ローグ・ワン
私は父がスターウォーズの熱狂的なファンなので、物心ついた時から頻繁にスターウォーズを観て育った。なので前提知識としては充分にあり、自然に対立構図を受け入れて見始めたけれど序盤は結構説明されない感がある。『ローグ・ワン』からスターウォーズに入ろうとする人間はいないのかもしれないけど、「スターウォーズ観たことない」と言う友人もいるのでもしかしたらここからスターウォーズデビューする人もいるのかもしれない。フォロワーにアンケート取ったけどみんな全然見たことなかったし。
ソウ・ゲレラの元へ向かうことになってからはつどつど必要な説明がされて、何を目的にするのかちゃんとわかるようになるので観やすいと思う。
主人公ジンは映画開始早々母が死に、父が攫われて父の友人ゲレラに育てられる。そのゲレラも出てきたと思ったら早めに退場するのだが、彼女はそういう親や出自を意図的にはっきりさせている造形というのを想定されて作られたらしい。確かに、スターウォーズって両親が誰なのかわからないスカイウォーカーの血筋が揉める話の印象が強い。それはさておき、養い親であるゲレラの教育をもって帝国にいる父を追い、父を亡くした後も父の意志のために戦いに身を投じることになって、全編お父さんとの話だった。まあスターウォーズってそういう話か……。
奇襲の信任を得られなかったジンが先導する形で、ごくごく少数でデススターの設計図を盗みにいくことを決意する時に、キャシアンが「反乱軍のしてきたことも汚い」ということを言うのが良い。もうただの善と悪では納得できない状況にあるのだが、それは戦争として当たり前のことだし今まで描かれなかったのがおかしかったのかなと思った。新三部作見てて、60年代っぽい社会主義(?)的な帝国のデザインと、自由な反乱軍の造形ってなんかもうしっくりこないなと思っていて、そういう意味でのしっくりこなさなどがなくてよかった。
一人一人仲間たちそれぞれがみんな役目を果たして散っていくのがドラマチックで泣ける。ジンがキャシアンとキスしたら嫌だなと思っていたけど、やるべきことを果たし、父親の願いを叶え、信頼と達成感によって最期を迎えたのが良かった。というかチアルートとベイズがすごい。チアルートは別にジェダイではないし、ジェダイのようにフォースを使うわけではないのだが、カイバークリスタル*1などを祀る寺院の守護者でフォースを信じ、修行しためちゃくちゃ強い人である。そしてベイズも同様に守護者であるが、信心深いチアルートと対照的に信仰を忘れている。この二人の関係性が熱い。チアルートはフォースを信じいつかフォースが銀河を救うと考えているが、ベイズはそんなチアルートの信心と命を守るために戦っているのである。
SaifahZon Story
『WHY R U?』のコロナ禍によって大打撃を受けた方のカップル、SaifahとZonの、チャリティーイベント後の葛藤などに焦点を当てたエピソードである。
そもそも『WHY R U?』は勝手に妹が実兄をモデルに実名を使ってBL小説を書き始めるという暴挙がギャグとして面白い作品だと思っていたのだが、Zonが「小説のせいでSaifahと友達以上の関係になっている(=小説の影響であってSaifahや自分の意思とは関係ない)」と考えた結果、小説を勝手に削除する。ここがちょっと乗れなかった。Zonは「勝手に名前を使うな、削除しろと言ってもしなかったから自分がやった」という主張で、それに対してZolは「書くの大変だったのにこんなひどいことするなんて」というスタンスである。そういう正論を説き始めたらどう考えても最初に勝手に書き始めたZolが悪く、今まで面白おかしく使って来た「勝手に小説のネタにされる」というのを急に真面目に捉えなくてはいけなくなる。
Saifahの作戦によって関係を受け入れたZonが素直になって、三話目はずっと二人がイチャイチャしてるのだけどこれは可愛かった。この作戦が「Zonが小説の影響を信じていること」「Zolが小説を自発的に削除したこと*2」をちゃんと使っていて面白かった。こういうのもっと見たかった。
To My Star
『君の視線が止まる先に』の監督が手がけたBLで、スター俳優と寡黙なシェフという取り合わせである。『君の視線〜』と同じ役名(キム・ピルヒョン)で同じ役者が出ており、どうやら繋がっているらしいということが醸し出されている。まず、『君の視線〜』を見ている人からしたら楽しいところだと思う。
個人的には『君の視線〜』より好きな雰囲気で、和やかに楽しめたかなと思う。舞台になる二人の家も、ソジュンが気に入っているという公園も、ジウの勤務先のレストランもお洒落でとても良いロケーションだし、雰囲気がある。
10分程度で9話なので非常に短いのだが、二人にはそれぞれ抱えるトラウマがあって、そのトラウマにお互いがちょっとずつ気づいていて、だからこそちょっとずつ距離が近づいていって……というのが良かった。ただ、ロマンスとしてはかなり薄味というか、やや唐突かなとは思う。
二期があるようなので掘り下げなかったエピソードに関してはそこで使うのかなとは思うが、個人的には一話を長くしてジウの家族、ソジュンの家族、お互いの仕事、マスコミ問題、スキャンダルの全てを盛り込んだ通常のドラマシリーズも観たいなと思った。それに耐えうる背景の厚みを感じたので……。