サニーサイドアップフォーチュン

映画、特撮、演劇、ダンスボーカルグループ

感想『QP』『らせん』『リング2』『貞子3D』『貞子3D 2』

QP

とにかく格好良かった。我妻の殺伐とした生き方もそうだが、全体として絶対に真似できない・入っていけない世界が格好良いというということだと思う。

それにしてもトムとジェリーの関係が魅力的である。一人でも生きていけるけど泣いてしまうトムと、泣きはしないけど後追いするジェリーというだけでも相当だった。沖縄の看板を見上げている段階で、手に届かないものに手を伸ばす悲劇の予感があり、そもそもこういう題材でしかも青春を通り過ぎたところまで来てしまっているので幸せな終わり方はしないんだろうなと想像がつき、悲しくなってくる。前半は元がストーリーテラーのウキウキ初めての極道ライフだった分、後半の陰鬱さがつらく、個人的な感情として姉心で観てしまうので「元は早く実家に帰れ!」と思っていた。

何度もインターネットに書いてしまってはいるものの、血でびしゃびしゃになった我妻のビジュアルがとても魅力的だったのと、情報屋のエイジがかわいいのと、蜂矢が頼りになってよかった。蜂矢は長生きしそうだけど、エイジは猫みたいに突然姿を消してしまいそうで、勝手に想像してなんとも言えない気持ちになった。

突入せんとする我妻と、喜多嶋に牙を剥かんとする君塚のシーンで終わるのがドラマとして非常に格好良くて好きだった。

 

らせん

完全にSFだった。リングとはもうほとんど別物の空気感ではあるが、リングで起きたことを説明する作りでこれはこれで結構ありかなと思った。『屍者の帝国(原作のほう)』とかもこれはこれでありかなと思って読んでいたので、そういう感覚だった。『貞子DX』が「インターネットを媒介に爆発的に増殖する貞子ウイルス」みたいな話であることを思うと、『らせん』のように何か説明がつくことで納得感が出るかなと思った。

ただ、同一DNAから同じような個体を産んだとして、DNAに記憶があるわけじゃないんだから同一個体ではないでしょうと思うけど、貞子の思念という便利なものがあるのでそういう因果が記憶にも作用してるのかな。

 

リング2

演出は『リング』を忠実に引き継いだ感じだが、展開はよく見るホラーという感じであまり怖くなかったし、そんなに面白いとも思っていなかった。が、一応こちらの展開があることによって「貞子」という日本最強の幽霊がシリーズ化し、また呪いが思念の枠を出なかったことで人類は今日まで滅亡せずにいるんだと思う。

「呪いのビデオ」を観て死んだ女子高生が、新たな呪いの根源になる展開は「らせん」と違う呪いの伝染についての理由付けで良かったと思う。あと、高野舞の描き方が絶妙な感じがして、現実に慄き浅川の住所を警察に伝えたり、親族でもないのに陽一と過ごしていたり、大丈夫なんだろうかと思わないでもないが、舞さんの一途で儚げな感じでなんとなく納得している。

 

貞子3D

画面は特撮映画という感じだった。別に怖くもなく*1、主人公・茜を愛せるわけでもなく、途中で孝則が『らせん』の「安藤孝則」なんじゃないかと思い至ったところでそっちの因果の方に興味が湧いてしまった。孝則、優しくていいやつ。石原さとみさんはお芝居の方向性がホラーに向いてないと思った。

熟成された黒髪ロングの被害者たちがコオロギの集合体みたいな異形の化け物になり、それと茜が戦っていてなんとも言えないバイオハザード感を感じていたら映画が終わっていた。シドの『S』がすごく良かった。

 

貞子3D 2

子役の子たちはみんなとても良かったが、楓子が茜以上に愛せないヒロインすぎて辛かった。まだ大学生なのに姪っ子の世話や自分のメンタルの問題などを抱える大変なヒロインではあるのだが、どう見ても信頼すべきではない柏田を信頼しかけたり、凪について決断すべきは孝則なのに楓子が決めたり、観客的には予想がついていることを楓子が知らないばっかりに中途半端なミスリードが続き非常にしんどい。また、捜査シーン的なものが一切ないので情報が共有されている等の疑問点がどうにも拭えず、乗り切れない。この内容ならもっと孝則が頑張る話で良くないか? 楓子のトラウマの治療は別に貞子と関係ないんだから……。

あと、とりあえずひたすら暗くするという演出は、なんか違うと思った。

一応、前作を意識したであろうハイドシーンや、孝則の勤め先が「浅川」病院、楓子と凪が叔母と姪であることなどは『リング』を踏襲しているっぽい。

*1:3Dで見るために作られた作品を2Dで見ておいてそんなこと言うのは良くない。