サニーサイドアップフォーチュン

映画、特撮、演劇、ダンスボーカルグループ

15年月組『A-EN Arthur version』21年月組『ダル・レークの恋』『御法度』『オテサーネク』感想

A-EN Arthur version

『Ari version』の方はまだ見てない状態のため朝美絢さん主演の公演のみ記録します。

内容は完全に少女漫画で、ただただ可愛く、アイドル的な物語だ。そんなに深く何かを考えるような内容ではないと思うし、後半のショーへの配分があるからかストーリーの尺が短くコンパクトにまとまっているため、もう少し掘り下げたいなと思う箇所はいくつかあった。当初ヴァイオラはルックスで判断されているがその点への周囲の認識とか、家庭のこと、アーサーの映画への情熱とか、リリィとの破局の話とか。そもそも教師の下りとかちょっと…みたいなところもある。全体的に、マイルドな『花より男子』という感じの印象である。リリィとルーベルトは長尺のドラマシリーズならもっと過激な手段に出そうであったが、ちょっと抜けたところのある可愛いライバルカップルで良かったし、負けたリリィがルーベルトの言い分を良しとしていたところが好きだった。こうなると本当に、アーサーとリリィは我が強く発信的な自信家で似通ってるがゆえに全く相性が良くなかったのだなと思う。ルーベルトは傾聴ができる。ヴァイオラ役の紫乃小雪さんが小さくて本当にかわいかった。

アーサーの親友マイルズとアダムのサブカップルは宝塚初心者マークの私ゆえか初めて見る同性カップル(正確には完全な成就でないにしろ)だった。女性のみの劇団においての男性を描こうとするとき、傾向として「男性的な」要素の強調が(安易な考え方で申し訳ないが)あると思う。今回はアダムの描写に強く違和感を持ったわけではないけど、そういう中で同性愛者をどう描くのかって難しいなと思った。マイルズからそれほど同性愛嫌悪を感じなかったのは良かったと思う。

楽しく見れる――というか、私の場合は夢奈さんに加え朝美さんも見れるということだけでもはや最高に楽しいのであるが――明るく軽やかな作品ということで、特別好きということではないが良かったんじゃないかなと思う。

ショーのほうは、夢奈さんが常に三番手ポジションにいることもさることながら、女装とは言えがっつり朝美さんと絡んでいたり、SexyZoneのSilver Moon、KAT-TUNのツキノミチを歌うなどの衝撃により冷静さを失いました。

 

ダル・レークの恋(梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ版)

これぞ宝塚という感じだった。古い題目とのことで何度も今まで演じられてきたらしいのでさもありなん。衣装がキラキラでよい。

コテコテの愛憎劇で、人間のエゴと立場に振り回されるなか自分らしく生きようとするラッチマンと、王族の身勝手さと偏見に振り回され影響されるカマラの恋が主題なのだけど、「この二人の関係が上演中に修復できる余地がないな……?」と思っていたら本当に再びともに生きる結論に達することなく終わった。

ラッチマンもかなり夢見がちなところがあるしカマラもちょっとヒステリックだが、カマラの家族の都合のよさがひどく、とにかくラッチマンの家系がマハラジャとわかってからの手のひら返しがしんどい。そういう「階級」を重視するスタンスを滑稽に描き、カマラも悲劇のヒロインというだけでなくしっかり影響を受けている様子があり、全体的にラッチマンの絶望に沿う雰囲気だったと思った。

クリスナが王族らしい浮世離れした存在で好きだった。ラッチマンが抵抗したかったそのすべてをクリスナやインディラは受け入れていて、家名がなにを犠牲にするのか分かったうえで無視するという残酷さは、自分が家名そのものであると思ってないとできないと思うんだよね。

梅芸版なのでクリスナが夢奈さんなのだが、やはりお声がとても好きだったし、悠然と構えるあり方も好きだった。

 

御法度

filmarks.com

とにかく松田龍平を美少年に撮り、武士サーの姫の如く周囲を惑わすところを映画にするのだという大変強い決意と気概を感じる作品だった。

ホモソーシャルの中で極まった同性愛描写という感じで、「衆道は存在するが、決して寛容なのではない」という感じで常に居心地の悪さがあり、別にそれを隠す気がないのが良かった。さらに役者の雰囲気もかなり退廃的な方向に偏っているおかげか、もしくは映像や衣装の色合い故か、とにかく陰惨で陰鬱な空気を見る映画だと思った。殺陣が暴力って感じで良かった。

ストーリーが分断されている印象は受けるし、役者の雰囲気を良しとするか悪しとするかでだいぶ感想が分かれそうだなと思った。

 

オテサーネク

youtu.be

マジで不快な映画ですごかった。(不快になりに行ってるので批判ではない)

とにかく食事を不味く撮り、食欲を減退させ、「チェコ料理って全部ベチャ…ってしてるの?」という疑問*1を持たせる映画だった。咀嚼音とか食事関連の音を大きく調整されているのもきついし、要所要所で口元がアップになるのもきつい。

登場人物も別に好かれようと思って設定されている感じが全くせず、とにかく邪悪な作りだった。

*1:あと夕食にパンケーキって何?