サニーサイドアップフォーチュン

映画、特撮、演劇、ダンスボーカルグループ

感想『ヴァチカンのエクソシスト』『バトルキング!!-Weʼll rise again-』『パプリカ』『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』『“それ”がいる森』『ザ・ロストシティ』

ヴァチカンのエクソシスト

王道な印象の映画で、破天荒な主人公・真面目な助手・理解のない中間管理職・理解のある上司・尊敬すべきボスが全部揃っていて、かつ困難な状況にある家族がより困難な状況に追い込まれる。事実を元にしたホラー映画という始まり方だったけども、ヴァチカンサイドのメンバーがどうにも少年マンガの一筋縄で行かない組織感(言葉を選ばずに言えば『青の祓魔師』における「正十字騎士團」っぽすぎる)があるためだんだんアドベンチャー味が増していき、最終的には新しいダークファンタジーバディが誕生している。そういうのは嫌いではないし、現場となる教会のダンジョンっぽさも味わいがあってそういうファンタジーとしては楽しく見れるが、まあそれ以上ではないかなという感じ。

ラッセル・クロウの破戒僧みたいなのは確かに人気出るなと思います。

 

バトルキング!!-Weʼll rise again-

本当に何もかも問題だらけで書き出し始めたらキリがないんだけども、ONE N' ONLYをメインに据え、ONE N' ONLYに学ランを着せるという判断には拍手を送りたい。

芝居がとか演出がとか言う前にストーリーが甘すぎて、破綻しているとかそういうところまで行っていない。ご都合主義の前段階みたいな感じでぬるぬると話が進んで行く。だがそんなところにこだわっているとこれは語れない。あと、EBiDANコンテンツは「戦国時代」という安易な群雄割拠のイメージから早く抜け出したほうがいい。

ツッコミどころも多く、目指す作品像に比べて明らかな資本不足を感じるシーンも多く、そもそもグループがEBiDANらしからぬコンセプトとはいえかなり本人たちは育ちの良い感じであるためヤンキーという題材も向いてないと思う。ただ本人たちの頑張りは認めたいし、目指すものにちゃんと辿り着くと良いなと思いました。

 

パプリカ

面白かった。キモがらせるための映像、観客が慄くことを期待された映像美に素直に圧倒された。発狂シーンの唐突さと明るさが不気味で、『このテープ持ってないですか?』を思い出した。正確には『このテープ〜』の方が『パプリカ』の再構築みたいなことだと思うが。咀嚼を経てお皿に戻る二枚貝、名付けられる前の自然現象。いわく、咎人の雛先生が参考というわけだけど、それはそれとして印象としては近い。

羨望・欲求というような人間のキモさが、無意識であるはずの夢の中で意思と関係なく展開されるキモさ、それを他人に明け渡すことのキモさ、他人に明け渡す・征服することを望む人間のキモさ。そういう脅威に対して自己の尊厳を守りきれないかもしれないことがスリラーとしての恐怖であり、また作品としての表現に思う。小山内が氷室や乾に対しその欲求を利用したことも、敦子に対して表出させたことも平等にキモいことだと感じたし、傲慢なことであるという描き方だったという印象である。小山内の方の描写量には思うことはあるが。

敦子と時田はそういうキモさにあってなお惹かれ合うことへの肯定というか、相手の一歩間違えればキモくなる部分を受容し魅力に反転させることに希望を見出す関係だったと思う。

 

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊

面白かった。人間を人間たらしめているものは、物理的な臓器にあたるのかそれとも意識に由来するのか。人間の定義や人間の持つあらゆる生理的また精神的な活動についてどこまで維持できれば人間なのか。作中でも言っていたが、素子が唯一残っている人間的な器官(脳)をその目で確かめられないからこその葛藤だと思うし、よしんば脳が残っていたとしてもごみ収集員みたいに嘘の記憶かもしれない。そこに人間としての拠り所を求めることへの限界があって、生命活動ではない部分を人間とする「人形遣い」が人間らしさの獲得のために融合を申し出ることの魅力的さというか、生身の部分に人間らしさの定義を求めることをやめて精神活動のみに求めることの身軽さというか、人間というものからの解放というか、そういうことを感じてそれを選ぶことへの理解もあった。自分の中で。

あと一昔前の電脳世界の感じ、平面的な認識で展開されるそれが今やレトロなのに近未来にちゃんと感じるかっこよさがあってすごく良かった。

 

“それ”がいる森

パンサーの尾形が出てきた時点でもう怖がらせる気がないだろという気がした。

すごい映画だよこれは。心霊ホラーみたいな始まり方や予告にしておきつつ、もはやそういう方面ではないのは早々に明かしてなおさして盛り上がらない。あの飛行物体に乗る生物があれほど短絡的にクリーチャーでいいのか?

てか他の大人は串刺しなのに先生だけ絞殺狙いなのが謎だし、粘液は青いのに血液が赤いのはそういうものなんだという感じがする。

 

ザ・ロストシティ

楽しい映画だった。すごい笑ったし笑顔になれる映画で、すごいちゃんとロマンティックなコメディなんだけど時代に沿ってアップデートされてる感じがあって嫌な気持ちにならないというか、きっと見終わっても嫌な気分にならないだろうなというのがわかるからこそ笑っていられる謎の信頼があった。セリフも面白くて適度にアホで、でも下品になりすぎないところがすごくうまい。サンドラ・ブロックもコメディに対して全力で可愛らしいし、ブラッド・ピットの無駄遣いに笑う。アランという鬱陶しくなりそうなのに、なんだかその一生懸命さが可愛く見えてくる役も良かった。チャニング・テイタムの出演作は全然見ていないのだけど、多分本人のその人の良さそうな顔立ちとか、全体的に思慮深そうな印象によるところなのかな。ダニエル・ラドクリフもすごく良かった。こういう変な役本当に楽しそうに見える。

大人の第二の恋愛であり、さまざまな偏見やステレオタイプ、映画あるあるを笑い飛ばすところが爽やかで、内容は全くないのではあるが妙に説得力のある面白い映画だった。