サニーサイドアップフォーチュン

映画、特撮、演劇、ダンスボーカルグループ

ミュージカル『愛の不時着』感想

愛の不時着

立場の全然違う、けれど運命的な二人のロマンスである、というところに終始しており潔さを感じる。また社会的、政治的な問題を描けそうなモチーフを使っていながら、そういうところを極力ぼかしているのがわかる。エンターテイメントそしてロマンス作品として、あるあるを網羅しながらそれを魅力的に見せるということに注力し、またセリのキュートさやジョンヒョクのかっこよさを魅せるための舞台作品。二人の恋は可愛くて楽しいもので、二人の魅力は十分に伝わってきて楽しいし、またダンとスンジュンの悲恋についてもしっかり時間が割かれており、おざなりなサブカプになることなく魅力的なカップルだと思う。曲の入り方もスマートで、どうやってみんなの中にセリが入り込んで行ったのか、ダンの心が揺らいだのかが滑らかに理解できてよかった。圧倒的にどうしようもないこと、結論が出ないことの前でなす術なく翻弄される四人の姿は切ないし、それぞれの恋もたくさん応援できてよかった。歌も良かった。アイドルがたくさん出ているとは言え、ちゃんと歌が上手いアイドルなのでしっかり聴かせてくれる。

一方でこのミュージカル上の印象だとあまりに無邪気に思える。たぶん私の不勉強と、またストーリーの取捨選択のゆえにそう思うのだと感じてはいるが、あまりに無邪気に愛の話をし、無邪気に南北について触れるものだから本当に不勉強が申し訳なくなった。

サンヨンはスンジュン役なんだけど、彼自身のチャーミングさと誠実そうな雰囲気でかなりおすすめの恋愛相手であり、また場面によってはアイドルっぽい大仰さでちょっと油断ならないところもあったりして、悲しみはあれど裏表のない登場人物の中でわかりやすく不幸な目に遭いそうな感じが可愛かった。ダンとスンジュンの恋が報われないのが辛すぎるので二人の運命の恋スピンオフが見たいよ……。

とにかくサンヨンが芝居をし、歌い、踊る姿に感動してしまい、誇らしい気持ちでいっぱいになった。