サニーサイドアップフォーチュン

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感想『美少年』

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美少年

面白かった!

こんなにはちゃめちゃな見た目をしていながらやっているのはずっと搾取についての話である。つまり作中でいうところの略奪の話であり、性的に、金銭的に、権力的に、年齢的に、そして容姿においてそれらが搾取される健全ではない状況についての話だった。世間の声が具現化したまがまがしい存在が「美少年」の登場を望むことすら、そういう構造の中にあるはずだと思う。アートを望むものが略奪していくという構図は、そのままアートを見つめている観客にも当てはまる。

「ヒバリ」は幼くそして美しい少年で、自分が常に話題の中心にいることが当たり前であるなかで、動物園ではじめて自分が動物たちと同じように搾取されていることに気づいたところから始まる。そもそも「ジャノメ」は常に誰かを搾取することで地位を得ており、そんなジャノメがヒバリの美少年さを搾取することに対して全く抵抗感がないゆえに、ヒバリが自らの価値を「美少年であること」だけに定めてしまったわけで、全てはジャノメや美少年さを誉めそやし搾取する大人が悪い。育ち、少年ではなくなっていくヒバリが固執した「美少年」の称号が、同じく大人になってしまった同級生の手でまた別な美しさを取り戻すところなどちょっとした感動である。美しさとは加齢によって損なわれるべきではないし、また新たな美しさを獲得していくのだと思う。

四人が入れ替わり立ち替わりあらゆる役を演じ続けている面白さももちろん、全く無関係に見えるヒバリとジャノメの物語が遠く遠く始まって絡み合うようになる流れが、たった1時間の中に濃縮されている。大変に面白い芝居であるが、その速度に疲れることは確かなので元気な時に見ましょう。