サニーサイドアップフォーチュン

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感想『バットマン ビギンズ』『ダークナイト』『ダークナイト ライジング』

アメコミ作品をほぼ見たことがなかったので、marvelとDCの違いすらわかっていなかった。

バットマン ビギンズ

もっと鬱々として黒々とした暗澹たるイメージをしていたので、アニメ的な街並みやわかりやすい敵組織、ブルースの手段を選ばない正義とレイチェルの理想的な正義の差が存外爽やかに描かれていて、かなりコミック実写映画として観やすく作られていると思った。また、前述の通り街並みの感触、またそれを破壊するくだりの質感の軽さなども、古き良き特撮らしく実写映画感の強さに与すると思う。

仮面ライダー好きとしての肌馴染みの良さとして、ブルースの格闘能力の出どころが今回の敵であるラーズ・アル・グールの一派からもたらされたものであることや、理解ある執事アルフレッドと科学者フォックス、力を行使するということは犯罪者と変わりないという葛藤が理由にあると感じた。夢中になるにはキャラクターに魅力が足りないように感じるが、それはそれとして展開やビジュアルはシンプルに格好良い。

ブルースの、ヘンリーの、レイチェルの正義や覚悟は掘り下げればいくらでも出来るくらいのものだけど、展開上必要なので入ってるだけでそんなに触る気はなさそうというか、爽快さのために犠牲にされた感はあってより深い葛藤と孤独は今後に期待かなと思う。それが観たいというわけではないけど、あまりにさらりと流されており、ヒーローを描くがヒーローとなる人間の感情にはそんなに興味がないのかなと感じたので。

 

ダークナイト

すごかった。二つの対比、異なるもの同士が一対一で触れ合うところにコミュニケーションが生まれる以上、対比されるもの同士の摩擦がこの映画の醍醐味だと思う。表と裏、光と影を常に見せながら、いやらしくなくそれらを提示する「映画」という仕組みの上手さを感じる。

とにかく、ジョーカーのことをたいへんに魅力的に撮っている。喋り方、振る舞い方、歩き方、全部があまりに胡乱で、強烈だった。彼の畳み掛ける精神的に結構来るタイプの悪事に対し、観客側もキリキリするのでしんどいが、一個一個のしんどさがスタイリッシュさを伴って描かれており見応えがすごい。レイチェルとデントの社会的な意味、囚人のフェリーと市民のフェリーのお互いの中に残る善性。終盤の光、影が反転しデントが暴走するさまは大変に心苦しい。またブルースの覚悟や背負う悲しみのことを想い、全くもって救いのない苦しみを利用することになるゴッサムシティに対してヘイトも溜まる。

この終盤の映像や演出の流れがとても「映画」という感じで良かった。

まあでも、レイチェルとゴードンに対する扱いが、本当にこの人あんまり人間に興味ないんだなという感じがする。とてもあっさりしていたので。

 

ダークナイトライジン

ダークナイト』でどん底まで落ちてしまったブルースが再び「ライズ」するための映画だからか、『ダークナイト』が異色すぎたのか、雰囲気としては『ビキニング』の色彩や展開に近い。常に暗闇の中で戦ってきたバットマンが、暗闇の底から這い上がって昼間のゴッサムに現れることのヒーローとしての覚悟を感じる。

全体的に大味感があるのは最後ゆえの風呂敷の大きさもあるとは思うけど、まあこの三部作基本的に結構そういう感じで、ここに来て要素が多いからそれが余計に目立っているというのはある。

だが、それでも充分すぎるくらい面白かったと思う。チェイスシーンも大人数での格闘シーンも、破壊される街並みも、映画でなければ作れないものだし、派手すぎず生々しい格闘を繰り広げているのはシリーズらしい。

セリーナの貧しさとブルースの豊かさがもっと対比されて、二人の考え方の違いが擦り合わさる過程がもっとあるのかと思っていたが、そこはそんなになくちょっと拍子抜けではあった。まあ二人の恋が主題ではないので仕方ないのだけど……。

なので、登場人物とブルースというよりは、ブルースがなにを持ってしてヒーローとなり得るのかということに対し、考え、行動し、話し、そうしてヒーローになるという映画なんだと思う。

ブルースがゴードンに対してどういう気持ちでいたのか明かすシーンなど、少し泣きそうになった。警察組織がちゃんと正義という志を持ち、それを執行しようとするのが大変よいと思う。