サニーサイドアップフォーチュン

映画、特撮、演劇、ダンスボーカルグループ

感想『彼の愛したケーキ職人』『バジュランギおじさんと小さな迷子』『ペンギン・ハイウェイ』

観た映画(もはや週末に限定もできないが)

『彼の愛したケーキ職人』

一つわかったのは私はやはり不倫のような契約外の関係性に対してあまり寛容になれないということで、オーレン(旦那)が自分のセクシュアリティをクローズドにしてアナトと結婚したのかとか(またはそうでないのかとか)、トーマス(旦那のベルリンの恋人)がどのように孤独を感じたのかとかそういう葛藤を帳消しにする私の個人的な辛さがある。

ただ映像の美しさや食事の映る映画が見たかったのでその点は良かった。街並みも綺麗だし、料理や厨房に生活感があって良かった。少しずつ映るご飯が美味しそう。

あまり多くを語ることはなく、どういう心情なのかは推察するしかないがそういうところが美しいなと思う。その点アナトは料理がさほど上手くないんだろうなとか、トーマスがオーレンの身につけていた洋服を着ることとかの苦しみとかは繰り返されるなと思う。この辺りの、苦しみというか切なさ、悲しみに対しては最後まで、乗り越えてハッピーになることもなく淡々としている。変な言い方かもしれないが、それは現実に則しているように思う。カタルシスはないけど、まあそれ自体は嫌いではない。

個人的にはそういう心情を察することは嫌いじゃないけど、トーマスが何を考えてイスラエルまで来たのか──オーレンの面影を追ってに違いないのだけど──それでアナトの元を訪れる(関係を構築する)というのはどういうメンタルなんだろう。お互いに最愛の人の影をお互いに見出したということ?

あまりにも私にとって致命的なまでに登場人物の心情に寄り添うことが出来ずにずっとモヤモヤしてしまった。

宗教と歴史に関する知識も必要だったかな。

 

『バジュランギおじさんと小さな迷子』

インドの映画初めて観る。

これもまた歴史について勉強が必要だった。肌の色や食事についてナチュラルにセリフの中に出てくる。所属する文化圏や身体的特徴は、シャヒーダーがどこから来て、どこに戻るべきなのかを探すにあたって、重要な手がかりであることは確かである。

パワンがピュアで、ラスィカーは先進的なところがある。子ども同士は政治的な問題は関係ないが、変わらず問題はそこにある。変わらず問題はそこにあるが、優しさは全てを超える。あと人をパンパン殴る。

インドの人ってもしかしたら街でIDOLみたいに急に歌って踊るんじゃないかという気がしてくる(最高)回想とか、謎のタメ、アクションシーンがやたら長いがこれがインド映画の味わいなのか?

BGMとか登場人物の態度含めて何を思うのか、何をするのかを何度も描くからぱっと観てわかりやすくて、今日のように*1疲れた頭で観てるのに向いている。密入国のあたりから警官のくだりはイライラしかけたが、それでこそパワンやシャヒーダーの性質なので私の性格の問題だと思う。

優しい人が沢山出て来るので、なんだか泣けて来る。みんなこうやって優しければな……。楽しくて優しくて良い映画だった。チャーンドのインターネットの使い方が大団円を導くのも熱い。

 

ペンギン・ハイウェイ

原作は読了済。

もうペンギンが可愛くて仕方ない。そしてアオヤマくんは頭の回るガキンチョである。そのアオヤマくんはお姉さん曰く「小さく気取った所が」ペンギンに似ている。故にアオヤマくんも可愛い。

アオヤマくん(たち)は思春期の一歩手前にいる。恋のような感情を遺伝子のロマンとして感じられるのに子どものありがちな感情の機微には疎い。それが可愛い。大人がもう考えることをやめてしまったような、世界の真理や、存在の真実について真剣に考えて向き合う姿に幼さを感じる。

絵が美しいということだけで見る価値があるとも思うし、夏の中で子どもが出会う不思議な体験や恋が好きな人は、もしくは子供のときの台風の風や急激に曇る空にどうにも胸が高鳴った経験がある人はぜひ観てほしい。

この映画嫌いな人いる?と思ったがそれは主語がデカいな。評価しない人がいる、その人がなにを要因として評価しないかもなんとなくわかるが、私は好きなパターンの映画です。

*1:私のコンディション問題。