夜明けの星を待ってる

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感想『トップガン』『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』『Not me』

トップガン

トップガンの新作が今年公開だから一作目を観てくれ」と言われたので観た。

これは理想化されたアメリカなのだな、と思った。公開当時これがどのような評価と感覚で受け入れられた作品なのかはわからないのだけど、今見るとこれはあまりに理想的な物語だと思う。こういうジョークを交えた会話と筋肉と技術とヒーローと海岸と夕日が、夢として一つの世界を作ってるのだと感じた。つまりロマン。

展開も本当にベタで、「フラグが立ったな」というのもとても分かりやすいのだけど、絵面の格好良さも相まって「こういうんで良いんだよ」と気づいたら思ってる映画だった。

 

機動戦士ガンダム 逆襲のシャア

ハサウェイの方

ハサウェイの恋愛における趣味全く変わってないんだなと思った。ファザコンに惹かれる気質があるのは、そりゃあ苦労する。

ガンダムって政治と思想の話をずっとしてるんだなと思った。実はダブルオーしか見たことがなく、あれも政治と思想の話だったが、「逆襲のシャア」もそうだったので、もともとそういう作品群なのだなという学び。

なぜこのシャアの思想がマフティーとして活動するハサウェイの中に落とし込まれるのかは、おそらくハサウェイの物語をたどらないことには理解できないのだと思うけど、シャアが唱えるような変革は地球に固執する特権層へのものだから、ハサウェイがそういった特権的な動きによって自らの行動を不問にされたことに反感を持っていれば相性が良い思想だと思うし、クェスの死に意味を持たせようとしたときにシャアの思想を完遂させようとするのでも理解できるなとは思う。

絵がすごかった。ウィキペディアによるとシリーズ初の3DCG使用ということだが、そのコロニーの描写の美しさもそうだし、手書きでモビルスーツ戦を描いているのもすごい。あとキャラクターが突っ立っているだけでなくちょっと重力で遊んだり、誰かの手を借りてみたりする細かな動きがかっこいい。

アムロがとても大人で、自分ができることとかできないこととか冷静にとらえている一方、シャアはいつまで経っても子どものままみたいなところもキモくて良かった。ララァに母性を求めるのも怖いし、クェスがそうなれないだろうなと思ってどうでも良くなっていくのも怖い。

 

Not me


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近年、タイ政治はあんまり安定していない。私は専門で学んだわけではなく、このようにドラマを見るようになってからの勉強であるため認識に問題があったら教えてほしい状態だが、14年にクーデターにより暫定的に軍事政権が発足、19年の総選挙で形式上民主的な政権となった今も首相はクーデター時に発足した政権と変わらない。経済は伸び悩み、深刻な経済格差は改善されず、王室の問題もあり、民主化を求めるデモがあり、デモがあれば弾圧があり──……ざっくりとした認識ではそういう状況のようだ。

というわけで、『Not me』はBLドラマであると同時に、その状況をたっぷり取り込んだ社会派サスペンスである。かなり挑戦的な作品で、現在のタイが法の支配(rule of law)、つまり「法によって権力を拘束し、国家権力の支配を排す」状態でないという前提に基づき、これを批判する内容になっている。それを14話かけて描ききり、社会運動家として主人公たちを歩ませるエンディングとなっているのがまた強い。

主人公Whiteは権力に庇護されていることに気づかず普通に過ごしてきた青年で、Blackは生まれた階層を捨て社会運動に参与する双子の兄である。この双子の役をGun(Atthaphan Phunsawat)が一人二役という形でこなしているのであるが、これが素晴らしい。温厚で理性的な Whiteと、攻撃的で冷酷なBlackがちゃんと別個体として認識できる表情をしている。

また、SeanとBlackは犬猿の仲のため歩み寄りの姿勢がない。Blackを装って仲間になったWhiteも意見を対立させ、BlackとしてSeanと何度も揉める。Whiteの手が入った計画は市民を巻き込んだ運動になりやがてSeanの父の仇であるTawiに影響を与えていく。この間Seanと Whiteは「恋」にときめくような余裕はなく、逮捕されるか逃げおおせるかの最中にあり、しかしその危うい状況下でSeanに惹かれていくことに抵抗できず、ギリギリの生き方を愛してしまう。この切実さが好きだった。Seanもまた受け入れられ、共鳴し、支え合うことに安らぎを得て行くのだけど、それが時に反発し合いながらでも同じ場所で同じ経験をすることに基づいている。手を離したらどうなるかわからない、という二人の必死なキスシーンが鬼気迫るものがあり素晴らしい。

運動は法に端を発し、その流れでレインボーフラッグのデモに繋がっていくのだけど、ストーリー上全くSeanとWhiteが男性同士である必要*1はなくて、男性と女性でも、女性と女性でも成立する。そもそも2人は女性の恋人もいたわけで、その「セクシュアリティについて殊更荒立てる必要のなさ」というスタンスであったことがとても良かった。トランス女性であるNuchの役どころも非常に良い。

撮影そのものもバラックのような家、油に塗れた倉庫、よれよれの衣装、どろどろの役者……とかなりしっかり社会階層や運動そのものの体当たりさを作り込んである。

このように社会的意義としてとても重要なドラマであり、それだけでかなりおすすめできる。

脚本の中で気になったところを挙げるとするのであれば、正直そんなことどうでもいいといえばいいのだが、Blackを意識不明にした犯人は、割とすぐに予想がつく。また、Whiteは「Black暴行の犯人を探す」という目的のためにすぐにBlackとして彼の生活圏に潜入する結論になるが、小さい頃の約束はあれど、良心的に権力に近いところで過ごしてきたはずのWhiteが即権力に頼らない形での解決を目指すのは、この後の社会運動を描くためとはいえ唐突に見える。またWhiteが潜入しての謎解きが主題でないため、あまり捜査をしているという印象ではなく、 WhiteはBlackのふりをすることで初めて見たことのなかった現実を知り、正義を求めるようになるというところが重要なのだと思った。

今F4も放送されていて、こちらも社会階層の話に落とし込んでいるが、F4ほど病的な反復はなく、序盤のWhiteはBlackではないという“Not me”と、後半の運動のハッシュタグ“Not me Not you But everyone”に繋がっていくところがそれをよく表してるんじゃないかなと思う。

主役コンビであるOffGunは歴戦のBLドラマカップルであり、GMMの四天王の一角──いわゆる“柱”、局の柱に物理的に巻かれてるから──を担っているため日本でもいろんな供給がある、はず。出演作を観やすい状態でもある。先日本国放送が終わり、今週正式にU-NEXTで最終回が配信されたばかりの終わりたてほやほやの作品なので機会があったらぜひ。

おすすめです。

・参考

続くタイの政治混乱――あぶり出された真の対立軸(重冨 真一) - アジア経済研究所

コロナ禍後も続くタイ経済・政治の苦境|日本総研

*1:もちろん、二人がレインボーフラッグのもとで心を通わせることの大きな意味はあるけど。