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感想『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『ザ・ライト -エクソシストの真実-』『屍人荘の殺人』

マッドマックス 怒りのデス・ロード

面白かった!フェミニズム映画として有名なイメージがあったんだけど、画面の強さやかっこよさというのと、家父長制や女性の侵害される権利について両立させていて本当に面白い映画だと思う。まじで特に意味もなくエレキギターを弾き続ける人がいたのとかは本当にバカの絵面なんだけど、グラデーションこそあれ戦わないもののいない作品であり、それが特に女性において老いも若きも関係ないところが大変格好良かった。フュリオサが多くを語らない中にも映画になるくらいの苦悩がにじみ出る表情が良く、隊のリーダーとしても独善的ではなく、言葉が少ない状況でもストレスにならない。

また男性陣が――味方になる男性陣の良さが、マックス、ニュークスともにしっかりあって魅力的だった。マックスは寡黙で粗野なところはあるものの、フュリオサと恋仲になるわけでもなければ常に対等であり、妻たちに対しても「生存に対して邪魔であるか否か」の判断基準でしかないため全然エロい目で見ないし、うまいこと活躍したら態度を改めてもくれる。イモータン・ジョーを討ち取った英雄はまぎれもなくフュリオサではあるしあの砦を救ったのもフュリオサとなるのだと思うが、フュリオサにとってはそれが一人で成し遂げられたものではなく、マックスという相方があってこそというのを感じられる別れ方も良かった。会話の少ない映画の中で、視線と行動がとても雄弁でとにかくかっこいいのだ。マックスがフュリオサに銃を譲り肩を貸したところなど良すぎて声が出た。その前に「男性器みたいな銃のほうが残存する弾数が多くて、この大きい銃は少ない」みたいな会話をしていたわけで、かなり示唆的なシーンになっているような気もする。ニュークスはたぶんウォーボーイズの中でも結構センチメンタルな部類なのではないかと思うけど、それはそれとして置かれている立場の変化の中でショックを受けて動けなくなっているところを助けてもらって、そこから言うなれば彼女の恩寵に報いるために変わっていく姿が健気だった。「オレを見ろ」が妄信から誰かのために戦うことを覚えていてほしい、あるいは親愛の情のためのものに変化しているのが良かった。

エモさに則った感想になると、最後マックスがフュリオサに輸血するところまでマックスがO型であることを忘れていたのだけど、水なくして生きられぬ人類から生まれし血液と、血液から生成される母乳と、エンジンの血液たるガソリンと、輸血袋としてのマックス、フュリオサの運転する車にガソリンを注ぐマックス、マックスの輸血で一命を取り留めるフュリオサ……というようなモチーフの使い方とか、反復とかも丁寧にあった印象を受けた。そういうストーリー上の楽しさとフェミニズム的なテーマがちゃんと共存していて良い映画でした。

 

ザ・ライト -エクソシストの真実-

全然面白くなかったが、話した後にポロポロと泣いたアンソニー・ホプキンスがよかった。エクソシスト系の映画ということでなんとなく「ヴァチカンの~」が脳裏に過るが、描き方としてラッセル・クロウなら一人で殴り飛ばしているところが見たいが、アンソニー・ホプキンスなら狂気に苛まれているところが見たいというようなところを感じる。

全然エクソシズムをヒロイックに描いていないところは、様々な精神疾患と切っても切り離せない題材であるが故に良いところではあると思った。けどまあ、なんかこう派手でもなく、かといって怖い感じの描写量も少なく、マイケル神父の内省と信仰の映画のために淡々としていてそれほどでも……という感じだった。もしかしたらあのじわじわと悪魔に目を付けられている感じの演出は怖いのかもしれないが、悪魔系ホラーではよく見るので今更ぐっとは来なかったかな。

あまり大々的に教会を使っているわけではなく、生活圏内みたいな建物で撮影されているのだけど、そういうところはこの映画のテンション感であれば、同じくらいの地に足ついた感じで良かったとは思う。

 

屍人荘の殺人

葉村も明智も剣崎も可愛かったので思ったより楽しめた。ライトな感じの雰囲気で、ものすごい人が死んでる割には会話も軽やかだから、そういう気楽な感じの鑑賞態度でちょうど良い。動機が女性の苦しみに由来するものなので、もしかしたらそこはもうちょっと消化できたかもしれない。

ミステリの王道の始まり方をする割に、突然ゾンビものになるところなどは面白おかしい印象も残しつつ、トリックとしても訳わからなくなるほど畳み掛けることもなかったし、本当に見やすかった。