サニーサイドアップフォーチュン

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ドラマ『Don’t Say No -心が近づくとき-』感想

祭りです。(驚くべき長さ、ネタバレ考慮なし)

今更どういう経緯があってこのドラマに一生懸命になっていたのか説明する方が恥ずかしいので、このまま何も説明せずに感想に移ります。なのでほぼ怪文書ですが、どうせ興味ある人しか読まないからねこんなエントリは……。

また、布教するためのエントリではないので、出演者とかなんかそういうのに興味あるとなったらもっと詳しく書いてる人のエントリを探してください*1。どこで観れるかすらもまとめないし、気に食わんところは気に食わんて書くし苦手なところは苦手と書くつもりだけど、基本的には主演二人の可愛さに判定が緩いと思う。私はDomJiw*2でありLeoFiatのファンです。

 

書き忘れてたので追記。このドラマちゃんとおもしろいです!

本当にびっくりするくらい長いので「さいごに」だけ読むと結論が書いてあります。

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Don’t Say No -心が近づくとき-

 

総集編スペシャルエピソード『レオとフィアットの(愛の)秘密』

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そもそも『Don’t Say No』=『DSNTheSeries』っていうのは、タイのBLドラマシリーズ『TharnType2 -7Years of Love-(以下TharnType2)』に出ていた当て馬サブカップルLeoとFiatを主人公に据えた話である。『レオとフィアットの(愛の)秘密』はそのTharnType2時代の二人の映像を再編集し、かつ本編ではカットされたシーンや組み込まれなかったNCシーン*3を含めた豪華仕様です。

DSNは原作小説こそなしで完全オリジナルドラマ扱いということのようなのだけど(多分)、TharnType原作者のMAME先生がっつり脚本に入ってる以上は普通に名前もクレジットされているし話も繋がっている。なのでTharnType2を見ておく方が良いのだが、なにせ13話+スペシャルエピソード*4があるのでめちゃくちゃに大変だ──というところから来る配慮なのか、新規さんのためなのかはわからないが、このエピソード見ておけば大体話はわかるしうまくまとまってたなと思った。ただし、そのほかの登場人物との関わりはほぼほぼカットされているため、シリーズそのもののダイジェストとしては機能しない。

TharnType2時代のFiatはかなり損な役回りで、出来上がってるTharnとTypeの仲を自分本意な理由で引っ掻き回してはそれに対してLeoがイライラしてるみたいに見えるのだが(実際にそうなのだが)、こうしてLeoとFiatだけに限定されると当人間でのコミュニケーション不全に問題があってこうなってますよというのが、二人だけに注目すればいい分見やすいかなと思う。

私はTharnType2に対して、サブカプが多くてエピソードがぶつ切りになっていて、必要なのかどうかわからないギャグシーンでテンポが悪化し全体としてとっ散らかってる印象を受けており、つまり総集編になることでこれまでよりはそれが気にならない。もともと、LeoとFiatは常に喧嘩一歩手前と甘やかしを繰り返し続けるキャラクターでそれほどギャグシーンらしいギャグシーンはない上に、世界が二人で完結してるためほかのキャラクターとの関わりらしいものもあまりないのでまとめやすそうだなとは思った。このドラマ一つ一つのシーンがちょっと長いように思うので、総集編になっても若干の冗長さは残っている印象だが。

ドラマの作りの話ばかりしているので内容の話に移るが、病院でTypeの退職を知ったFiatとLeoの言い合いは、やはり何度見てもそのやり取りに二人の悲劇が詰まっている。「一緒にいたいと思った人に好意を伝えると離れて行ってしまうと思ってるので、Leoにわざわざ友達と言うFiat」と「友達とFiatが言うから友達としてでないとそばにいられないと思ってるLeo」のお互いの言葉に傷つき合う姿が「早く誰か*5どうにかしてやってくれ」という気持ちになる。私は二人が可愛いと思ってるので……。

そんな可愛い二人のNCシーンもガッツリ追加されており、「どういう気持ちで見たらいいの?」思ったのだけどこれは後ほどまた出てきます。

とにかく、追加シーンや独白などで暴走してる印象ばかり強いすれ違う二人が考えてることがより鮮明になっているので、すごくややこしいカップルなのだなということがわかる良い総集編だと思う。 Fiatは常に自暴自棄だが、レオも往々にしてFiat至上主義を拗らせているため、あれだけ「Typeには恋人がいる」と主張していたのにも関わらず、Fiatに泣かれたらコロっと協力してしまうところなど恐ろしい。Fiatはメンタルに難があるので正常でないにしろ、Leoは「いけないことだ」や「やりたくない」と思っているのにTypeの住所を入手して渡してくるので、世界の判断基準がFiatに偏りすぎていて恐ろしい。

これだけLeoに怒られるようなことをしておいて、実際怒られるとLeoの隣が唯一の居場所であるFiatは萎れ、前述の通り萎れているFiatに対して甘すぎるLeoは見るからにトーンダウンするというのがTharnType2の二人のセオリーだが、それでも同じベッドで寝るというのが二人が共依存カップルというのを表しているように感じますね。付き合ってないのに同じベッドで寝る?

FiatがiPhoneで見てる写真が、二人のマネージャーさんがSNSにアップしてくれた写真なので、LeoFiatというかJaFirstなのがまた微笑ましい。

 

本編

1話ずつ書いて文章量をこれ以上にするのも流石に長すぎると思ったのだが、せっかくだしそれなりな量にしたいとは思うので、数話区切って書く。期間の名前は適当に今私が決めた。

なお本エントリにおける名前の表記は公式や英語字幕に準拠している。今更読み方も貼っておきます。

 

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「恋人って何したらいいの?」期(EP1,2)

総集編のトンチキバスケットボール告白のリバイバルから始まるし、雰囲気も明るい始まりで良い。二人が浮かれているのがわかる。

なにより以前気にしていたようなエピソード間のつなぎやテンポの悪さが圧倒的に改善している。ドラマとして完全に見やすくなった。

さて、まず最初の告白シーンだが、もともとFiatの不機嫌やLeoの圧などに理不尽に曝されてきたRick以下バスケ部員達が、二人を祝福し意外と手間がかかる告白に手を貸しているのが微笑ましい。何故かこれを動画サイトで拡散していて、タイBLあるある・肖像権の消失を感じるが、この動画がなければこのドラマにおける事件はほぼ何も起きないので仕方ない。

今までずっと友達だったから、恋人になって=気付かれることのない片想いではなくなって何をしたら良いかわからなくなっているのが可愛いところ。

またLeoの弟であるLeonが帰国してくるのだが、彼のキャラクター造形も本当に可愛い。これはLeonの役者であるSmartが撮影時19歳、Leo役Ja・Fiat役 Firstが23歳、Pobphan役Jamesが撮影時27歳*6という役としての学年差と年齢順が同じで、違和感ないのも一因なのかなと思った。

正直1話2話あたりはラブコメしてるLeoとFiatが可愛くて仕方なかった印象である。Leoが恋愛指南書で勉強したりしてるのも可愛い。NC関連で言うと自慰バレするのはバカだなと思ったし、EDという噂が流れるのもバカだなと思った。個人や当人間でのクローズドな話が外に漏れるのはやや苦手だったように思う。私がそういった話題に対して引け目を感じていてなるべく回避してきたものだから、たとえ創作であってもどの程度あけすけに表現するのが一般的に許容されるのかがわからない。しかしこの後のLeoとFiatの間で誤解が解ける会話がとても良い。もごもごと言葉を選びながら話すLeoと、一生懸命伝えようと前のめりになるFiatっていうのが可愛い。ところでタイでは性的な玩具というのは外国から輸入してくるものらしく、国内で生産したり販売したりはできないそうで、このドラマバカだな〜と思った。エロいことへの探究心がすごい。私はそういう感覚がないので、バカだな〜と思って見ていた。

元々コミュニケーション不全が深刻なカップルだったので、付き合いだして(DSNが始まって)しっかり会話しているのが感慨深い。FiatとPunが言い合いになっても、Fiatが「Leoが自分を愛している」という前提で話せるようになっているのが成長だと感じる。彼はずっと自暴自棄だったので……。基本的にこの後もLeoとFiatは(LeonとPobphanも)お互いの思っていることに対してちゃんと会話をしていくことで発生した事件に立ち向かうし、そのエピソード内で発生したストレスに関してはなるべく翌週へ持ち越すようなことはせず、そのエピソード内で解決*7に導くのがストレスなく見やすいなと思った。

 

リベンジポルノ期(EP3,4)

帰国したLeonが一人で暮らすThutanukul家と、Pawonrachanop家にそれぞれFiatがやさぐれてワンナイトしていた時代の写真が送り付けられる事件が発生する。EP3はFiatの家庭環境とメンタルの諸問題、EP4は断罪イベとLeonPobphanの進捗である。

正直、この家族色々あるにせよ、 Fiat父MethのこれまでのFiatとの向き合い方って育児放棄だと私は思ってる。実家に強制召喚されたFiatに対して「Fiat自身」やせめて「Fiatの家族としてのPawonrachanop家」を主体に怒るのではなく、怒りすらも外注に出して「LeoひいてはThutanukul家」に嫌悪されるようになるぞという怒り方なのが本当にひどいと思う。Fiatは父親に自分が愛されていないと思っていて、かつこれまでの自分の過去の行い*8をLeoに対する引け目に感じているので、怒りすら家族という構成の中に自分を入れてもらえないこと、さらにそれを一番嫌われなくない人の前で詰られることというダブルパンチで辛いはずである。継母Fayさんが良い人なのと、LeoがFiatのために外堀を埋め続けていることが救い。NatsuにFiatが打ち明けるシーンで、Natsuが言うセリフが全部良い。

NatsuがFiatに寄り添うこと、友達が皆Fiatを心配していることというのが、「嫌われるために生まれてきた」と泣くFiatに対してそうではないということをこのドラマ自体がずっと伝えている構図のようで良い。

AekとThoの双子の家の職業がなんなのかというところなのだけど、警察なのかなと思ってたらなんか不穏な社員(?)を従えているしで謎が深まる。別に解説されることもないのでまさかマフィアなのかとも思うが、その場合Leoは大使という公人の息子のためそのような関係はまずいのではないか?という気もする。双子の家のビジネスが今後便利に使われていくことになり、彼らのおかげでどうにかなることもあるためあまり深く考えるのはやめよう……。

写真送りつけ事件がP'Chikaのヒモによる犯行で、それを詰めるLeoがクレイジーで良いのだが、一方で「このヒモ男とは未遂だったのにその写真はどこから?」や「DVまがいのことされてたのにChikaさんに任せて大丈夫なのか?」といった疑問が残る。この辺りから私は「このドラマはエモさで乗り切るタイプの作品なのだな」とわかってきました。

LeonとPobphanも本当可愛いし、サブカプのエピソードの挿入の仕方もLeoとFiatのストーリーを分断しないので見やすかった。今回乱立してない分、LeonとPobphanの話も掘り下げがあって良い。Leonがストーカーの如く現れても19歳の赤ちゃん(19歳は赤ちゃんではない)が演じていると思うと全部可愛く見える。

ところでNCシーンが長い!そして濃い!

まずこういうところで話題になり、そこから視聴者を増やし……という流れなのは大いに理解できるが、この後もどんどん濃ゆいことになっていくので「インティマシーコーディネーター呼んでくれ」という気持ちもあったよ私は。こんだけドラマ見てきて一向にNCとの付き合い方がわからなくてやばいので、どういう気持ちで観たら正解なのか誰か教えて欲しいくらいだよ。本人たちが信頼しあって演じているとインタビューなどで答えていたのは良かった。信頼が見えるのが一番良いじゃないですか。

この後もい色々NCあるけど、このエントリでは特に書くことないので結構スルーしてます。

 

間男期(EP5,6,7)

PobphanがLeoのこと好きなのではないか、とヤキモキするFiatとLeonが可愛いのだが、実際には支援を求めたいPobphanとPobphanの事情を勝手に口外したくないLeoだったという決着のつけかたが上手い。勝手に事情を説明したり、勝手に噂が広まったりするのではなく、プライベートな事に対して他者がオープンにしないという描写が入るのは原作先生の進化。そもそもこのPobphanのキャラクター造形が上手く、Fiatと真反対のピュアで善人で真面目という性格づけで「Fiatのライバルキャラ」としてこれ以上ない設定でありながら、Fiatと同じではないものの家族の不全感をどこか抱えて、作中常に誰かを慮り守り分け与えていく立場のThutanukul家の人間たちから自然に庇護されるという意味で、Fiatと同じポジションに収まることができる儚さがある。

Thutanukul家は上流階級として常に持てるものであり、施す側なのであるが、父母兄弟がそれを自然と行っているところがさっぱりとして気持ちよく、ノブレスオブリージュ*9だなと勝手に納得している。

Leo母Nadiaの性格が本当ストレスなくて、Fiatに対して自分の子どもと変わらぬ愛を注ぎ、Pobphanの外堀を埋めてLeonをアシストし、ほぼ家族としている豪快なところが面白い。BLのお母さんってその深い愛情で息子を包み背中を押すみたいなキャラクター造形多い中で(偏見)、爽やかに発破をかけてかっこよく物事を決断していくところが良かった。このお母さんのようなさっぱりした人が、話し相手が欲しいと息子を近くに置く事を望むかなと思ったけど、LeoはFiatと引き離さなかったことを鑑みるに、やはりLeonはLeoが当初言うように人見知りだったから大きな世界を見せたかったのかな、と思った。

LeonとPobphanの食事のシーンも良い。Leonのことを「人見知りだ」とLeoが言っていたのは全然どっか行ってしまっているなと思うんだけど、それはそれとして彼がお母さんと外に出たからこそ、彼がお母さんについて深く理解し話すことができたのだと思うし、彼が外国で様々な人と触れ合う機会があったからこそ、上手い言葉の運びや距離の詰め方、話の聞き方があるのだろうと思う。彼がそうやって話が上手くかつ話を聞けるキャラクターであったからこそ上手くストーリーの中で聞き役として機能し、展開していけていると感じた。

このKingの全く魅力的に見せようとしないキャラクター設定だが、露骨で笑ってしまった。Kingまわりの問題として、先輩が「クスリ」に手を出していたことを脅されたわけだが、この「クスリ」の範囲が私はわかっていないのなけどみんな理解しているのかな。これが法律で禁止されている薬物の範囲なのか、それともドーピングとして数えられる範囲なのかがわからない。Kingのこの利用できるものはする姿勢で、Fiatの過去の中にはこうして「彼が人肌恋しくて」誘った夜以外の関係もあるというのがキツい。あくまでLeoのためで、そのLeoには勘違いされている。ちゃんと会話していればこんなことにはならなかったのに……。

だが今作では会話でそれを乗り越えるのが良い。Leoと話すこと、Rickと話す事でFiatがこれまでの自分から脱却し、大人になろうとするのが健気だ。

 

Pawonrachanop家期(EP8,9,10)

実母襲来とFiatが実家であるPawonrachanop家の面々との関係性を改善させるあたりの話。

Fiat実母Graceが動画を見ていた時、腕に識別用のリストバンド付いているなと思ったので、「もしかして末期の病気などでホスピスなどにいて会えないのか?」と思っていたのだが、普通に家に凸して来た。人が死ぬっていうのは大変な事なので、誰も作中で亡くならなくて安心した。

Methのあり方は育児放棄だと思っていたが、GraceがFiatにしていたことは完全に虐待である。つまりFiatがそういう環境をサバイブして来たということになり、本当に必要だったのは継母でもなく逃避でもなくカウンセリングと適切な制度による介入だったと思う。MethもまたGraceによる被害者ではあって、彼にもまた適切な治療があって然るべきだったのだろう。だがそれは子どもに対する責任を果たさないことの、要因にはなっても理由にしてはいけないのだ。子どもという他者の人生を背負うというのはそういう事だと私は思う。

この辺りの話ではこういう、行政というか適切な制度の不在が若干気になる。もちろんドラマだし、日本でこのような事態が発生したときにどのような対処になるのかもわかっちゃいないのに、タイでどのような対応になるのかなど私には予測もつかないのだけど。もしかしたら描かれてないだけで何かあったのかもしれないし。*10

LeoのGraceへの対処についてだが、AekとThoに家を任せて大学に行くのだが、最初は双子の実家の人員を当てにしていたのを断られて結果Thoにだけ見張りを頼むことになる。Thoは家に施錠する事を忘れ、Graceの侵入を許すことになるわけだが、GraceはFiatへの接近禁止命令が出るレベルだ。この時点でその事実をLeoが知らないし、大学生に対して酷かもしれないが、然るべき規模で然るべき人員を配置できたら最善だったろうなと思う。まあ作劇としてそんなのはストーリーが先に進まないし、接近禁止命令について知っているから思うことである。そもそも、そのレベルの対応をされているGraceが気軽に収容されている恐らくは精神病棟のようなところから、単独で外に出て息子に会いに来るという施設の警備の杜撰さの方が問題なんじゃないかとなる。

Leo父Kornだが、この役者さんタイでは有名な方らしく(私も二度目ましてだ)BehindでJaが緊張していた。彼が帰国してFiatを保護し、その際に一切の迷いなく「俺の子」とFiatを呼ぶのが良かった。紛れもなくThutanukul家公認である。ていうかKornもサプライズ帰国なので弟、母、父とサプライズ帰国する人しかいなくて笑う。呑気である。

Fiatが「自分が嫌われているのではなく、自分から嫌っていた」「母に教えられたようにまた周りを傷つけるのではないか」ということに怯えてしまうことに対して、そばにいる事や友人たちに愛されている事を示す事で「大丈夫」を伝えるLeoめちゃくちゃいいので感想は省きます(?)ぜひドラマで確認してほしいな。9話の後半、本当に泣いたから。

あと猫がとうとう亡くなってしまうが、この際のLeonが、Pobphanにとって猫がどういう存在だったかを理解し寄り添うのが素晴らしい。Leonは本当素晴らしいキャラクターだよ。同じベッドの上でゴロゴロして可愛らしいことを言われながらも、お許しが出るまで待ち続ける紳士なところも、Fiatに対して生意気言うのもとても良いキャラクターだと思う。

ずっと書き損ねていたが、AndaとNatsuが完全に付き合ってるの良くないですか?タイは女性の同性愛に厳しいらしく、これだけYがありながらそちらはまだまだだそう。これから大きめの百合ドラマも予定されているけども。そもそも相関図が出た際にAndaとNatsuの線には何も名前がついていなかったし、二人はよく一緒に行動するし腕も組む。9話に至ってはラブラブとNamに言われているし、完全に付き合ってるよこれは。明言されないけど。

 

クライマックス(EP11,12,13)

Fiat、大人になるっていうのは自分の中に全て溜め込んで一人で耐える事じゃないよ……。

PunとLeoのキスを目撃し一人で笑顔で耐えるFiatの、「Leoはずっと耐えてきた」というのが辛い。この一人で耐えるFiatと負い目があるから踏み込んでいけないLeoの動かし方が良かった。Fiatが自身の過去の行動について、Leoにとってどうだったのかということにここまで成長してきたFiatは自覚的で、さらに自罰的である。一方でLeoは良くも悪くもずっとFiatが一番だったので、こういうFiatを盾に使われるやりようには対処の仕方がなく、相手の手のひらの上で転がされてしまう。

LeoにKingとのことを責められてからの流れは完全にTharnType2の展開を踏まえている。離れたところで泣きじゃくる二人の、Leoが家の中で、Fiatがプールサイドでというのも同じだし。こういうところで意図的に「過去の行動が今の自分を苦しめる」という表現を使ってくるの上手いなと思った。TharnがTypeの話を聞く前に自分のことを棚に上げて責め、Typeに出ていかれて憔悴して家族に慰められていたのは今回のLeoと似ていると思うが、これはリブートなのか展開の引き出しとしてこれが好きだからなのかは計りかねるな。

ただ、個人的にはだが。実母の襲来によってアイデンティティが揺らいでもなお隣にいた恋人に対して、キスひとつで割り込むこともできないくらいショックを受けるのか、という風にも思う。 Pobphanの時のように割り込んでいけないものなのかな。相手が女の子だからなのかなぁ、身体的な機能としての負い目という演出なのかもしれない。あとはLeoとFiatは最初、当て馬サブカップルとして始まったことを踏まえ、それで色々な意見に晒されていたことを踏まえ、ガチガチの悪役を用意してそこに対してヘイトを誘導していくようなストーリーはそんなに気持ちの良いものではないと思った。やられて嫌だったことを、また繰り返すことに抵抗がある。展開上仕方ないのかもしれないけど……。あとはNamが映像を流出させるのもどうかなと思った。たしかにここまでされてまだ食らい付いてくることは無いだろうけど、例え今回はただのキスシーンだったとしても、それはFiatがされそうになった時NatsuやLeoが慰めたことだ。服を着ている、着ていないではなく、相手への報復にして良いことでは無いではないか。

LeoFiatのNCがこれまで脱いでセクシーだったのが着衣でセクシーの境地に達していて正直笑ってしまった。

LeonとPobphanが別れなくちゃいけなかったのは、Leonに対してPobphanが満足に恋人としての役目を果たせない事を引け目に感じるからだ。恋人としてPobphanが満足できるPobphanでいられないからこそ、身を引かなくちゃ自分が保てない。Leonは多分待てる。置いていかれる側というのは自分がすべきことは信じることだけだから待てるし、LeonはLeoの事を尊敬していて、Leoが人生のほとんどをかけてFiatのために生きている事を知っているから、自分もまた同じでられると思うだろう。でもPobphanは違う。自分の選択によって物理的な距離が生まれ、待たせ続ける状況は簡単に耐えられるものじゃないのだ。私はそれで一度推しグルから可愛い可愛い末っ子*11を失っているので、その姿がオーバーラップしてしまってPobphanの事を責められない(責めるつもりもない)。外野が「別れる」という選択肢がどれほど自分たちを大切にしないことかと言っても、外野から見てそれが Pobphanのエゴだとしても、 Pobphanはまず自己を優先する必要がある。それが「別れ」という選択で一時的にLeonを解放することで気が楽になるだけのものだったとしてもだ。

結局、なにをLeonが言ってもPobphanは行くし、Leonがついてくる選択肢もPobphanは許さないのだから、Leonにはもう残って待つという選択肢しかない。勇気を出すとか、出さないとかではないし、伝えるとか、伝えないとかではないのだ。Leoが「待つ」ということを伝えるのは、待つしかない弟へ、自分が共感していることや、同じ感情を分かち合えるということを伝えるためだったのだろうと思う。

スペエピで帰国してこんな話じゃなかったらすみません。

試合に勝って祝福されながらのキスも、体育館での告白のやり直しもめちゃくちゃロマンチックだし、ハッピーエンド力が強かった。Leoの独占欲が異常なまでに強いことと、これまで誰にも大切にされて来なかったと思ってるFiatの相性が良すぎで、割れ鍋に綴じ蓋(失礼)とはまさにこの二人だと思う。体育館での告白のやり直し、とてもしっかりと自分たちの気持ちについて会話するので安心する。これまでの自分を否定して「良い人になろう」とずっとして来たFiatが、自分の至らないところや過去をひっくるめて「自分だから」と言えるようになっていることが大きな成長だし、Leoの言うように二人が真の意味で信頼し合う恋人になるまでのストーリーだったのだと思った。

 

最終回後スペシャルエピソード

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多幸感で涙が出て大変だった。Leoの将来ありきで全てが決まっており、そのLeoと一緒にいるためにFiatが環境を合わせに行っている。それが2人が共にあり、揉めないために必要なことだったんだろうし、それで周りも納得させてるあたりに2人でいることの執念を感じる。

Leoが3年経ってもなおFiatにぞっこんで(同じくFiatもだが)それを全く友人たちにも隠しもしない。古典的なお誘いにもしっかり乗って来るし、そういうありがちな手段が相手に有効だってわかっていることも、もうLeoFiatの全てが愛おしすぎて大変だった。私も芸能人みたいですねってFiatに声かけてLeoに牽制されたい人生だった。これ見よがしに甘えるFiatを抱えたLeoに「お帰りください」の顔されたかった。LeoとFiatの幸せな毎日ずっと見てたい……。

FiatがLeonに対して素直な言葉で、されて嬉しかったように労るFiatも、Fiatのことを心配するLeonも本当に可愛い。

PobphanとLeonは何か進展あるのかと思ったら、3年経っても二人は思い合ってるけど些細な事故ですれ違い続けてるという切ない展開だった。続編へのフックとしては最高の出来だと思うのでMeMindYさんお願いします。これはLeonPobphanのファンは怒っても仕方ないと思うのだけど、でも二人の大人で自制的なところがよく表現されていたかなとは思う。

細かいところで言うと、LeoとFiatが帰ってくる飛行機の座席のグレードと、Pobphanの帰りの飛行機の座席のグレードが全然違うのが好きだった。

 

さいごに

贔屓目だったら申し訳ないのだが、ストレスを次週に持ち越さずしかしいろいろな問題があり、これまで撒いてきた不安のタネを全て回収し、かつハッピーなだけでない終わり方をしていくためスペエピへの期待が高まるあたりなど、うまいなと思う。いろいろ展開させてテンポ良く話が進むのはとても私好みだった。私は中弛みと冗長さが一番苦手*12だ。

コロナ禍ということでロケ地もかなり限られているのがわかりいろいろ苦慮した部分はあるのだと思うが、学生のストーリーで元から行動範囲も狭くそれほど気にならない。さらに上記のように消化しなければならない問題が多いため、あまりそれを気にしている余裕もなかった。

演者の話をしてなさすぎるが、すごく良かったと思う。渾身の泣きの芝居が強烈で印象に残る。うまく書けそうならこれはまた追記するかもしれない。

というわけで、私はストーリーをかなり楽しんで見ていたと思う。誰彼構わずお勧めするのには勇気がいる作品だけど。

カップル営業にどう向き合っていけば良いかわからない」と思う自分と、「二人で成し遂げたことによる信頼は見たい」自分がいて、今もうよくわからなくなっている。が、JaFirst絶対好きじゃんと思ってから二人の出演作を見て、三ヶ月ドラマを追ってきて、楽しかったのは事実だ。止まらない供給、定期的なツーショット、マネージャーからのオフショット……JaとFirstはLeoとFiatそのものではないし、役がそうだったからどうということはないが、JaFirstが前作のオーディションで出会ってここまで一緒に仕事をしてきたという事実も、LeoFiatのためのDSNというドラマも、それぞれちゃんと愛おしい。未だに役になりきって何かしてとか、彼氏であるかのような言葉を投げかけることとかは慣れないままだが、そうされてスムーズに相方の名前を出したり優先する仕草を取れるところは尊敬する。求められることへの瞬発力がある。JaのこともFirstのこともLeoのこともFiatのことも私は大好きなので、二人が役のことを大切に思いお互いのことを信頼しているところを見せてもらえることに今は感謝したい。

*1:もしくはTwitterで訊いてください。

*2:JaFirstのファンネーム。名乗るの恥ずかしい。

*3:子どもにお見せできないキスや露出の多いシーンのこと。

*4:スペシャルエピソードのシーンは追加されてないが、スペシャルエピソードのLeoFiatはスポンサー忖度シーンで僅かに出るだけである。また有識者の方に教えていただいたが、Netflix配信版には総集編に追加されていないシーンがある様子。加入していないので未確認。

*5:この後Typeによってどうにかなると知ってるとはいえ。

*6:だったと思う。間違えてたらごめんなさい。

*7:そうは言っても次週へのフックはあるので誤解なさらぬよう。

*8:数々のワンナイトラブなど。

*9:グランギニョルのはじめての繭期配信とは何の関係もないからね。

*10:そもそもそんなことを言い出したら話が進まない。

*11:ファルがthe boyzを脱退したのは度重なる足の不調によって何度も活動を断念する状況にあったからである。

*12:足りなきゃ足りないで「尺がない」とよく言う。