サニーサイドアップフォーチュン

映画、特撮、演劇、ダンスボーカルグループ

感想『スイス・アーミー・マン』『ボーンズ アンド オール』

スイス・アーミー・マン

終始バカな下ネタばっかり言ってるのだけど、なんか示唆と含蓄に富んでいるようなことも言い出すし、最終的に何だかよくわからないがメニーの旅立ちへの切なさがある変な映画だった。

ハンクにとってはメニーが本当に喋るし万能な死体であることは確かなんだけど、無人島からサラの家の庭に転がり出るまで二人きりだから、メニーが実際にそうであったのかはこちら側からは判断ができない。ハンクがメニーに与えた人生のほとんどが、ハンクがそうならいいなと思っていたことで、自発的に行動できなかったハンクのように自力で何もできず、そしてこのままではいずれハンクもそうなるであろう死体に対しての走馬灯の投影だったとも言える。

ハンクがメニーを通し自分と向き合い、自分を愛せるようになることの映画なんだと思う。

それはそれとして、ハンクのDIY技術は楽しそうで良いので、その方面を磨いていってほしいと思った。

 

ボーンズ アンド オール

食人以外にはかなり真っ当で、ロマンチックで、美しいラブストーリーだと思った。社会に馴染むことのできない孤独を抱いた二人が出会い、恋をする展開と撮影の美しさはさすがで、野原でマレンとリーがリーの悲しみに向き合うシーンなどは本当に綺麗だと思う。また、そういう若者に対して何か手を貸してくれるような真っ当な大人の存在がいないので、マイノリティであるゆえの苦しみに対してケアがされない若者という見方もあり、そういうマイノリティの持つ問題の比喩の映画でもあると思う。

食べることは生きることで、食べてしまいたいほど愛し、人を食べる。理解されないが故に孤独に生きるしかないが、本当に孤独になりたいわけじゃない。そういうところの描き方は丁寧と思う。

展開はとても王道なのでラストも予想がつくものの、とにかく美しいロードムービーであるので、そういう王道がよく似合うと思った。