サニーサイドアップフォーチュン

映画、特撮、演劇、ダンスボーカルグループ

『HiGH&LOW THE WORST』を一人ウォッチパーティーする(感想)

HiGH&LOWのことはわからないが、中本悠太氏のことは2ミリくらいわかる。

そんなわけで、私は『HiGH&LOW THE WORST X』を観たい。なぜなら中本悠太氏の俳優デビュー作だからだ。

でも本当に、ここに至るまで人生のうちで一回もHiGH&LOWを通って来ておらず、さらにはクローズも読んだことがないので、ついさっきまで本作がこの二作品がコラボレーションした映画であると知らなかった。私はいま本当に、マジで、何にも知らない状態である。誰が出てるのかもよくわかってないし、シリーズが何作あるのかもわかってない。

なんなら予告を見て「鬼邪高」が「きじゃこう」じゃなくて「おやこう」と読むことを知ったレベルだ。

しかしどうやらこの映画、『THE WORST X』を観たいならちゃんと観ておくべきで、かつめちゃくちゃ面白いらしい。フォロイーがそう言うんだからきっとそうなんだろうと思う。

 

というわけで、いつもよりちょっと詳細に感想を残す。再生時間書いてあるので私とウォッチパーティーしてるつもりになって読んでください!

 

01:05

ゾロゾロ坊主が出てくるだけでとんでもなく怖いが、真ん中を歩く志尊淳の可愛さったらない。

 

03:15

出入り口のアーチにかかる「WELCOME TO HELL」、さすがの予備知識なし素人でも「WELCOME TO HOPE HILL 」であることが一発でわかり、かつそんなヤバい見た目の団地に一人で赴く誠司も、腹から声が出てるマドカも、やっぱりこのヤバい治安エリア育ちらしく「世間一般で言う良い子」として振る舞ってるだけなんだろうなと想像が付いた。こんなところでも税金は発生するのだろうか。

そしてそのままチャリ泥棒をした楓士雄を追いかける不良を追いかける兄弟、BGMが爆音で流れるなか始まる喧嘩、幼い頃の回想シーンと無駄のない展開でもうこの映画のこと好きになっちゃってる。喧嘩シーンのスピード感もそれを殺さないカメラワーク、とにかく良く動くアクロバティックさが楽しい。結構な距離をしっかり走って始まる殴り合いの迫力がすごい。

 

10:55

鬼邪高の治安どうなってるんだよ。こんな見た目のヤバい学校でも一応全日制と定時制があるということは、学校としての機能がちゃんとあるらしい。校舎の落書きや体育館の汚さ、街の全体的に終わってる感じや団地の廃墟を通り越したスラム感など、セットの力の入り方も素晴らしい。

定時制の揉め事には全日制を巻き込まない」という村山良樹の宣言がどういう流れの中で出てきたのかは知らないけど、それに轟洋介がブチ切れてのタイマンという流れ、もう明言されていない村山・轟間の感情に心が囚われてしまって大変です。なんでそんなこと宣言したんだ、という村山の心情についてや、轟が「全日vs 定時」という流れに持っていくのではなく何故タイマンにしちゃったんだということも勝手に考え始めてしまう。経緯は全く知らないが、事実上全日のトップとして轟が目されていたのであれば、もともと村山に次いでNo.2とかだったのだろうし、それに断りなく勝手に分断を宣言するのは裏切りに値するんじゃないかなどと思っている。だけど村山と轟の間にそんな世間一般で言うような信じ合う関係があったとは思えないんですが? じゃあなんであんな怒ってるんですか? などと、存在しない行間*1を感じ始めていて非常にまずいです、助けてください。

それはそれとして喧嘩シーン最高でした。どうやって撮ってるんだかわからないが、上からカメラが二人を追ってるのが本当にかっこいい。人混みのなかで殴り合うのもごちゃつく絵面だけじゃなくちゃんとアクションとして使われていて楽しい。

 

14:52

こんなに顔がポンポンの可愛い不良が居ますか?高城司さんのことです。

なんで楓士雄と司が仲良しなのかはわからないが、派閥のトップを務めていた一方ですぐに楓士雄にそれを譲ってしまう司、誰について行きたいかはとっくに決まってるんだなあというのがわかってしまって良い。別に鬼邪高のトップになりたいわけでもないけど、みんな気に食わないからとりあえず似たような人間と派閥組んでたんだろうな。

また可愛い不良来たと思ったら佐藤流司でした。

もうなんかこの時点でしっかり仕切ってるし、楓士雄が全日の頭になれば何もかもスムーズに進む気がします。あだ名のセンスは独特だけど、明星スバルもあだ名のセンスは独特で夢ノ咲学院のトップアイドルだし、近いものある。ないか。

 

24:45

こんなお兄ちゃんなら私はブラコンまっしぐらなんですけど、唯ちゃんは何が不満なんですか?反抗期ですか?

上田佐智雄、顔が可愛い上に喧嘩も強くて家族思い。最高じゃないですか、何が不満なんですか。なんでそんな見るからにヤバそうな店(?)に出入りするんですか。

佐智雄のアクションでナイフ奪って顔の横で振りかぶったところが格好良すぎるし、左肩だけブルゾンからお目見えしてるのが偶然だろうともセクシーで良いです。殴り飛ばして倒していくというより特殊部隊の体術みたいな敵の無力化の仕方がおしゃれ。

 

26:55

メガネ、着崩し最小限、黒髪、でも不良、そして眼帯。要素が盛られすぎている男、轟洋介。

こんなにかっこいいのに人望だけがない男、轟洋介……。

 

28:18

私は『シャイニング』を観ているので、この「レッドラム」がアルファベット表記だと「RED RUM」になって逆から読むと「MURDER」になるんだ!と思ったんですが全然関係なかったです。「クスリ」として登場はするものの、どんな分類でどんな効果があるものなのかはっきりさせないんだなと感じた。もしはっきり違法であると感じられた場合、それが罰せられないと観客が違和感を覚えるからだろうか。ただ、話しぶりからすると以前から存在するクスリのようなので、私のような本作からの新規参入者にはどういうものかわかっていないだけのような気もする。

山田裕貴の配下に陣内将がいるのは、「TRUMP*2」も「東京リベンジャーズ*3」も観てるのでエモだった。

村山可愛いな、価値観が割と普通で……。なんか、色んな人から好かれるのわかるし、そうなるとトップにもなってしまうんだろうな、と感じた。支えたいと思わせられるだろうし、素直に感謝されたりすると働き甲斐があるだろうし。

 

35:11

新太は写真に写ってる時割と一般的な制服の着こなしだったし、こんなヤバいことに手をめていながらも律儀に「せいじ」って登録してるところも可愛いね。絶対に良い子だもんね。

牙斗螺の二人のやばいキャラクター設定は、観客に二人を好きになってもらう気がまったくなくて潔い。愛せる敵も魅力的だけど、愛さずに真っ正面から嫌いでいられる敵も重要だと思います。

 

42:02

ワンコみたいな楓士雄の下にワンコみたいな中越がつくの可愛い〜と思ってたらまた村山と轟がお互いにしかわからない空気醸し出している……。やはりこの二人の因縁は魅力的なので、同じ画面にいるだけでかつて何があってこうなってるのか考えてしまう。何も知らないのに……。

「俺を倒したってさぁ、みんながお前についてくるとは限らない」ってめちゃくちゃコンプレックス刺激してるんじゃないの?

 

44:12

小田島の座り方がかわいい。

 

46:53

佐智雄めちゃくちゃ主人公気質……幸せでいてください。とにかくいろんなことに責任を覚えて、守ろうとしたり矢面に立とうとしたり、自分を犠牲にしがちな良いキャラクター。

マドカの怒鳴り声本当に良い。お芝居本当に上手だな、と思う。

これ二周目見ながら書いているのでちょっとズルなんだけど、ストーリー上必要な名前がこういうところで出て来てて、こんなに勢いがすごい映画なのにちゃんとストーリーを感じられて楽しい。基本の話はすごく単純でどうなるか読めるが、そのわかりやすさで乗り切ってしまうと出演者の数を活かせず終わってしまうと思う。

どの登場人物も置き去りになっていないのがストレスがない。

 

54:10

ここで村山が大人を見ちゃうのめちゃくちゃずるい!

全日制と定時制(社会人学生)って大きな違いがここにあるよな、というのは社会人学生が友人にいた身としては思うところがある。働き始めるのが早ければ感覚はもうどんどん大人になって行ってしまうものだったな、と思い出してなんか切なくなった。そうやって一人で村山が大人になってしまうと、鬼邪高の生徒はごっそり置き去りにされてしまうじゃないか、と思う。

 

57:27

天下泰平を目指してるのかなって感じの壮大な会話で、二人の優しさや真っ直ぐさが伝わる。見た目はボーダーコリーと柴犬の会話だった。ヤバい地域育ち、ヤバい環境慣れしてるとは言え、それに対して何も思わないわけではないんだな。

 

59:14

私、さすがに「コブラちゃん」って名前は聞いたことある気がします!

とにかく村山が一人で大人になろうとするのほんとずるい、ほんとずるいよ! あれだけいがみ合ってた轟はまだ全日制でいわば全然子どもなのに、因縁の相手ばかり早く大人になってしまうのがずる過ぎて、特に現時点のこのシーンでまったく気配がないのに轟のことを思い出してしまった。

誠司と新太にも、冒頭の回想シーンの事も含めて勝手に色々感じちゃう。昔から特別仲良かったのかな。勉強出来たり、性格として不良になれなかったりして……。

 

1:00:56

逃げろ、流司!

そして行政や司法がまったく機能していないこの映画にも救急車と病院があることを知る。でも電気もガスも水道も通ってるし最低限生きていける環境は整っているということかな。

出張ならまだしも、転勤でこのエリアに行かなくちゃいけないとなるとなかなかの勇気がいる。

 

1:07:37

この辺の楓士雄と司の会話の撮り方が格好良く、さらにすでに仕切っているので完全に王者の風格。早く頭任せたほうがいい。司も何もかも察しているので二人で話進めてるところなど頭と参謀という感じで非常に良いです。

 

1:09:58

轟洋介、眼科にちゃんと通ってるのあまりに可愛すぎない?

そして基本的に優しい。村山に言われたことが残っているのか、それとも高校の仲間を想ってか、意固地になりそうなところで協力する轟洋介……お願いに来れるワンちゃんみたいな楓士雄……。

 

1:15:10

とんでもない人数! とんでもない広さ! すごい走る!

この鬼邪高と鳳仙の喧嘩シーン、スケールが大きすぎて笑い声が出てしまった。本当にすごい。平地を活かしさらに高架下という閉塞感あってか、とにかく画面が広く横に展開しているように感じて実際の人数より多いように見える気がする。

そこら中で乱闘してる中を視点が縦横無尽に動く演出が本当に派手、かつ臨場感があって楽しすぎて声出して笑った。

どれくらいスタンドが入ってどれくらい役者陣が実際にアクションしているのか知らないが、それにしても本当に楓士雄は体がよく動くな、と思った。

 

1:24:46

佐智雄、かっこいい。「てめぇじゃねえことがわかっただけでも、良かった」はい、かっこいい。佐智雄の情に篤いところ最高にかっこいいです。

この後、鳳仙は電車乗って帰るのか……。頼むから一緒の時間に乗りたくないね。

轟が楓士雄にすっかり馴染んでいるし、鬼邪高も楓士雄中心に朗らかにまとまっててこれから仲良くやって行って欲しいものです。

 

1:28:46

新太が本当に悪役になってなくて良かった〜〜! 安易な癌設定は割と苦手*4だけど。

 

1:31:56

団地幼馴染たちが、それぞれ選べなかった生き方をお互いに託してるのかなと思ったらちょっと苦しかった。学力のことだけではなく、親の経済的な状況とか、団地にいた頃からどの程度その状況が変化したのかとか、そういう子ども自身では脱却しえない環境全般についてだ。楓士雄が誠司を「希望」と呼ぶのはこの状況から自力で脱却出来る道筋を作れるからであり、誠司が大人しく託されるのはそれをわかってるからなんだろう。自分ではどうもしえない、事実としての境遇に対して子どもが達観し諦観しているような素振りがあるのは、とても悲しい*5ことだと思う。

 

1:35:13

驚くほど佐智雄がかっこいい。沢村の血まみれの学ラン羽織って始めるの最高。向かって来た敵を殴るだけじゃなくて関節技みたいなのを決めて無力化するのが本当にかっこいい。喧嘩の仕方がスマート。

「ダチを探せ」とそっと声かける轟〜!! 高架下の時もそっと声かけてたし、やはりそういう目端が利くタイプなら二番手向きなのでは、と感じる。

散々平地で喧嘩した後なので目新しくもないのでは、と一瞬不安になるが団地の高低差や数々の鈍器、遮蔽物があるのでさらに混沌とした暴力になっている。美しいのではなく、純粋な暴力という感じでただただ興奮する。

「やっておしまい」の小田島がセクシー。

 

1:44:31

トラックで突入本当におばかだけど派手。上で村山がやや焦ってるのがかわいい。

しっかり兄弟と村山が職場の先輩後輩として仲良くなってて良いね。

 

1:50:35

仲間であり、兄弟である幼馴染たち幸せになって欲しい。教師にガチギレできる誠司が強くて良い。

ヤンキーというのは往々にして地元やダチを大事にする価値観を持っているとされるものだけど、この映画は本当に故郷や友達、家族が大切なものであるという前提を一切崩さない。それでいて、全体的に殴り合ってるからかあまり押し付けがましくなく、それを賛美している雰囲気にならならずに観ていられたように思う。

「またイチから稼げばいいだろ」がカッコ良かった。

 

2:00:10

でもやっぱタイマンはするんだ。

 

2:01:22

えええ村山学校辞めちゃうの……!

そんな一人で大人にならないでと混乱していたら楓士雄を助け起こす轟でもうこっちもすっかり先輩*6に成長している。「勝ってもらわねえと困るんだよ」ってセリフが、鬼邪高が楓士雄中心にまとまっているということを認めたうえで、自分の立場を見極めているような感じなので良いです。かつて村山がどうやって大人になって行こうか考える反面、自分が去った後の鬼邪高がどうなるのかって心配な部分もあったとしたら、もうそれが今の鬼邪高には不要な心配ということなのだろうか。

にしても、全日制と定時制をキッパリ分ける宣言でブチギレたのに、勝つ前に村山に学校を去られることに、轟はキレたりしなかったのだろうか。年齢差は知らないが例えば轟が最終学年だったりしたら、自分も村山がしたみたいに先輩として先に大人になって、何か教えられることがあるとすれば教えて、そうして楓士雄や司たちより先に学校を去ることになるという事実を受け入れたんだろうか。

この二人の話だけやたらする。この二人におしまいにされてしまいました。

 

2:03:33

無鉄砲な男に苦労してる女の子たちに寄り添ってくれる存在が出来て良かった。白目剥いてる佐智雄には大変悪いが、相手が女の子であれ、男の子であれ、マドカや唯ちゃんが一人で生きていける女の子であれ、理解者が出来ることは等しく尊いことだと思うので。

そして始まった時と同じように走りながら終わっていく、綺麗な終わりだと感じた。

 

さいごに

すごい楽しかった!

はじめてのハイローで右も左もわからなかったけども、それぞれの登場人物の性格がすごく掴みやすい作りで、こんなにたくさん出てくるのに混同することがなかった。ビジュアルも覚えやすいから乱戦になっても今画面にいるのは誰なのかとか把握できた。

ストーリーも前述の通り、それぞれの登場人物に出番があって楽しめた。もちろん喧嘩シーンの迫力も素晴らしく、撮影も演出もたぶんこれ以上(このシリーズ以上)に喧嘩を華々しく撮影することは今後できないんじゃない、とまで思う。あと怪我はするものの、あれだけ殴り合ってるのにも関わらず血みどろにならずに、みんなかっこよさを損なうことなかったのが大変見やすい。

地区のお話であること、学校への帰属意識や階層の移動とか、LDH内の「tribe」の感覚とかなんか色んなこと考えられるようにも思うが、そもそもこの映画を観ながらそういうことを考えるべきなのか迷う、エンタメとしてのパワーがある。法の下の善悪はまったく重要視されないが故に、犯したであろう法を社会に対して償うことはなかったりするのでツッコミどころはゼロではないかなとは思います。この地区に法は存在するのだろうか……。

とはいうものの、面白く熱い映画だったことは間違いない。『THE WORST X』が本当に楽しみです。

*1:これを一般的には二次創作と言います。

*2:アレンとクラウス。

*3:映画ドラケンと舞台ドラケン。

*4:行動の原因を病気に求めるのはありがちだが、それが普遍的で誰の身になっても苛酷な苦難であると理解している一方で、「癌」という病気をそうやって消費するのが私は苦手だ。

*5:こんなこと考える映画じゃないのかもしれませんが……。

*6:年齢差知らないけど。タメだったりして。