サニーサイドアップフォーチュン

映画、特撮、演劇、ダンスボーカルグループ

20年雪組『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』『漆黒天』感想

ONCE UPON A TIME IN AMERICA

禁酒法があった時代のアメリカの、いわゆるジャズ・エイジの文化とマフィアのイメージはどうにも格好良く見える。衣装が良い。個人的には結構好きだろうなと思って観始め、観終わってもその評価にはあまり変化はなかった。

一幕ラストのヌードルスとデボラの恋の終わりがとても美しく、とにかくここが最大の見どころではないかと思う。またとにかく歌がお上手なため、望海さんと真彩さんの掛け合いがたくさんありこれがなんとも魅力的だった。一幕はヌードルスやマックスが裏社会でのし上がっていく高揚感、デボラが夢を現実にしていく格好良さなどもあって好きだ。二幕はそれと比べると、どうしてもわかり切っている終焉なのと、似たような場面の繰り返しでだらっとしている感じもあったが、ジミーが腹黒くのし上がっていくところは良かった。若干マックスが食われている感じの終わり方ではあったが、マックスが狂っていた青年期と利用される価値すらなくなった老年期という時間の経過自体はまあそんなに嫌いではないかな。

 

漆黒天

未見の方への特別な配慮は特にないですのでお気をつけて

 

確かにややこしいが(現時点で開示できる情報についてはかなり丁寧に)解説してくれるため、ややこしさの頂点は旭太郎と宇内陽之介の一騎打ちにあると言っても過言ではないかと思う。(説明された情報を信じるとして)旭太郎と陽之介のどっちが「名無し」なのかというややこしさが最高潮になる一騎打ちのシーンはたいへん良い迫力だった。なんの意味もないということはないのだろうという前提で、人をたくさん斬った「名無し」の持つ刀の汚しと人を斬っていない「陽之介」の綺麗な刀に注目しておくことが大切なのだとは思うが、結局「陽之介」が「名無し」を斬り殺していた場合もう刀では判別がつかなくなるので無意味なんでしょうね。

ストーリー自体は想像がついてしまう運びであったし、事細かにみんな説明するあたりもやりすぎ感はあるが、最後まで観てしまうと宇内陽之介もさして信用できない語り手なので、それはそれでまた何か意味があるのかも……と思える。底知れない荒木さんの雰囲気もよくあってたと思う。「笑顔」のために正面から何度も大写しになる表情の迫力が強烈で印象的だった。

癒し系の邑麻兄弟はずっと可愛いのだが、可愛いからといって残酷劇から逃れられるわけではないので悲しみだった。ちっちゃいワンちゃんの兄とでっかいワンちゃんの弟って感じ。作中では長妻怜央くんが弟だが、一瞬ある松田凌vs橋本祥平というまた別次元での弟分との邂逅が美味い。

最初にやたら綺麗な武士が死んだ……と思っていたら彼が梅津さんだったらしい。はじめまして。めちゃくちゃ美しい討ち死にでした。

坂本監督作品にありがちな出血量は、末満さん脚本の陰惨な雰囲気にはぴったりかもしれないと思った。とにもかくにもライネスである。流したいタイミングはいろいろあれど、大事に温存して最後の殺陣でライネスを流したい。