サニーサイドアップフォーチュン

映画、特撮、演劇、ダンスボーカルグループ

23年月組『フリューゲル -君がくれた翼- / 万華鏡百景色』感想

フリューゲル -君がくれた翼-

時代性やテーマ性の割に曲や演出が軽やかすぎ、あまり良いバランスには思えず私の好みではなかった。ベルリンの壁って東西冷戦の象徴のようなものという認識でいたし、そもそも『ボディーガード』(Whitney Houston - I Will Always Love You (Official 4K Video) - YouTube)のようなストーリー展開があまり好きではないというのもある。実際の国、実際にあったことを扱うにはちょっとファンタジーっぽくはないかと思ったし、登場人物たちの関係性も説明のされ方があまりパッとしないように思う。ただ、そういう印象の中に「事実」を混ぜ込もうとしているようではあり、世界史にこの上なく弱い私の理解力ではその目配せしか感じるので精一杯だった。

要素要素は良いとちゃんと思うところもあって、ヨナスとナディアが二人でホテルを抜け出すところなどは『リトルマーメイド』でアリエルに国を案内するエリック(Kiss the Girl (From "The Little Mermaid") - YouTube)のようで可愛かった。特に今の月組はかなり安定的に歌唱できる演者が多いと勝手に思っているのだけど、そういう歌のうまさをそれぞれに感じられる構成になっていたところなどは好感が持てる。

また、あらゆる分断、あらゆる対立が日常的に存在している今の世界の中で、エンターテイメントがそれに対して「そうあるべきでない」というメッセージを発信することなどは良いと思う。ラストに向けての歓喜の歌の合唱などは圧巻でとても良かった。

だが個人的には『万華鏡百景色』の良さの方が印象深い。

一つの万華鏡が見て来た男女と、あらゆる苦しみや強かさをストーリーに則って展開していく構成も、曲も良い。見せ場の作り方も好きで、しっとりと高学年の良さを感じさせるところも、若手実力派メンバーの魅力を活かすところもあり、見どころがたっぷりある。瑠音さんはかなり気持ちが乗っているというか、表現に対しかなり開放的に思え、すごく好きなショーだった。

 

 

いま、劇団を取り巻く状況は決して良いものではなく、私も観客の一人として果たすべき責任について考えている。

どうしたら良いのだろう。