サニーサイドアップフォーチュン

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感想『八百長デスマッチ』『いまさらキスシーン』

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八百長デスマッチ

たいへんに馬鹿馬鹿しく、面白かった。全く同じ内容を繰り返している小学生二人の、しっかり筋書きの決まった仲の良いことこの上ないやり取りであり、また非常に演劇的で演劇でしか成り立つことのない仕組みで物語が進んでいくというこの上なく八百長な作品だと思った。物語上の八百長と、仕組みを共有できる演劇というメタ的な意味での八百長

二人のみが分かち合い、二人のみだからこそとてつもなく楽しい状況を維持し続けるために、誰か第三者に選び取られる仕組みに勝手に終止符をうつその勝手さこそが当人たちにしか共有されていない「楽しさ」だと思う。だってはた迷惑だから。害されない、出し抜かれない安心感のあるデスマッチを全力で楽しむ子どもを演じる大人というだけですでに絵面が面白いのに、繰り返される特徴的なセリフでまた別の面白さがある。

子どもの未熟で少ない選択肢だからこそ成り立つストーリーだとも思う。性的な欲求や承認を求める年齢になってしまうと、自分の優位性を保ちたくて仕方なくなるか、埋没することに安心感を覚えるか──子どもだからこそなんの打算もなく、楽しさだけで二人が一緒にいれるんだと思う。

 

いまさらキスシーン

たいへん面白かった。八百長デスマッチと比べて完全に自分の優位性を保ちたくなってる思春期の話で良かった。

序盤の身体性と女子高生というアンバランスさを楽しむ作品から、傲慢な女の子がその傲慢さゆえに大して何にも本腰入れることなく終わっていく話に切り替わる瞬間の底冷えする展開が素晴らしいと思った。エロとグロさと滑稽さのちょうど良いところを猛スピードで進んでいくのが好き。どう見たって女子ではないのに、段々といろんなことに一生懸命になろうとして空回りしている「ひより」ちゃんが可愛く見えてくる不思議。

この場合エロというのは内容の話というよりは、とにかく隆々で過激な格好をした大人がめちゃくちゃ短いスカートで汗だくになりながらすげえ動くというところにエロさを見出すか、ヤバさを見出すかという話だと思う。

とにかく大変に面白いお芝居だった。

セリフ、コミカルな動き、身体というエロさと精神的な滑稽さ。10代のグロテスクさと暴力。あとついでに柱をよじ登るヤバすぎる筋力。30分という短い中に脚本の持つ「ひより」という女の子の魅力と演者の技術、ギュッとそれが詰まっていてギュッと面白い作品だと思う。