ナイトメア・アリー
『キャロル』が好きなので観なくちゃなと思っていた。出演者大かぶりです。
スタンの人生の隆盛と転落を描く物語なので、ストーリーが完全な二等辺三角形の形をしていてよかった。リリス・リッター博士が出てきてからが本番なのだけど、その気配がない前半はちょっと長く感じるくらい博士が最高。金髪でセクシーな美女でありながら、スタンを籠絡するのはあくまでも心理学者としての技術であったり、スタンのその場凌ぎの策略一辺倒さを全て読み切った上で立ち回っている格好良さがある。主人公スタンとリッター博士の対決ものとして好きだった。
スタンはわかりやすくクズ男というか、成功してからのモリーへの当たりの強さもだし、困った時はすぐ暴力に頼る。吹き替えで観ていたので元の英文を確認していないのであるが、前半部分でモリーが「同意の上では最後まで(性行為、あるいは恋愛)をしたことがない」と言うのだけど、それにも「大丈夫」だったか「心配ない」だったか、いずれにせよトンチンカンな返答をする。そういうところを見ていると、獣人に対して見せる優しさのようなものも結局は自分が優位に立っているという安心感のためなのかなという気もする。
前半スタンが学んだことが、後半に再びスタン自身に降りかかることとして綺麗に収束していくのがとても気持ちよかった。
セット衣装映像、どれをとっても綺麗です。
マーメイド・イン・パリ
とても可愛い映画だけどちょっと世知辛い、もしくは悲しいストーリーだった。
ガスパールとルラの恋はおとぎ話のように綺麗でキラキラしているけど、ミレナの夫のことや仇を逃すような男を救わないといけないというところなどは非常に悲しく、また職務やトラウマに向き合うミレナが愛おしいなと思った。
ガスパールがルラの残した真珠で、母や祖母の遺したフラワーバーガーと一緒に、ルラのサプライザーとして海に出たエンディングは希望がある終わりで良かったと思う。
何もかもを語る映画でないし、そういうところがもしかしたらフランス映画っぽいのかなとは思うけど、詳しくないのでそれ以上は言及なしということで。
猫は最高だった。
ライトハウス
ウィレムデフォーもロバートパティンソンもすごい作品であることは確かなのだけど、私はあんまり好きではなかった。
私がこの作品を観る上でさほど神話に詳しくないであるとか、どこが何のメタファーでというような知識が必要である。それがないから楽しめないということはないと思うのだけど、なにぶん私が怒り散らしている人を見続けたり理不尽さをずっと耐えて鑑賞しないといけないことにやや疲れてしまってあまり乗り切れなかった。私はオカルトやジャンプスケアは大丈夫だけど、ひたすら人間関係がギスギスしているものを見続けるのが辛い。
死霊館 悪魔のせいなら、無罪。
もはやエドとロレインのウォーレン夫妻が好きだから観てると言っても過言ではない。
これまでのシリーズとは違って幽霊屋敷ものではなく、犯罪についての話のため人が割と気軽に死ぬ。また、司法が絡んできている割にしっかり脚色されているし、犯罪である以上犯人がいるので実録ホラー映画というよりもサスペンス映画感が強く、今まで以上に「真実」を求めるウォーレン夫妻の無事を祈るストーリーになっていると思う。
トリックなんてないに等しく、狙われる理由もぽやぽやしているとは言え、夫妻の愛やアーニーとデビーの愛、それが黒魔術に打ち勝つ様を応援するために観る映画なので問題ないと言えばない。
ラストの白い東屋など、ちょっと泣けた。
N号棟
世間じゃ和製ミッドサマー等と呼ばれているこの映画、ロケ地の団地が「HiGH&LOW THE WORST」と同じであるが故に、遠景で映るたびに「絶望団地じゃん……」と怖さが減少していく不思議な体験だった。ちょっと綺麗な絶望団地の遠景と、これもしかして間取りが判明したということでは、という楽しみ方が出来ます。
音声が本当に悪いというか、私の耳が悪いのかもしれないが、普通の会話が全く聞き取れない。そのため怖さが減少していく。
結果としてほぼ怖くない、みたいな内容や演出と全く関係ないところで障害があり困ってしまった。
考察系、というが何を考察させたいのか非常に微妙で、団地の住人の規範という枠組みなのか、主人公周りの条件と感情なのか、私が全然乗れてないからかあんまりな感じだった。というか、主人公が抱える問題はわかるがそれを死恐怖症と母の延命措置に分割するのもそんなに上手くないと思ったし(母の延命措置についてだけで十分だと思う)この主人公の見せ方があんまり好きではない。めちゃくちゃクズなところを先に見せてからお母さんのことで悩んでますと言われても、クズな印象の方が強すぎてずっとクズだなあくらいな感じだった。
団地を経てからのお母さんとの対面は良かったです。あと画面の色合いというか、全体的な雰囲気は良かったと思う。