サニーサイドアップフォーチュン

エンターテイメント感想ブログ

感想『仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏』『LAMB/ラム』

仮面ライダーセイバー 深罪の三重奏

やりたいことはわかるしとても重要な映画だと思うし、良い作品だとも思うけど、好きか嫌いかみたいな個人的な感覚で言ってしまうと別に好きではない。物語をテーマとした作品である中でその分岐や人生の不可逆性を利用した上手い作品だと感じたし、息子無きまま父としての物語を内包している飛羽真くんはとても魅力的で、一人のヒーローとして本編のように世界のためにも、この映画のように一人のためにも戦えるのが良かった。八年という歳月がちょっと長すぎて、本人達の変わらなさは気になるところではあるが、取り巻く環境に変化があったのは良かった。

『セイバー』として締めくくりに相応しい完成度の作品であることは確かだが、世界を守るために何もかもを賭して戦うことを選んでいる人たちに対して、守りきれなかったものの側にいる人たちが「守れなかった責任」を求める形になっているのがあまり好みではない。『クローズ』でもそうなのだが、何かを守るために戦いがあるというフォーマットを避けられない中で、貴方達が戦うことを選んだから犠牲が出ます、責任を取りましょうという作りになるのがしっくりこない。これは登場人物たちに払われる犠牲に対して無自覚でいて欲しいわけではなく、メタ的に避けられないフォーマットの先に安易にその形式の苦悩があるのがあまり好きでないという話。

エンディング映像が綺麗で格好良かった。撮り方もすごく映画っぽい感じで、人物を映す時の余白にこだわりを感じる。玲花様も最高に美しいし。

 

LAMB/ラム

宗教的モチーフに詳しければもっと建設的感想を述べることができたのだと思うけど、そういうものにあまり詳しくないので、子供を亡くした夫婦が子羊という神様のモチーフから子どもを授かり、それが宗教的あるいは神話的なものに由来するのだなというところまでしかわからない。しかも母の名は「マリア」である。

なので記録するとしたらアダの可愛さとキモさであるとか、綺麗な景色、粛々とした暮らしの描写が良かったことと、絶妙な嫌さ加減についてであると思う。

ラストの方、アダが養父に縋っていたことや養父母がアダが去ることに対して安堵に近いリアクションを残したことが、アダがこちら側の子どもではないということをわかっていながらも子どもを望むことをやめられなかった夫婦の歪さという感じで気持ち悪い。良くも悪くも解釈の余地を多量に残している作品なのでなんとなく締まりがない感じはあるが、冷徹さ静謐さからくるキモさは良い雰囲気だと思う。