サニーサイドアップフォーチュン

映画、特撮、演劇、ダンスボーカルグループ

感想『ほんものの魔法使』『TharnType2 -7Years of Love-』

衣装が可愛い2作の話。

宝塚歌劇団 雪組『ほんものの魔法使』

全体的にEテレ的なファンタジーと教訓めいた物語の展開なので、拗れた人間関係や複雑な感情というような面白さではないのだが、いかんせん朝美さんのビジュアルがべらぼうによい。これは本当に、感想としてどうなんだと思うのだが、幕上がって朝美さんが振り向いて歌い始めた時の「もしかして松田凌なのかな?」感が異常だった。なんの関係もない本当に申し訳ない感想ではあるが。とにかく、歌もお芝居もビジュアルも、朝美さんの少年めいた魅力満載という感じ。みんなだいすきあさみじゅんさん。

アダムが魔術の都マジェイアを去るときに残すのが「金貨」という、彼らの生活なんかを鑑みたとても苦しい展開だったのだが、割と全般的に風刺や世知辛い展開の中でアダムのピュアさみたいなのが引き立つという比較的古風な物語だった。流れとしては、私としては基本的にわりと面食らってる感じの舞台だったなと感じてしまっていて、歌やダンスが心情に訴えかけるためにあるのではなく、義務的に挿入されたり、視点の移動で転換*1するというよりは暗転させてしまう感じというか……。あとジェインの性格に無理を感じるところがあったのだけど、年齢の割に極端に振る舞いが幼い。助手たちが全体的に精神年齢の設定が幼すぎるのではないかと思った。

原作読んでないので、そもそもの認識に間違いがある気もするが。

それはそれとして、全て衣装がかわいい。アダムやジェイン、モプシー、ニニアン、ラストシーンなんかピーターの衣装も可愛いが、その中でも動物さんたちの衣装の可愛さたるやだった。

おそらく次代の雪組を担う的な意味*2で大きな役をもらっているであろう縣千さんと華世京さんがとても良く、勝手に心が熱くなった。前者はビジュアルが良く背も高い、後者は歌が上手い。モプシーの犬ならではの自由で人懐っこいお芝居も、ニニアンのおどおどしたお芝居も、四年後の様変わりもとても良かった。ジェインが幼すぎるのではとは書いたが、基本的にキャラクターの可愛さが魅力的な作品だったなと思う。

 

TharnType2 -7Years of Love-

youtu.be

これは本当に失礼な話なのですが、『TharnType』を見ずにこちらを見始めてしまいました。当て馬サブカップルLeoFiatが気になりすぎるあまりの所業です。

元からそういう構成なのかそれともこれが「2」だからなのかわからないが、基本的な問題として「結婚」「パワハラ」「当て馬」がある一方で、ドラマとしてお見せしたいのはどちらかといえばメイン・サブカップル含めた各自の恋愛シーンであるために、中盤やや問題がスルーされている印象もある。もちろん最初にすれ違いの元になるかと思われた「結婚」がゴールにあって、「パワハラ」に憔悴するところに「当て馬」が付け込んできたりするので、本筋の中には生きている。恋愛ドラマなのでそれで良いとはいえ、個人的にはいちゃつきが長いなと思っていた。まあ私の恋愛に対する解像度の著しい低さ*3に問題がありそうではあるが。Tharnは家族関係であると定義して世間にもそう見ていて欲しいと思っていて、Typeはどちらかといえば自分達や近い人だけわかっていてくれればいいと思ってるから、そういう価値観の違いをすり合わせていく物語なんだなという描写はとても良かったのではないかな。私にはTypeの行動の方がTharnより一貫性があるように思ったので基本的にTypeの肩を持つ感想になるし、結果Kanawut Traipipattanapongが可愛いなと思っていた。出家式のシーンが本当に良い。

前々回あたりに問題提起してしまったシリーズに比べて「それは加害なのでは……」というような違和感も少なく*4、基本的に全てが爛れた関係性であることが前提なことに慣れてしまえば大きなストレスはないかなとは思う。NC*5シーンや匂わせがかなり露骨に入ってくるが。個人的にはやはりLeoFiatの拗れた関係について考え込んでいる間に話が進んでいた。Fiatの地を這うというかマイナスに振れた自己肯定感が哀れで、Typeにしつこく迫ってる時すらも「Fiat可哀想」の気持ちで見てしまった。経験上自分が好いた人が全部自分から離れていく上に、経験上自分そのものを好いてくれる人が周囲に極端に少なかったFiat可哀想……。Typeの怒りは最もなのだが報復されている時すら「可哀想に…」の気持ちで見ているので、ちゃんとLeoが勇気を出して結ばれてくれて良かった。この報復されてるところを見てるLeoの表情がとても良かった。新シリーズ楽しみですね。

サブカップルという話で言えば、Fiatを口説いてる時のCirrusの心底興味ない感じの顔とか、そのあとPhugunと仲直りするシーンとかもうCirPhuのメンタルは最強なのかな?という気持ちで笑ってしまった。かわいいね。

衣装とかインテリアとかロケーションとかがオシャレ。中でも衣装本当に可愛いと思う。どのスタイリングも可愛いなと感じた。ロケーションが良いので、必然的に遠景のショットが多い印象。喧嘩してる時絶対机のお誕生日席に座って、机一つ分離れて口論になるのがわかりやすくていいなと思った。TharnとTypeの危機的な距離がそれなんだろう。

あとはなんかすごい富裕層の話なんだなと思って見ていた。なんかこの富裕感が結構とてつもないレベルの感じなので、登場人物の出身階層についてごちゃごちゃ考えてしまう。例えばリゾートみたいな離島出身のTypeや、機能不全の家族を持つことを示唆されほぼ富豪の幼馴染宅に養われているFiat。どう見ても家賃の高い集合住宅で同棲するカップルたち、実家の太いTharn、謎の方法でTypeの住所など仕入れてくる実家の太いLeo。Typeの父親が「白人(ファラン*6」とTharnのことを呼ぶことや、そういう混血を指す言葉が普通に描かれる状況というのはどういうことなのか、とか。

 

あとバイオ村の実況をずっと観てました!その話は書かないけど別に。

*1:狭いので仕方ないとも思う。

*2:胎教のように触れてきた自覚はあるが、仕組みについては全く理解できないままここまできてしまった。

*3:私も両親のために出家して還俗したらいいのでは?

*4:単純にそれはどうなのと思うシーンはあるが、悪いこととして描かれる、報復される展開であってかなりフィクション感が強い。Fiatしかり、上司しかり。それより、私はTharnがTypeを嫉妬させたくて友達に一芝居打たせたところが普通に怖…めんどくさいなと思った。Tharnは自分でそういうことをする割に、Typeの疑惑に対してかなりの剣幕なのも、ゲイのTharnが女性に気を持たれるのとは違って相手が男性だったとはいえTypeが可哀想。

*5:子どもが見れないシーンのこと。それに合わせて、なぜかこの作品急にドスの効いたBGMを使うから面白くなってしまう。

*6:タイにおけるヨーロッパにルーツを持つ人のことだそう。