サニーサイドアップフォーチュン

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感想『シン・仮面ライダー』

全然好きでしたね、私は。

でも時間経ったら問題点わかってきた気がする!追記はしてない!

特に解説なし、観賞済みが前提、ネタバレ配慮なし

シン・仮面ライダー

ストーリー上問題点があるところとしては、この映画が「皆さん仮面ライダーは観たことありますよね」という始まりで、展開であることだと思う。本編に移るためにキャラクターへの語りを削ったことで、彼ら(とストーリー)をあまり愛せないと判断する人もいるかなとは思う。どうしてそうなりたいかは作中にあっても、なんでそうなったのかは割とサラッと済まされているので。

つまり、私はそこをクリアしているので楽しく観れた。あと「監督の二次創作」って言われ方をしてるのを見ると、「それはもう『スーパーヒーロー戦記』で乗り越えた問題では?」という気がしてくる。後発作品なんて結局は原典の二次創作でしかなく、一方で人間を描くのに一次も二次もない。「仮面ライダー第0号」というのも非常に二次創作的であるが、劇場版の敵ライダーっぽさもあって個人的には好きだった。森山未來さんの芸術的な身体性が反映されていて良い。

本郷猛と緑川ルリ子の関係がとても良く、何せ二人はキスしない。本郷はルリ子に対して恩だとかメカニックだとか守るべき存在という感情が前提で、ルリ子は本郷に対して戦闘だとか導くべきものであるとか頼れる存在というのが前提にある。お互いの気性や目的を同じくすること、持てる技術・実力への理解で成り立つ関係なので、相手のバイオロジカルな性もジェンダーアイデンティティセクシュアリティもそこには存在しない。ただお互いを構成するものへの信頼と、あと共通してちょっとの父のコンプレックスがある。

父系への憧憬って令和の時代まで続く仮面ライダーシリーズのそれっぽさがあって、私はそれが「仮面ライダー」という物語が「本郷猛」という人から始まったからだと思ってる。今回はまさにルリ子や一文字が「本郷猛」というひとりの男性に対して、自分のルーツや信条を投影して理想化して行くのが私の中の仮面ライダー像にハマったという感じがする。何が正しいのかわかっていたとしても、自分を形作ったものや信じたものを完全に振り切ることはできないというか。本郷やルリ子の父(と兄)への屈折した感情も、一文字の本郷からの継承も、結局は自分が思っている以上に考え方の中に染み付いているというか。心臓や腸や腎臓がそうあるべき形に造られているというのに、心がそのコードから特権的に自由であることなどありえないのだから。

こういうことを考え始めると、今度は失われる存在としての母みたいな話になるべきだと思うのだけど、今回は省略する。

初代の「仮面ライダー」に関しては冒頭数話しか観ていない状態だが、それでもかなり初代の仮面ライダーをオマージュする形で作られていたのがわかって面白かった。綺麗に撮るのではなく、揺らしたり画面を絞ったり、とにかくカットを多用したり。ノスタルジーの一種ではあるはずだけども、普段平成ライダーばっかり見てる身としては目新しくもある感じがしてアクションの撮り方は好きだった。とにかく見づらいけども。

CGは序盤や中盤は当時のアニメっぽさみたいなのが作りたいからなのだと思ったのだけど、後半の長めのシーンはそういう感じでもなくシンプルに微妙なCGにしか見えなくて惜しいと思った。

ストーリーはとにかくシンプルで、ショッカーという組織が目指す偏った「幸福」に対して、本郷とルリ子が公権力を利用しつつ反旗を翻す物語で、それ以上でも以下でもない。本郷がどういう経緯でやってきて改造されたかも、ルリ子がどういう環境で生を受けたかも、一文字がなぜ2号になったのかも、断片的に語られるばかりでしっかり描かれることがない。

そういうところを鑑みるに、とにかくこの映画って何のために戦うのかっていうことに対する心象の話だよね。

で、それって「仮面ライダー」という技術が敵と同じ場所から生まれて、同じだけの脅威を持つ存在であるが故に、敵と自分を分つものが「心」しかないという状況だからでしょ? 自分の想いを投影して、仮面で覆い込んで、理想的なヒーローとして振る舞うって、そういうことでしょ?

というわけで、この映画の中に出てくる「誰(何)のために力(あるいは技術)を使うのか」はそれすなわち「仮面ライダー」のテーマだと思ったし、キャラクターの扱い方はとても初心者向きではないと感じこそすれ、そういう自問するヒーローであるという魅力がある映画だと思いました。

あと、終始本郷とルリ子の関係にやられていた身としては、イチローとの決戦の後で二人で過ごす時間があったのかなと思いました。

 

追記

流石に少し冷静になったんだけど、あまりにもオタク特有の深読みばかりでキモい。ごめんなさい。