サニーサイドアップフォーチュン

映画、特撮、演劇、ダンスボーカルグループ

感想『THE FIRST SLAM DUNK』

THE FIRST SLAM DUNK

私の実家──家族の話からすることになるのだけど、コミックスが初版で全部揃っていて完全版もあるような家で、唯一私だけがスラムダンクを読まずに育った。基礎知識だけでこの映画を見て、それでもこれだけ息を詰まらせて見ているのだからすごい映画だと思う。泣いてしまった。

リョータがソータという兄に対し、劣等感や別れ際のやりとりに対し申し訳なさのような感情を持ちながらも、それ以上に慕う気持ちを持ち、もう超えることも共に歩むこともできない兄としての概念になってしまったことを受け入れて次に進む個人の物語と、山王戦という試合が綺麗に重なり合う。内容は泥臭いけれど、すごく綺麗でドラマチックな作品だった。試合の合間に別のシーンが挟まり読み取れる情報量は多いのに、過剰でない演出や寡黙さ、説明しないからこそリョータの内省や母の揺れに対して胸に迫るものがある。お母さんがリョータに対してソータを見てしまったこと、周りからそう期待されることに対してノーを突きつけたこともすごいと思うけど、リョータが「自分ではなく」と思いながらも母の愛情に対してお礼で報いることが出来るのが格好良いと思った。妹が「兄」と「故人」であることを両立させているのも妙にリアルだと思う。私は子どもの時に亡くした祖母の享年もそこにもういないことも理解しているが、数年前に亡くなった祖父のことはまだ受け入れきれていない。そういう感じ取り方の差がリョータと妹の間にあるのがしっくりくる。

こういう情報量と寡黙さがちゃんと両立するのはこれを作ったのが原作者本人だからなので、原作というのは偉大である。あと、スポーツ漫画って描くのすごく大変だろうなと思った。ストーリーがうますぎて、そういう試合を観ている気分だった。最初CGアニメなのか…みたいな気持ちもあったが、動き方や速度を思うときっとこれが最適解なのかなと思った。原作の線の良さを消さないぎりぎりを狙ったんだと思う。

リョータだけではなく赤木や三井、流川、花道、木暮や晴子の想いがそれぞれあって、勝利に対してそれが一つにまとまっていく物語、試合としての面白さ、それを損なわないスピードのあるアニメーション。みんなが夢中になるのもわかる。2時間あっという間だった。