サニーサイドアップフォーチュン

映画、特撮、演劇、ダンスボーカルグループ

19年星組『龍の宮物語』16年花組『金色の砂漠』17年宙組『神々の土地』

龍の宮物語

「浦島太郎」と「夜叉ヶ池」の話とのことだったので、先日「夜叉ヶ池」を観たことだしと思って配信を観た。二つの物語の配合量としては「浦島太郎より」な感じがし、「夜叉ヶ池」に熱い期待を寄せていた身としてはちょっと残念ではあったものの、美しく悲劇的であるところなどはかなり泉鏡花という印象である。

清彦がとても可愛らしい男性で、なんだか心配になる造形なので作中みんなに心配されており、そういうところに玉姫が毒気を抜かれているのがまた切なくて良かった。

因果を持たせよう、それを示そうとする流れの中で若干詩的な魅力が損なわれているように感じる。

 

金色の砂漠

最高すぎる。こういうの見たいんですよ宝塚で。

美しく歪な愛憎劇で、ある意味王道であろう貴種流離譚の一方で、正統な王様が戻ってきて正しく平和な統治になりましたとならないところ、大変に好きだった。

一族が卑しい身分に追いやられた憎しみ、愛した女性の優先順位から溢れる苦しみがないまぜになっているギィも、何よりまず誇りを優先させ、傲慢さと気高さが表裏一体になっているタルハーミネも強烈で素晴らしい。

ジャーとビルマーヤの穏やかな関係性と対比されて、苛烈なギィとタルハーミネの二人が際立つ。衣装も素晴らしく煌びやかで、また布を使った砂漠の表現も大変美しく好きだった。

奴隷が婚礼衣装を取り落とし、タルハーミネの部屋に靴がないことなど、あまりに美しい破滅への足音の表現であり、また欠けたることのない王女であるタルハーミネの欠損という隙にギィが入り込むことでもある。またギィが聡明であるが故に他者の意見を理解し鵜呑みにしてすぐその考えに染まるのだけど、連動して衣装も変わるので親切だと思った。

柚香光さんの金髪アップバングが最高だった。

 

神々の土地

大変良かった。ラスプーチンが出てくるところなど本当に怖いので最高。

硬派な歴史を取り扱うが故に、衣装や宮廷の絢爛さの割に話の運びは静かで堅実で、破綻することもなく丁寧で良かった。一方でロシア革命や戦争というショッキングな出来事をテーマとした作品なので緊迫感とドラマチックさは十分に兼ね備えており、大変面白い作品だったと思う。

ラスプーチン周りの演出(初登場、暗殺)が素晴らしく、ラスプーチンが出てきた銀橋でドミトリーは彼を撃ち、ドミトリーが任官式で降りてきた階段にラスプーチンが倒れるという繰り返しも好きだ。

上田久美子先生の、一度出てきたものはもう一度出て来て意味をしっかり持つところが活かされたとても完成度の高い作品だと思った。