サニーサイドアップフォーチュン

映画、特撮、演劇、ダンスボーカルグループ

感想『さかなのこ』『異動辞令は音楽隊!』『東京の雪男』

さかなのこ

とても良かった。何度も泣いてしまった。

語りすぎないけども何が起きているのか理解できるし、モチーフや人にちゃんと意味があるので、映画として本当に上手いと思う。なによりミー坊の近くにいる人たちがみんな、ミー坊がお魚さんのことが大好きで、他のことをうまく出来なくてもそれで良いと言ってくれる優しい世界なのがもう本当に涙が出る。ヒヨが恋人にミー坊を紹介した時、ミー坊は「自分が笑われている」という意識すらなかったんだけども、それに対してしっかりとヒヨが行動に移していたのが切ないけども優しくてよかった。

ミー坊がミー坊らしく生きられるようにするのって、本当に大変だと思う。離婚して、片親の家庭で、それでも家中に水槽を置いてまでミー坊のやりたいようにさせる母は、ミー坊の目を通してだから優しくて良い母に見えるけど、兄にとってそれがどうだったのかとか考えて辛くなる。

ミー坊の純真さはそんな感じの辛い側面に、気づいているのかいないのか、わかっているのかいないのか絶妙な感じで、魚に対してもそれは変わらず、残酷に殺す父を見て叫ぶけどその後の焼いたタコは美味しく食べる子どもそのままに大きくなったような。そういう不思議な雰囲気に能年玲奈さんがぴったりで、こういう彼女のお芝居をもっとたくさん見たいねと思った。

ミー坊に感化されていく、多分おじいちゃん子の総長かわいい。

 

異動辞令は音楽隊!

ほっこり系の良い話で基本的には理想に基づき展開するのだけど、地方男性社会にどっぷりと浸かったパワハラ男性の造形や、アポ伝強盗の被害に遭う高齢者などの描き方、仕事と音楽隊の両立、痴呆の母と裏切られ続けている娘の心情の、そういったしんどさは結構しっかり描かれていて良かった。展開は予想つくところではあるにしろ、そういうしんどさから目を背けずに、ハートフルさに頼りすぎない作りなのはこのポップなタイトルからでは予想できない。

一方でまあまあ都合良く話が展開するのはまあそうで、せっかくしんどく描いたわりにそんなに上手く話が転がるかどうかみたいな気持ちにはなる。

地方都市の呑気な風景が、長閑と閉塞感の合間にある感じがあって好きだった。

 

東京の雪男

多様性、持続可能性というテーマで作られたドラマで、尺がない中いろんな問題を組み込みながら、テンポと空気感を壊さずに「すこしふしぎ」であり続けたのがよかったと思う。なにせ尺がないから盛り込みたいことに見合ってなくてちょっと唐突な時もあるのだけど、基本的に翠とユキオのカップルは可愛くのほほんとお互いを好いている。

しんどい社会を描くところじゃない場所に、ちょくちょく険のある雰囲気を感じていたけど、これは多分脚本家の人と私の言葉の選び方に差があるゆえだと思う。