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感想『キングダム 運命の炎』『キングダム 大将軍の帰還』『羊と鋼の森』

引き続き、山﨑賢人さんしばり……というかシンプルにキングダムに夢中でしたわね。

キングダム 運命の炎

今回も面白かった!

本人の意思とは関係なく背負わなければならない役目があり、逃げ出すことが許されないが故にどのようにして折り合いをつけて受け入れていき役目を内面化するのかの話が好きすぎて、政の過去編で泣いてしまった。紫夏、かっこいい。

吉沢亮さんて目が綺麗すぎるので、曇るお芝居や苛まれるお芝居時がすごく綺麗で好きだった。

政が望む、望まれるの中で苦しみ、諦めるのではなく自らが持つ資格について真剣に向き合うのが大変に格好良かった。何だってそうだとは思うけど、誰かが誰かの上に立つという選択が支持されるかどうかは、個人の考え方へ共鳴できるかという描き方がはっきりしているなと思った。政がそれまで虐げられて生きてきて卑屈である一方で、それでもなお気高さを取り戻すことができることは紫夏などにそう扱われ自分の中の望みを体現した結果なのだと思うし、そういう登場人物同士の相互作用を衒いなくやり通すのが良さだと思う。

王騎将軍が童と呼びながらも信を王宮まで連れて歩いていたり、わざわざてずから役目を与えたりすること、口を挟まれることに不快感を表すことが破格の扱いであることは明確なのだけど、信本人がどこまでそれが「特別扱いである」かを理解しているのかは描かれないからこそ嫌味がないというか、信自身の持つ可能性や性質が周囲をそうさせるのだろうなという風に感じられて好きだった。

信自身も隊長として成長しており、誰かを指揮することを体系的に学んでいるのが格好良く、個人のカリスマ性だけでなく戦場での経験が言葉に重みを持たせ隊員を鼓舞することに繋がっているのが良かった。飛信隊の泥臭いアクションがまた必死な印象が強くてハラハラした。飛信隊が武功を挙げることが信本人や隊の栄誉となること、死んだとしても名もなき兵士ではなく何かになれること。そういう刹那的な価値観が根底にある「生き残る」「守る」なのであまりに捨て身に見えてすごくしんどかった。

信は王騎将軍のことを尊敬し目標としているが自由なために、ほかの兵士たちにはない奔放さで王騎将軍と向き合っているが、羌瘣は全然王騎将軍へ思い入れがなさそうなのも好きだった。どう考えても、羌瘣の忠誠心が向くとしたら信にでしかなく、またあるいは飛信隊への愛着であり、さして王騎将軍のような人への憧憬ではないわけで、これからの羌瘣がそういう身近なものへの愛着と忠誠心で誰かを大切にする戦いをしてくれたらいいなと思った。

 

キングダム 大将軍の帰還

なんかもう各要所でおいおい泣いてしまい疲れた……。

王騎将軍の将軍としての器のでかさも非常に魅力的なのはもちろんだけど、そこに説得力が乗ってくる大沢たかおさんの気持ちの入り方がすごく良かったし、なんかもうもしかして王騎本人かな?くらいの迫力だった。

とにかく「大将軍の帰還」は王騎将軍が戦場に帰還する話であり、咸陽に帰還する話であるため、何よりも王騎が魅力的に描けていないといけないわけだが、それに関してはもう成功していると言わざるを得ないと思う。というかこれまでもそうだが、気持ちがもう乗っている役者が演じているのだから非常に心が熱くなるし、なんかこう観客程度で気持ちが引っ張られるのだから、演者としても何かあったろうなというか、そういう空気感を勝手に想像している。

師弟として、王騎将軍が信にその在り方や直接の命令、そして何を見るのかを直々に教えることの、そういう継承が大変に魅力的な関係でとても好きだった。信のことを子どもだと思っているからか、ところどころ甘くけれど役目はしっかり与え、信もまた決して王騎将軍が己を蔑ろにすることなどないという信頼があってよかった。騰も今回すごくよくて、誰しもが悲しみに打ちひしがれている中でそれを見せまいとする強さ、副官としての矜持、将軍としての在り方が格好良かったし、最後に信に自分で言わせたところもすごく潔くて良かった。自身が長らく仕えた殿の最後のパダワン*1、信……。

王騎将軍がそうであるように、信もまた信が損なわれることが隊の負けん気を呼び覚ますことになっていて、信を守ろうとする飛信隊のありようや尾到の去り方が非常に苦しくまずここですごく涙が出た。生きるか死ぬかの中で飛信隊に属したということが誇りになること、名誉であること、それを隊長という一人の存在に反映させる兵士としてのモチベーションはとても限定的な価値観でホモソーシャルなものだと思うけど、そういうもので自分を鼓舞して郷里のことを一度忘れて戦場に出るというのは非常に人間臭くて泣けてくる。

摎が美しくて切なくて、昌文君に決意を語るところなど新木優子さんの高潔さと相まってとても綺麗だった。綺麗だったところで言えば、訃報を聞いた政の涙があまりに美しかったのでわあ~~と思ったのだけど、直前の大号泣している昌文君がなんか可愛かったです。

龐煖もだけど、趙の将軍たちがみなかなりねっとりしている感じで、策をめぐらせている趙を体現している印象で、一方李牧がさっぱりしているのが薄気味悪い雰囲気を醸し出していたなと今にして思ったが、もうとにかく王騎から信やほかの者たちに託されるもののことで頭がいっぱいで趙のことまで考えられない、残念ながら……。

ついでに舞台挨拶の中継も観られて嬉しーってなりました。

 

羊と鋼の森

キングダムってものすごい人たくさん死ぬんですけど、人が戦争で死なない映画見たくなったから選んでみました。穏やかで美しく、苦しいけど優しくて良い映画だった。常に自分の感受性にやられ気味なのでしょっちゅう泣いてしまった。外村くんの感受性と素直さを大事にして欲しい。

演者や環境の「普通の質感」がとても印象的だったのだけど、その中でもやはり兄弟とか姉妹とかの二人きりの、そして歳近く同じところで育ったが故の、かけがえがないがないのに疎ましいあれが、言葉が少ないのにそこにあるのがわかって良かった。たくさん乗り越えなければならない苦しみは、仕事をしたり生きていく中ではあるんだけども、それが緩やかに受け入れられ成長していくところも好きだった。

淡々としているし、すごく感覚的な言葉と間合いで描かれる映画だから向き不向きはあるかも。

あとあまりに柳さんが良い先輩なので、ああなりたいと思った。あんなに良い塩梅でいるのはとても難しいけど。

*1:スターウォーズにおいて、ジェダイの中でもジェダイマスターに師事している弟子のこと。