。富姫の落ち着きのある色彩や口調とは裏腹に、たった一回の恋が秩序を危うくするのも魅力的な物語だった。元の泉鏡花の書いたものも読んだが、それよりだいぶ人間に心を寄せた富姫であったと思う。亀姫との距離感とかにそう思う。図書之助もまた父と弟の因果が相まってより魅力的だった。そういう因果の中でも愛さずにはいられないし、狂って死ぬことも許さない桃六の横暴さがいい。それこそが生であり、ままならないからこそ生であるということですね。堕ちよ。そして生きよ。しかし桃六はあんな格好でも品があって流石でした。創造主たる桃六の、産み出したものへの愛情なのか、生かすものの選別をして生へと向かわせることの残酷さは天上に立つもののそれだけれども、目を直して生きよと言うのは人間的な愛着のようで面白い。

鷹の悲しいところがとても魅力的で、衣装が最高だった。童子のあわせもキラキラとして魅力的だし、何よりツノがいい。かつてまがい物の鬼を演じた彼が、まことの鬼を演じる。一部の人にはもうたまらないことだと思う。鷹では一変して袖が羽のフワフワになるのも、色彩が変わらない中で質感に訴えている感じがいい。ああいう少年性を封印したかのような役、あまり彼のイメージにないような役とても良いよね。どっしりした無骨さみたいなものがとても良い。

死宝丸がいると図書之助の行動原理もわかりやすくなっていいし、めっちゃまともに見える図書之助すらも結局富姫への恋情と播磨守の狂気にあてられてるんだなというのが強調される。けど結局死宝丸も生への執着でちょっとおかしくなってて、もうみんなおかしくなってるんだよな。

その死宝丸に害される亀姫も、憎しみのあまりおかしくなってるし、そのおかしくなってる亀姫によって播磨守はおかしくなってるわけだから、因果であって業なわけだな。

あとは薄さん好きだったな。私、すごい堀池さん好きなので。あんな強そうな女中います?