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映画『王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン』『仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐』感想

王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン

メッセージがストレートな映画で良かった。ギラくんが世界の平和のために手に入れた玉座を手放すことを選択肢のひとつとしているのも彼らしくて良かったし、デボニカの犠牲について良しとしないところも好きだった。

またライニオールの言う幸福「家族を持ち未来へ繋ぐこと」に対して、ギラくんが「昔の人間がそういう幸福のために誰かを犠牲にする社会にしたんだ」とはっきり地獄と述べたのがとても新しいと思った。

マクロな幸福のために個人を犠牲にすることに対して異を唱える映画という印象。旧態依然とした多くの、それこそライニオールが想像しうる幸福の形を、ギラくんが否定し、他のみんなが各々の地獄を否定して自分の生き方を決める。ヤンマが技術で切り開こうとすること、リタが責任に苦しんでいることとそれに寄り添うモルフォーニャ、きっちりケジメを付けにくるヒメノともう覚悟が決まっているカグラギ、それぞれが直面する困難をそれぞれの方法で乗り越えるのだ、というところが格好良かった。

まあ30分なので、匂わせに留まる要素も多いし否定したもののカウンターがちょっと期待値からずらされている気もしないでもないが、それはそれとしてこういう結論を持ち出せると思っていなかったのですごいと思った。

 

仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐

本編が常に暗い作品であるから、映画の明るさであるとか仲の良さに大変嬉しい気持ち。とにかく4人とツムリちゃんが仲良くしているところが見たいので。

こちらも大変にまっすぐな映画で、これまでライダーがメタな視点でヒーローについて論じたりしてきたものを、ゲームのオーディエンスとして観客を巻き込むことで自分ごとにしたのがギーツっぽくて好き。私たちはずっと番組のオーディエンスだったけど、それをストーリーにとうとう落とし込まれて、そんなインターネットなことをしないでもという気持ちより番組に参加できて嬉しい気持ちのほうが大きい。

こちらは大きな幸福、世界の平和のためにヒーローがどうしているのか、何が一番大切なのかという話だったと思う。力だけでも、知恵だけでも、運だけでもヒーローには足りなくて、心のありようと同じ目的のために支え合う仲間の存在が幸福な世界をもたらすというのが本当に、眩しいくらいまっすぐだった。

尺がなくて駆け足だし、メラはまだしもメロはメラの聞き役というくらいではあるし。基本的に英寿くんに期待しすぎなきらいはあるのだけど。英寿くんが一人で孤独な神様になるのではなく、同じことを望む仲間と一緒に神様をやっているのだというのは、基本的に孤独な仮面ライダーというヒーローで救われる展開だなと思う。動けなくなった弱い英寿くんを守ろう、英寿くんのヒーローとしての心を守ろうと身を挺する景和くんと道長くんが感動だった。本編で英寿くんを信じるかどうかで色々葛藤のあった二人がだからこそ、信じるということの意味を感じる。

「ギーツ」が肯定する応援の形って、誰かの心のありように対して共感し、憧れ、実践を促すヒーロー番組としての形そのもので、健康的だなあと思います。

あと撮り方が結構好きで、みんなの顔、表情がしっかり映っててよかった。最後の砂浜のシーンの英寿くん、気を許している様もさることながらほんとに仲良さそうで泣きました私は。