今夜、ロマンス劇場で
とても可愛らしく、嫌なキャラクターがおらず、エンディングなど特に新トップコンビのお披露目に相応しい演出の作品だった。
とにかく健司も美雪もキャラクター造形から衣装に至るまでたいへんに可愛らしい。明るく見やすくて、観る人をあんまり選ぶこともないと思う。映画原作の割に場面転換が多すぎることもなく、自然な感じで移ろっていくのも個人的には評価に値すると思う。ストーリーもシンプルな感じのラブストーリーだった。山中が塔子の想いに対して、その家系を当てにした見方をしてるあたりは結構シビアな感じで、実際問題そういう「実家の太さ」が夢を追う仕事においてどれほど優位に作用するかということもわかるが、別にそれを強く意識した作りになっていないので、唐突に山中が打算による婚姻を望んでいるように見える。ちょっと処理が甘いと思った。そもそも、ストーリー自体が昭和でありながら、昭和レトロにときめいたがゆえにそうなっている以外の意義は感じなかった。
なんていうか、もうずっと海乃美月さんが可愛くって仕方なく、その可愛さにニコニコしてる時間がそこら中にある。あと、月城かなとさんの前髪があるのもかなり良い。大蛇丸という役も、暁千星さんもすごく良かったので、もうひと騒動起こして欲しいくらいだった。
FLYING SAPA -フライング サパ-
嫌いなわけあるか?と思いながら見ていた。地球を脱出した人類、管理社会、反体制活動……。
つまり、本当にかなりちゃんとSFである。映画的である展開を、例えばオバクの見る夢やミレナの身体に施される技術を、演劇的な表現に落とし込むところなどはいっそ心地良くもあり、見応えがあると思った。
話ももちろん好きだ。個人や家庭ではなく社会こそが社会の最小単位になるとき、人間が完璧な社会性を獲得したと言えると『ハーモニー』にもあるが、まさにそれを目指す一つの方法をめぐる物語である。人間の社会性や尊厳に対してどう疑問を持つのか、考え方を持つのか。民族や文化が漂白されるというのはどういうことか。一度ならず二度までも記憶を消され、驕る日本人の将軍や、タルコフ、ブコビッチの出自。そういう政治的なメッセージがごくごく自然に配置されている。とても面白かった。
演出的な部分で気になるとすれば、情報量が多いゆえにサラッと何があったかを言葉で説明する必要が出ていたりするシーンがある。観念的な夢や技術の表現に対して、かなり実情に則した手段だと思うので、ちょっと物語の流れの中では浮いているかなと思った。
あと、終わり方がちょっと気になるというか、これも愛によって収束しないといけないのかなという気持ちになる。
コロナ禍真っ只中で挨拶で泣いてしまう真風さんを見て、あの頃のままならぬ日々を思い出して泣けた。