サニーサイドアップフォーチュン

映画、特撮、演劇、ダンスボーカルグループ

感想『ビバリウム』『ハリエット』『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』『SEOBOK/ソボク』

ビバリウム

どこを取ってもめちゃくちゃ気持ち悪い作品だった。

買った家がやばいとか、仕事で行った家がやばいとかじゃなく、ただ内見に行った家がやばいという理不尽極まりないやばさと、理不尽極まりない展開でとっても気分が悪くなる。

冒頭部分にカッコウの托卵の話と映像があり、つまりこれから起きることは托卵ですよというのが示されるのだけど、新興住宅地に建つ「家」とそこに住む「核家族」となり現代における様々な社会規範をホラーに落とし込んでいる、ということらしい。

基本的にあまり大きな展開は無く、ただ精神を磨耗していくジェマとトムを眺めてる時間もあり、こういうところが合わない人もいると思うのだけど私は好きだった。

 

ハリエット

暴力の描写もあるし、暴力が彼らに残した肉体的精神的傷跡もあるが、だいぶマイルドにしてくれている映画だと思うんだけど、開始20分経たずしてショッキングで泣いてた。メンタルが弱い。

話の規模の割にはセットやロケ地のスケール感がそんなに大きくはないんだけど、ハリエットという一人の女性が自由と使命のために走り出すことが大切なので、そこをあまり重要視したくないなと思った。自由黒人のレディであるマリーが美しく、ハリエットとの立場の違いも彼女の強さも、また彼女によってハリエットが変わることもとてもよかった。

あと、歌がすごい良かった。

 

ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密

ダンブルドアとグリンデルバルドの愛の話なわけだが、ダンブルドアが143分かけて終わらせる決意をする一方で、グリンデルバルドが143分揉めても諦めずにいるらしいという映画だった。

ダンブルドアも本当はまだ全然グリンデルバルドを愛してるんだけど、終わりにしなくちゃいけないのでそれを告げに会いに行くところから始まるのが切なく、またグリンデルバルドがダンブルドアに対して「敵じゃない」と告げて去るのがつらい。あれは世界にではなく、ダンブルドアに言ったんですよね?

そのせいかわからないが、テセウスが「あいつを倒してください」とダンブルドアに釘を刺しているのが可哀想だった。またジェイコブとクイニーの結婚式に、ジェイコブが「友人」とダンブルドアを呼んだにも関わらず参加していないことに、グリンデルバルドの言う「誰が君を愛する。君は孤独だ」に対する答えを感じて切なくなった。

私は今回の、新キャストでお送りされるグリンデルバルドはかなり好きで、狂気の暴走車両みたいだった前作までのグリンデルバルドと違って、一応は正規の手段で権力を握ろうとする犯罪者としてはジョニー・デップよりマッツ・ミケルセンの方が合ってる気がする。それに、なによりレストランで待ち合わせしそうだし。もちろん、前作までもそれはそれで好きだけど。

以上はダンブルドアとグリンデルバルドの映画としての話だが、ニュートや仲間たちが主人公のアドベンチャーだと考えるとすごく物足りない。

まずティナがほばいない。ご出産されていたのでその事情があるのか関係ないのかはわからないが寂しいし、クイニーもどうしてグリンデルバルドの側から離れることにしたのかよくわからない。かなりグリンデルバルドに信頼されている様子で、クイニーがユスフを庇っているとはいえどもグリンデルバルドはクイニーの告げた内容を全て良しとしているし、何があってそこまでの信頼を勝ち得ているのかわからない。決してあの陣営がクイニーにとって居心地の良いものではなく、さらにクイニーが変えたいようには世界を変えてくれないことを真に理解せざるを得なかったのだとは思うが、それでもジェイコブのために危険を冒そうとする決意をもっと見たかった。また、せっかく潜入したユスフのエピソードは薄く、観客が「まさかユスフはグリンデルバルドの思想に染まってしまったのか……?」と一瞬ヒヤヒヤするためだけの潜入になってる気がする。あれだけ脅威だったはずのクリーデンスの弱体化がすごい。ナギニはちょうどご出産とのことでおめでとうございます。

クイニーは一度グリンデルバルドの側についたが、幇助ということになって罰せられたりしないのだろうか。ジェイコブとクイニーが幸せな選択に至ったことは本当に嬉しいことだけど……。

あと、あの選挙の仕組みや管理が結構ガバガバで不正し放題なままずっと運営されていたのかなとか、クリーデンスが鏡でメッセージを送るというのは出自を知らないのにどうやってホッグズ・ヘッドを知ったのかなとか。綺麗に話をまとめるための気配や都合をうまく調整しているのを感じる。

でも、ダンブルドアとグリンデルバルドがそれぞれの鼓動を確かめたりする大変セクシーなシーンがあるので、是非観てね。

 

SEOBOK/ソボク

絶対ハッピーエンドになるわけがないと分かっていても見る映画の辛さたるやという感じ。

ソボクはギホンに懐いていないわけじゃないと思うのだけど、こちらが思ってるよりずっと二人の距離はあって、母がトリガーだったり自由がトリガーだったり、実験体以外の何かになりたいがトリガーだったりするんだけど、それでもソボクはギホンを受け入れているし、ギホンのために美しい墓を作ってくれるっていうのが、絶対にハッピーエンドにならない以上辛い。ギホンがいくら頑張ってソボクに自由を与えてあげたくても、ギホンにはソボクをずっと守り続ける時間も技術もないし、ソボク一人では恐らく生きていけないので……。

もっとアクションなのかと思ったが、基本的には哲学的な生死の意味とか恐怖の話だったので、肉弾戦を期待していると物足りないのかもしれない。ソボクのサイキックのCGが安っぽくなくて良かった。