サニーサイドアップフォーチュン

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舞台『地獄楽』感想

地獄楽

演出が懐かしい質感の2.5次元である。ブルーシアターがあり、渋谷にはまだAiiAがあったあのころ、私たちはこういう2.5次元舞台をたくさん観ていたと思う。感情の揺れすなわちそれが感動みたいな演出のつけ方、少年漫画原作らしくよく叫び、よく動く。布や衝立、小道具の多さ。客席通路を通り抜ける演者たち。人数を最低限にして完全に客と舞台を区切っていた頃についぞ観なくなってしまったものだと思うので、とにかくそれがあまりに懐かしい。

とにかく全キャストよく動くし、比較的均等に見せ場があるのが良い。男女問わずみな武芸に秀でているので常に皆互角に戦い、また罪人たちがキャストの半分ということで倫理観が終わっている関係上、男女がどうこうという話も出てくる割に、佐切の自問以外あまり影響してこない。画眉丸や桐馬の執着に関しても戦闘の中で一緒に扱われるので、しっかり描くとしたらいくらでも描ける内面的な問題よりも、アクションやパフォーマンスに振り切った構成にしていたのが楽しいエンターテイメント作品として良かったと思う。この後キャラクターの仙薬を目指す理由が揺らぎ、変化し、そしてより強固なものになって行くのだと思うので、舞台化したのはまだまだ序盤だろうし続きがあるなら楽しみにしたい。

ストーリーはこの2時間で最後まで行かないのはわかっていたけども、役者付きのキャラクター以外の説明がないので、なんかたぶん一緒に来たっぽい死刑囚が化けてるっぽいみたいなことも起きているが、全く原作を知らない身にもちゃんと設定を理解できるようにまとめられていたので良しとする。あんまり中心キャラでない登場人物については、軽やかに取捨選択した結果なんだろうな。

それはそれとして、割と原作の作りに疑問がある。タオという属性が出てくるのは少年漫画であればわかるものの、扱い方があまりしっくり来ていない。尺の問題もあるがとにかく唐突に出てくる概念に見える。いくら登場人物全員が武芸者とはいえ、今後のバトルの鍵になる概念をそんな一朝一夕で身につけてしまうのはあんまり乗ってこない。

あとなんか、外来語を使うのか使わないのか、指摘するのかしないのか統一した方が良いと思った。