サニーサイドアップフォーチュン

映画、特撮、演劇、ダンスボーカルグループ

感想『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』『君の視線が止まる先に』

まとめて更新するな

セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記


www.youtube.com

謎の少年としてクレジットされていた段階でうすうす予想されていたことが、「ショウタロウ」と名乗ったところで「これは石ノ森章太郎先生をめぐるお話なのだな」となり、彼がヒーローを生み出すことがこの映画のカギになるのだなというのが読めてしまうのだけど。それはそれとして、「文豪にして剣豪」であるセイバー・神山飛羽真という当代のヒーローと出会い、「石ノ森章太郎先生が描き出した物語を、神山飛羽真という石ノ森先生亡き後、仮面ライダーを書き継いできた人たちの象徴のようなキャラクターが書き継ぐ」という展開は、ヒーローを信じる者にとってとても心に来るものがあったなと思った。藤岡弘さんが鈴木福くん=若き日の石ノ森先生と対面して「石ノ森先生、お会いしたかった」と伝えるところなど、本当に藤岡さんがそう感じていたんだろうな、そう思ったことがあった*1んだろうなと感じさせる良いシーンだったと思う。

石ノ森章太郎先生の物語としてはどうなんだろうな……私は24時間テレビのドラマ*2しか知らないので、あのドラマが正しいとしたらかなり整合性という意味では微妙だと思うが、姉というキーパーソンに芽依ちゃんと充てた演出がされたのは舞台っぽくて好きだった。ただ、アスモデウスに存在を消された飛羽真たちを映す際の映像のつくりはあれでよいのだろうかと思う。プロジェクションマッピングのように登場人物の動きより周りの不安定さを演出したいのかなと思ったのだが違和感と不安感が残る。

「物語の人間が物語であることを自覚し、これまでの戦いのない世界=優しい現実に残るのではなく、自分に与えられた役目を全うするために物語を新たに記して戻ってくる」というのは、繰り返すが小説家である飛羽真にしかできないことだ。このメタフィクションを子どもの皆さんが見ていて果たして理解できるかは疑問であるが、このメタフィクションと「仮面ライダーセイバー」の相性の良さは感じた。私は「ゼンカイジャー」は見たことがなかったのだけど、どんな時にも苦しまずにいると紹介されただけあって、メタフィクションかどうかなど全く意に介さず楽しそうにしてたのも良かった。

ただ、私は平成仮面ライダーに多大なる未練があるため、この「ヒーローはフィクションであっても、物語としてあり続ける」と「ばらばらでまとまりのない仮面ライダーだけど、信じる人がいてくれればヒーローとして在れる」というものの表現の差みたいなのを感じて苦しい。Over Quartzerも平ジェネForeverもメタ的な視点を交えた映画だったけど、なんだか受け取るメッセージが違う気がする……。

そこに響いてくるのが、アスモデウスの「お前らは二次創作」「同じようなモチーフを繰り返すだけのオワコン」「ヒーローなど幼稚」というような薄汚れた大人の言い分で、私がもつ感想もそれと同じなんじゃないかと思ってしまうんですね。「『人間』を描くのに一次も二次もあるか」「意味がなかったらこんなに続いてない」という回答に、ヒーローを生み出す会社の矜持を感じてよかったです。

ゲスト出演してた人たちのことを考えたけど、谷千明さん良かったですね。たすき掛けする仕草すら良かった。急に雰囲気が「瞑るおおかみ黒き鴨」になって最高でした。

リュウタと司令を出す必要があったのかな、仮面ラジレンジャー的にとも思ったけど、しかしイマジンが4体出てデンライナーが出たら電王がゲスト出演みたいな扱いになるの便利だなと思ってしまう。

とまあ、あまりピンと来ていないところ多めの感想になってしまった。

とかく、見ながら思っていたのは、もし毛利さんが刀剣乱舞を書くとこういう感じになるのかなと思った。「物が語るがゆえに物語*3」の刀剣乱舞と、「物語の登場人物が記す物語」のスーパーヒーロー戦記はなんか似ている気もするので。

バイスの特別編は可愛かった。面白そう。バイスがもっと凶悪な感じなのかと思っていたけど、人間社会に興味あるうるさい赤ちゃんという感じで可愛かったし、一輝くんも真面目で可愛い感じ。変身の演出もデザインも好き。色も可愛いし。弟の大二くんは変身が約束されてるようなのだけど、もっと「兄はバカなんですよ……」みたいなクールキャラを想像していた分、結構お兄ちゃん好きそうで安心した。好きだからこそ兄を応援し、背中を押し。好きだからこそ兄をコンプレックスに感じ、反発してほしい。「知らなかった? 僕はずっと兄さんのこと、嫌いだったんだよ」と言って離反し、「最初は憧れてただけなんだ、兄さん」って泣きながら戻ってきてほしいなと思いながら見てた。最後に写真から一輝くんだけ消えてたのが不穏で良いね。悪魔だけに……。

 

君の視線が止まる先に


www.youtube.com


韓国初のBLドラマらしい。まとめて一本の映画にしてるわけですね。

始まった瞬間からグクがテジュのことを好きなのがわかる。基本的にあまり動きのない映画だったけど、グクは最初っからそうであまり心情的に揺らいでないので、基本的にはテジュの感情の揺らぎが重要だなと思った。

グクはテジュが好きだけど、主家の息子であるテジュとボディーガードであるグクとじゃ立場が違うので気持ちを伝える気がなく、ただ役目にのみ忠実であろうとする。テジュがそれを全く気付いてないのにテジュもグクのこと好きなもんだから、転校生の少女ヘミとグクをくっつけようとして不機嫌になったり、自分を優先するグクに気分を良くしたりしてかわいい。テジュが愛情の例え方を唯一自分を愛してくれたであろう母親しかもっておらず、それで度々グクを複雑な気分にさせてすれ違うのがBLっぽかった。BLなんだけど……。そういうなんか、BLっぽい文脈(愛してくれる人ならだれもいいみから彼女を作る、自分と同じことを友人にすることに嫉妬する、みたいな)がさらさら出てくるなと思ったけど、これは別に異性愛でも出てきますかね。なんかさらさら出てきて特に説明はされない感じだったので、これでモノローグあったらすごい単巻のBLマンガっぽいだろうなと思った。

BLと言えば日本なのかわからないけど、キーワードとして日本が出てきて、日本語の曲も流れる。面白いなと思った。

そういえば最後急にテジュが留学先から帰国してテジュと再会するけど、父親からは逃げることに成功したんだろうか。

 

*1:大炎上したライダーに初代から託される形になるのは切ないところではあるが……。

*2:

24時間テレビ ドラマスペシャル「ヒーローを作った男 石ノ森章太郎物語」

*3:ステ、もしくは映画。