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感想『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』『レザボア・ドッグス』

戦慄怪奇ワールド コワすぎ!

完全に気を抜いて見ていたので、女性と他者に対する男性(工藤)の加害についてまさかこんなにテーマに据えてくると思わなくて、本当にびっくりした。正直、芦山浄水場*1をロケ地として設定された時点で全く怖くなくなってしまったため、物語のテーマへの感情で最後まで観たとも言える。

工藤のヤバさは一作目しか観ていないのでどのように変遷したのか知らないのだが、今回はそれが「女性への有害な態度」という形で表されており、始めから一貫している。工藤のそのヤバさに対し自身はまるで無自覚ではあるものの、市川や遥、絢音らに指摘されて(この指摘されるという描写もすごい)、有害さの化身である自身を認めて殴り倒すという展開。そこまで考えているかはわからないが、田代カメラマンがそれをひたすら傍観する立場であることも象徴的だと思った。

また若者四人に対してそれぞれがそれぞれとして過去に経験した暴力、それも性暴力の類を観客には理解できるようにされていても描かないとか、被害は生まれ持った性別に関係ないのも納得感がある。クィアカップルがごくごく自然に描かれているのもとても良い。本当に怖いのはなにか、本当に立ち向かわなければいけないのはなにか、ということにすごく真っ直ぐに答えを出しているので、ホラーのはずなのに爽快感すらある。被害を受けた可哀想な怪異を打ち滅ぼすのではなく、怪異すら味方につけて「可哀想になる原因」を作ったもの──即ち、有害な男性性を倒すんだ。

なんかもうホラーであるよりかはそういう有害さに対する受容と打倒の映画として良かった。

 

レザボア・ドッグス

面白かった。ほぼ会話劇だけだしストーリーとしてはとてもシンプルだが、だからこそ個々人の事情や性格に則る章立てが効いてくる。ホワイトとオレンジ、エディとブロンドの友情の違いがまた良くて、前者の偽りの上に築かれたものと後者の長年の信頼によるものとが最後に交錯してどちらも崩れるのが、観客としてはわかっていても儚く感じて余韻が残る。悪人の会話なので倫理観も何にもないが、彼らなりの価値観によって行動しているし正義感みたいなものもあって、憎めないのも良かった。

会話も曲も演出も、かっこよかった。オレンジの回想の時間経過の仕方が好きだ。

*1:様々な作品でお馴染みのロケ地。