サニーサイドアップフォーチュン

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完走『仮面ライダーセイバー』

仮面ライダーセイバー


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W以降、テレビシリーズの中で唯一完走し損ねていた仮面ライダーである。

言い訳ではあるが、すごく仕事が忙しい時期であったし、いろいろ*1あったし、序盤で振り落とされてしまった。が、この度久々にTTFCに入ったので見直すことにした。

これは結構、一気見した方がよい作品だなと思う。序盤のソードオブロゴスの自己紹介パートみたいなところを乗り越えると、仲間や約束、それぞれの登場人物の人生の選択というテーマ性や、常に敵がメギド勢・ルナという謎の一貫性などもあり楽しく視聴できた。本当に、カリバーを敵とする最序盤の物語でかなり損している。

裏切りパートが唐突だとかいろいろ言われているが、確かに話の入りは唐突なのだけど、登場人物の心情としては「上條さんに助けられ、組織に所属していない飛羽真」と「上條さんに裏切られた組織に所属する剣士たち」でとらえ方が違うのは当たり前だし

、そういう他者との折衝が発生し仲間というお飾りでない唯一無二の絆を手に入れるという展開は良かったと思う。前述のとおり、ストーリーも大きく脇道に逸れたりすることもないし、これだけの話数でありながら常に同じテーマと謎で展開していく物語であることは良かった。

セイバーは撮影手法であるとか、内容にかなり新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けている。確か飛羽真くんの小説家という設定も、旅の剣士でいられなくなったゆえに生まれたかなんかだったような気はするが、それが世界が「全知全能の書」にある結末を迎えた後も、みんながいろいろな物語に思いを馳せて新しい物語を創造し、飛羽真くんがみんなの物語を書くことで世界を取り戻すという明るい展開に結び付いたのも個人的には評価する。また、飛羽真くんのメンタルが非常に安定しているため、彼が常に精神的支柱として登場人物の中におり、代わりに倫太郎くん賢人くんがメンタル問題の揺れを担うところなどは、それぞれの魅力になったのではないかなと思う。プリミティブドラゴンの克服なんかはそのメンタルの強さの際たるもので、すごく良かったと思うし、プリミティブドラゴンが最終話しっかり飛羽真くんを助けに来てくれるのなどは「仲間」という強い一貫性のもとでこそ輝くなと思う。

おそらく、セイバーをちゃんと見てからスーパーヒーロー戦記を見直すと評価が変わるだろうなとは思う。

一方で、日常の掘り下げやキャラクターの多さゆえに描写がそれぞれ少なく、かなり感情移入しづらい状況であったと思う。私は蓮くんとデザストが一緒に旅をしているのがそこそこ好きだったが、そういうことをするならもっと掘り下げてほしいなとは思う。なぜ二人が同族意識を持ち、どうして最期を託すに至ったのか、こちらの想像力に任せるのではなくてもっとちゃんと見せてほしかった。でもこの二人のエモーショナルな関係は好きです。デザストはストリウスが生み、ストリウスが意味を見出さない以上無価値な存在(=虚無)でしかなかったところに、同じように強い剣士としての存在意義を失った蓮くんのもとで糧としての在り方を見つけるというのが好きだった。虚無がただのヤバい聖剣というだけでなく、デザストの形見にもなるし、デザストの戦い方を知る蓮くんだからこそ賢神に勝つというのはとても熱い。ただ、これも特に作中で説明はない。

飛羽真くんと敵対してしまった倫太郎くんと賢人くんの、日の当たるところにいる飛羽真くんから離れて日陰に戻っていく倫太郎くんと、それを日陰から見つめている賢人くんという描写があったり。カリバーとして闇の世界から戻ってきた賢人くんが、暗闇を取るか黄雷を取るか一瞬迷ったりする描写があったり。割とそういう良い描写を突然挟んで来るから嫌いになれない。

そういう意味で言うと、いろいろ重要情報はあるが、説明が軽い・もしくはされないというのも問題点だったかな。

また、話の規模感のわりにすべてがこじんまりしている。

地球全体の世界滅亡がかかっているのに戦っている人がみんな日本名で、ソードオブロゴス大丈夫かという気持ちもあるし、CGを多用したからこそのワンダーワールドであるが結局あまり広大さを感じることもなかった。予算やら感染状況やらいろいろある中での制作なので贅沢を言っているような気もするが、この規模感の感じ取れなさは要所要所で気になってしまう。

メギド勢が常に敵であったことは良いこととして挙げたけど、別にメギド勢に敵としての魅力があったかと言われると微妙である。ストリウスが「自分の書く物語すら全知全能の書の一部」ということに絶望する流れは良いが、キャラクターとしての造形の魅力とはまた別だと思う。敵として、マスターロゴス(イザク)の方が印象に残っているとすら感じる。マスターロゴスの敵としての信念は全登場人物の中で最も薄っぺらいと言っても過言ではないが、狂人っぷりはなかなか魅力的だった。

個人的には神代兄妹が好きで、玲花様がマスターに従っていると見せかけて、凌牙お兄様がマスターに従うことを是とするから従ってるだけというのが良かった。

そういうわけで、放送時から今に至るまでいろいろ言われている本作であるが、週間でちょっとずつ見るよりは、ガンガン一気に観た方が絶対に楽しいと思う。

*1:炎上