サニーサイドアップフォーチュン

映画、特撮、演劇、ダンスボーカルグループ

17年月組『All for One ~ダルタニアンと太陽王~』15年月組『1789 -バスティーユの恋人たち-』18年月組『カンパニー -努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)-』感想

引き続き月組ばかり観ています。

All for One ~ダルタニアンと太陽王

楽しい作品だった。気楽で明るく人死にのないラブコメディで、衣装も煌びやかで目にも楽しい。終わり方も厳しい雰囲気ではなく、歌もストーリーの流れの中に組み込まれていてぶつ切りになったり停滞する印象なく滑らかに進んでいく観やすい作品だった。

ダルタニアンの実直で飾らないキャラクターも良かったが、三銃士の描き分けもわかりやすくて良い。アラミスが銀橋でお客さんをメロメロにしていくところなど凄すぎて笑ってしまった。ポルトスは可愛くてよく体が動く。ダンスがお上手である認識はあったが、アクションでめちゃくちゃに体が動いてるところ見るとそれはそれで盛り上がる。アトスのあわあわしてるダルタニアン・のんびりしてるアラミス・あんまり話を聞いてなさそうなポルトスを綺麗にまとめる大人な役どころは格好良い。銃士隊の衣装が可愛くて、王侯貴族や護衛隊みたいに過度にキラキラしているわけではなく、デニムや革みたいな頑丈そうな制服もちょっとガラ悪そうな私服も可愛い。

私個人としては、そんなに数見てないがこういう「真面目で可愛いヒーロー」の珠城さんは割としっくりくるなと思った。すごく似合ってる。

ずっとキレてるベルナルドも憎めなくて、ダルタニアンへのコンプレックスなどが見え隠れする感じもキャラクターとして魅力的だと感じた。ルイ14世はコメディ部分をすごく担っていて大変そうだったが、男の子だったり女の子だったり、コメディだったりシリアスだったり、いろんな表情を見れて良いと思う。

別に女性の王でも良いんじゃないかなとはちょっと思ったのと、ジョルジュは「即位」を割とすんなり受け入れるんだなとは感じた。あと歌がちょっと不安感ある。そしてエンタメの持つ明るい楽しさにステータスを振り切っている作品だと思うので、人間の可能であるとか葛藤を明確に描くことがない。楽しいが、そういう人間ドラマ的な満足感はないかなと思った。

で、マチューという銃士隊の隊員ということだけど、このビジュアル、20年夏頃のヨサン感が強いのでぜひ確認してみてください。

 

1789 -バスティーユの恋人たち-

フランス革命で面白くならないことってあるの?と思いながら観始めて、ちゃんと最後まで面白く観た。東宝版を観たことがないため比較のない感想です。

というわけで、本作は基本的に登場人物が社会の仕組みに振り回され、革命(王家にとっては破滅)に向かうストーリーなんだなと思った。貧富や社会的地位の差、そこから来る境遇と打破に向けた行動の差はあれども、各地位における振る舞いの枠組みがあり、それに対してどうしたいのかという話だった。ロナンやロベスピエールのように王権の打倒を目指す形で仕組みに報いるのも、アントワネットのように政略結婚に反抗し息子の死に反抗し最後は王妃という仕組みを受け入れるのも同時並行なので群像劇としてとても面白い。

トップスターとトップ娘役の関わりがほぼ何もないに等しく、完全に「民衆の主人公」と「王侯貴族の主人公」を据える形式で、私は初めて観る。珍しさの度合いはわからないが、宝塚って満遍なく生徒さんに対し役を用意しなくてはならない反面、トップという唯一無二の存在から連なる優先順位があるので、群像劇と相性が良いようだがその実トップ以外が並列に見えるので良いのか悪いのか……と感じた。

宮廷やドレスの美しさは宝塚らしくふわふわのキラキラで良かった。平民と言えど宝塚なので本当に汚いわけではないが、それでも印刷工たちとブルジョワ階級の子弟の衣装には歴然とした差があり、平民の女性と比べ物にならないほど可愛いドレスを着ているオランプもヴェルサイユでは地味に見える。単純な三階級ではなく、グラデーションを感じられたと思う。最後の龍さんの真っ白な衣装や、美弥さんの水色の衣装が本当に素晴らしく王子で、生まれ変わったら着たいと思った。

曲がどれも本当に良く、またほぼ歌いっぱなし踊りっぱなしなので非常にキツそうである。にも関わらず、汗だくになるわけでもなく美しくあり続けるので宝塚はすごい。曲は同じなのか確認したくてのちのち東宝版のYouTubeの動画も見たが、もしまたやる時が来たらぜひ劇場で観たいなと思った。

 

カンパニー -努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)-

これが昭和の話ならまだ良かったけど全然そう言う話でもないところが辛い。

何せ全ての価値観が古く、そしてアップデート「した」風を装っているだけの無理解という感じである。語彙、思想ともにあけすけで、古い人間や組織が熱意や若い世代によって塗り替えられていく体でいながら、ただなんとか乗り切ったという印象だった。紗良お嬢様のスタイリングはおよそ18年という雰囲気ではないし、男性陣のスーツも宝塚の形なので現代的ではない。元になった小説を読んでいないのでなんとも言えないが、内容・ビジュアルともに「せめて舞台が昭和なら」と思うものだった。

またバレエのお話でありながら実際バレエの公演の様子はほとんど描かれないので、観客がハラハラしながら成功を祈るような場面もなく、場面が変われば公演が成功しているといういまいちしっくりこない進行である。相撲の例えもしっくり来ていないが、脚本家もしくは原作者が相撲が好きということですか? 高野さんが世界的なダンサーであるなら単身でいろいろこなしているとはどうにも考えづらく、自己流の対処というのもどうにも納得感が薄い。紗良お嬢様の優生思想的なセリフも褒められたものではない。上げ出したらキリがないのでこの辺りでやめる。

月謝で苦労し成功者は一握りという仕組みは、宝塚歌劇団を目指す流れの中に似た仕組みがあると思うので、取り上げたくなる気持ちはわからないでもなかった。真面目で実直な珠城さん、セクシーな美弥さん、可愛い愛希さんというのもちゃんと似合う配役で、これは良かったと思う。が、連続してそういう役柄のものを見ているので当時みんな満場一致でそういう印象だったのかなと思った。そして月城さんのビジュアルが素晴らしく良く、アイドル好きとしてはたまらなかった。私の好きな彼女もバーバリアンの一員だったので、ドームで防振双眼鏡で見たいなと思った。

『BADDY(バッディ)-悪党(ヤツ)は月からやって来る-』の方は『カンパニー』で出てきた内容を踏まえてのもので、その仕組みもストーリー仕立てということも目新しくて面白いと思った。お決まりのポイントの使い方も面白いし、衣装も可愛かった。最後はみんなまとめて天国へ、というのも笑えるポイントだった。『BADDY』が目新しく面白いショーであることを思えばこそ、お芝居の方がなんとも……。