サニーサイドアップフォーチュン

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23年月組『DEATH TAKES A HOLIDAY』感想

DEATH TAKES A HOLIDAY

https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2023/deathtakesaholiday/index.html

公演が中止になり唯一持っていたチケットが飛んだため、配信で見た。

保守的な価値観で作られたミュージカルという印象で、家父長制とか結婚制度とかもそうなんだけど、何より死神というそもそもの設定からなんだかやたらと保守的な宗教みたいな雰囲気を感じる。保守的な家や価値観をヒロイン・グラツィアが苦しいと思っていて反発から死神・ニコライと結ばれるというわけでもないので、何をどう描きたいのかも私には伝わって来なかった。そんな雰囲気の中で契約たる結婚に対して貞淑であることより、恋が優先されることもよくわからない。エリックが出て来てせっかく増した不穏な空気感も全く活かす事をせず、とにかく脚本の良さが全くわからず面白いとは思えなかったのだけど、こういう時代感でこういうビジュアルの作品を今の月組にやってもらいたいという気持ちは理解出来た。

なので、たとえばもっと若手のメンバーで、もっと小さい箱でやっていたとしたらもう少し見方は変わると思う。今回出演していた今の月組における中心メンバーではもっと複雑でごたついたものを観たい。出てくる登場人物の設定に厚みがなく、このメンバーでやるには誰も彼ももったいない。

歌は上手いし、衣装は美しいし、お芝居も軽やかであるところはそう、切なく胸に迫るところはそうと流石の表現力であると思う。。ただ脚本のテーマがふわふわしていて強いメッセージを打ち出せず、また曲もずっとバラード続きで盛り上げづらいことから視覚的な演出も舞台の大きさの割にこじんまりとしていて、それを補ったりするためか使用される映像演出も別に効果的でもない。

何というか、とにかく脚本だとか曲だとか、元々の作品の持つそれがどうにも私に合わず、演者本人たちのお芝居はとても良いのに惜しいという気持ちがずっとあった。

エリックはめちゃくちゃカッコよかった。飛行機乗りというだけで良いのだけど、ニコライの違和感に気づくことや、目の前で友を失った悲しみなどを大変に魅力的なので、もっと活かしてくれと思った。ラストシーンのアリスに手を差し伸べる際のスーツが最高でした、本当に。