サニーサイドアップフォーチュン

映画、特撮、演劇、ダンスボーカルグループ

感想『犬鳴村』『OLD』『オールユーニードイズキル』『ダンケルク』『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

犬鳴村

ホラー映画というかオカルトダークファンタジーと言われる方が納得出来る映画で、最初からそっち狙って作った方が絶対良かったけど、ストーリーラインがそもそもみたいなところもあり微妙な映画だった。

父親の「誰に似たのか」みたいな口ぶりで家系に連なる問題を扱ってるんだなということがすぐにわかるが、早くもそこで若干興ざめするし、父親はあれだけ母親を蔑んでおきながらあんなに小さい三男が居て、母親の血筋を蔑むタイミングがあまりに遅くないかと思う。蔑んでおきながら妊娠するような行為に及んでいるとしてもキモい。そしてこの血筋が息子は父親含めてドラ息子、娘はみんな霊媒体質になるのがなんか娘に夢見すぎじゃないかみたいな気持ちになる。先祖の霊と普通に会話して普通に情報を貰って…と交流していたけど、いっそこのひいおじいちゃんの霊と主人公のバディものにして犬鳴村の都市伝説から離れて夜中の30分ドラマなどにした方が面白かったのではないかと思った。家系にまつわるエモと土地にまつわるオカルト、ホラーであってもしっかりストーリーを作り込んで混ぜたいのはわかるが、とにかく全部説明したくて仕方ない作りで、ハリーポッターじゃないんだから犬鳴村への行き方まで事細かに決まってる必要はないと思う。作り込もうとしてどんどん怖く無くなっている。

犬鳴村の住人たちはみんなゾンビみたいな質感で作られていて肉感があり、外国の映画みたいに対抗しうる手段がある感じがあって、最後の方のシーンでは三兄姉弟のオカルト研究所みたいな話もいいじゃんと思いました。

 

OLD

閉塞感がすごい。

人間関係にスポットを当てた映画ではあるものの、リーダーシップを取る人もいるし夫婦の関係も徐々に改善して行くしでそんなに人間関係に疲れてしまうことなく見れた。

唯一カルシウム不足で骨粗しょう症になっているクリスタルだけホラーになっていること以外は、明確にグロテスクにな映像になることもない。ちゃんとすべてが説明できるつくりになっているのもサスペンスとして面白かった。黒幕に対してもしっかり報復できたのも、観客がすっきりできて良い。骨粗しょう症で手足バキバキになってるはずなのに投石のコントロールが恐ろしく良いところで笑えた。

自分の体感と関係なくどんどん老いていくというのは結構なストレスで、それは老いが普遍であるがゆえに観客全員が想像してしまうからだと思う。受け入れる間もなく勝手に老いていく映像はちょっと落ち込んだ。

 

オールユーニードイズキル

すごくかっこ悪いトム・クルーズが何度も死に戻ることで、よくほかの映画で見る格好いいトムになっていく映画。だんだん戦闘や敵に慣れてきて、トムが機械的に戦うようになっていくのが切ないけど格好いい。何回も失敗して死ぬなんて気が狂いそうだが、見ているこっちには繰り返しがすごくコメディっぽく見えるようにも撮られてたりして、深刻にならずに観られるエンターテイメントという感じで良い。

ヒロイン・リタも格好良くて良いのだけど、最後の戦いでキスしないでくれと思ったらやっぱりしてた。ケイジには積み重ねた分の記憶があるからキスしたくなるかもしれないけど、リタはそうじゃないはずなので、あそこでキスしたくなるのはケイジとケイジの今までを撮ってるスタッフだけだろ。

敵のエイリアンのキショい造形は好きだが、パワードスーツがなんかダサい気がして、それはたぶん自分が日本のSFアニメ慣れしてるからなんだけど、もっと配線隠してツルっとした装甲のほうが良くないですか?

 

パルプフィクション

filmarks.com

すさまじくオタク臭い映画だった。セリフ回しであるとか、キャラクターとかとにかくオタクが作りましたという感じで、それを悪びれもせずにやってる感じがある。キャラクターにまつわるモチーフ(ワード)が繰り返し出てきたりとか、時系列を整理するとかそういう面白さもあるし、単純に「金時計」のパートはシュールで面白かった。あと「どうしても日本を醸し出すぜ」というやる気を感じるのが面白い。趣味に対して素直。

ミアもファビアンもなんだかちょっとオタクが考えたヒロインという感じで描き方が好きになれなかった。

 

ダンケルク

下手なホラーよりずっと怖い。

浜辺での一週間、観光船の一日、戦闘機の一時間が最終的に同じところに収束していくところの緊迫感が息苦しい。また洋上での話なので迫り来る海水が非常に恐ろしく、とにかく溺死しそうで怖い。戦争の話なので人は結構な量死んでいくのだけど、みんな血がドロドロになるわけでもなく綺麗に死んでいくためグロテスクでどうしようもない無力感・諦観というよりは、サスペンスとしての圧迫・緊張で追い詰められていく印象だった。

戦争なんてするもんじゃない。

 

シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア

とてもおバカな映画で気楽である。ほんとに単純にヴァンパイアのシェアハウスの話でそれ以上でも以下でもないんだけど、ホラーの定番を茶化しながら進行しつつ、キャラクターの可愛さを楽しみつつ、意外と出てくる血液に注意と言った感じ。

ホモソであることをネタにしつつ、糾弾し、またそこに戻ってくる感じがちょっと不思議だった。

 

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

序盤が長く感じてどうしようかと思ったが、リックが悪役として撮影に赴き、クリフとブルース・リーの一件が片付いてから面白かった。火炎放射器の活躍などは声出して笑った。トレーラーの中で自分の芝居にめちゃくちゃに怒るリックが良い。

とりあえず、タランティーノが映画オタクとして極まった結果、ハリウッド相手に夢小説を書いたということがよくわかった。自己肯定感が低く、本気を出せば非常に良い俳優なのにどうにも燻ってしまうリックと、それを隣で文句ひとつ言わずに支え、常に頼りになるクリフのコンビはとても魅力的である一方、とても理想が反映されている主人公だ。そういうタランティーノの理想みたいな二人の人生が、当時の映画ファンやシャロンを大好きなタランティーノ(もしくは改めて事件を知ったような人間)を大いに悲しませたであろうシャロン・テート事件を阻止(?)するのだから夢小説と言わず何と言う。

リックとクリフの関係がとても良く、リックはクリフに頼りっきりで彼に仕事を斡旋しようともするけど割りかし甘えている。しかもそれに愛想をつかされるとは特に思ってない。クリフはそれを受け入れていて、かつリックに不満を持つこともない。リックの妻を侵入者にバラしても、プールにいるリックのことは内緒にしちゃう。そういう湿度のないカラッとしたブロマンスが、東アジアの湿っぽい巨大感情に慣れた私には新鮮で楽しかった。

もちろん、当時のハリウッドの空気や衣装もとても楽しい。