サニーサイドアップフォーチュン

映画、特撮、演劇、ダンスボーカルグループ

感想『BAD LANDS バッド・ランズ』『RRR』

BAD LANDS バッド・ランズ

面白かった。色々あるがひとまず姉弟が好きだった。そう育つしかなかった姉弟の、そう育った故の繋がりがつらいものはあるが良い。

ネリのことがちゃんと姉として好きなジョーが、ネリが生きていくために最後の判断をしたのがもう……。「ネリ姉、母ちゃんに似てきたわ」と言うジョーにとって、実父よりも後から来た母娘が家族だったからこそ殺したんだなというのがわかっていいし、ネリはずっと「矢代にも仕事を」と言い続けているのがこの姉弟の魅力だと思う。血の繋がりとかじゃない、ジョーが殺した父親の上に成り立っているとしてもそれがこの二人の家族の繋がりなんだと思う。

あと、酒が抜けて冴え始める曼荼羅のかっこいいこと。ネリのことを愛情深く見守り、ジョーのことを弟子のように導き、自分の幕引きを自分で決めていることの潔さよ。

日本のノワールで銃撃戦になると浮く感じがして馴染まない気がするが、身近にある特殊詐欺から治安の悪いエリア、その背景の描写の流れがしっかりあるなかで屋根裏から銃が出てきたり銃刀法で逮捕されたりするのは私の中では納得感があり良かった。

社会の流れからあぶれた人たちが暮らしている展開が続くけども、それに何か対応を求めたり、どう思って欲しいというような「教育」的な側面がないのが良かった。冒頭でネリが西成を撮影しに来た学生に怒鳴るところなど大変に良い。もちろん問題としてどうにかしなくてはならないものだが、答えを用意されていないのが良い。

原田監督が撮った新選組の映画に出ていた山田涼介と岡田准一を出し「新選組の映画を撮ったオープンセット」は笑うしかない。

 

RRR

大変に話題になった作品であり流石に観ないのもなと思い鑑賞。インド映画らしく相変わらずの長さであるがビームとラーマの立場の違い、友情、また水と火に象徴される性質の違いはわかりやすく描かれていて二人の熱いブロマンスはエモーショナルである。アクションとしても水と火をうまく使い分け、象徴的に神話を反映させる派手さが面白かったものの、後半に行くにつれて強いナショナリズムを感じてしまい、娯楽映画として植民地時代を下地にこういった映画が提供されることのキツさを感じる。

あと、ビームが非ムスリムでありながらムスリム家庭で匿われていることや、例の「ナートゥ」において有色人種の連帯、さらに拡大して女性の同調という演出になる意義は理解したが、後半に向けてスカッと演出に切り替わっていく故にその連帯感が全く活かされていないところに大変にモヤついた。一部が良かっただけに二部の全体的な印象やテンポ感が辛い。

ラーマがビームとの絆の中で、ビームが歌で人の心を動かすのを目の当たりにし、「武器が銃火器だけではない」と学ぶのは先進的な学びだと思うけど、結局ビームの歌で焚き付けられた人々は暴徒となる。ビームはビームでラーマの熱さに沸騰していて最後は英国を象徴する銃火器によって敵を排除するので、人間が求めているのは結局対話などではなく闘争なのかと感じ、それが宗主国的振る舞いを一度でもした国に生まれた人間が思うことなのかと落ち込み、今に至ります。

これだけ憎まれることをするということです。よその国に入り込み、その国の人々を搾取し文化を奪うというのは。そう思うと上記のような感想そのものが“する側”の感想のようにも思えてめちゃくちゃ辛くなります。