サニーサイドアップフォーチュン

映画、特撮、演劇、ダンスボーカルグループ

日記

抜いたぜ。

 

順を追って説明しよう。

 

朝と昼のちょうど間で予約してあり、朝胃に詰め込めるだけ詰め込んでから出発。到着し、緊張で無愛想になる私に対し歯医者の先生「無愛想じゃない?」

 

緊張してるんですよ、先生。

 

麻酔を塗られる。この時点で口の中がかなり熱い。じんわり麻痺していくのがわかる。

 問診。アレルギー云々について確認される。つい先日まで抗生剤を飲んでいたため、その旨申告。「ずいぶん強いの飲んでるんだねぇ」とのお言葉を頂戴する。まあもう持病と言っても過言ではないので、仕方がない。

 

一本目の注射。チクリとする。歯茎の内側二箇所、外側一箇所。のように感じた。正直、この辺りで表面的な麻痺に関して結構効いており、確かな感覚とは到底言えない。

また、ずいぶん診察用の椅子が倒されており、自動車免許のために習った気道確保を思い出す角度で口を開けている。鼻の穴も見えていることだろう。

 

約五分の待ち時間。マッサージしろと言われもちもち頬を押す。

 

二本目の注射。触った感覚がある。歯と歯茎のちょうど境目くらい。2回ほど。場所まではもうわからない。処置されるたびにうがいをする。面倒なのでうがい事情までは書かない。

「ちょっと触ってみるけど痛かったらすぐに左腕を上げてね」と言われながら、なんか金属的な音を立てるものと手で歯を突っつく。「痛いとかある?」「無いです(こんなに綺麗に発音できてはいない)」「よし抜こう」

なにか金属の器具が口の中に突っ込まれるが、必死に視線を外している私にはそれが何かを判別することが出来ない。

歯ががっちりホールドされているような感覚。恐らく何かペンチ的なアレで挟まれている。口の端に一瞬冷たいものが当たった。歯科衛生士さんと二人掛かりで口をと顎を押さえられながら、みしみしという音が歯に近い方の耳に聞こえる。先生がしきりに「痛かったら言ってね」「ほら抜けてるよ」「別のこと考えよう、帰ったらどんなテレビ見るとか」と言ってくれる。私はキュウレンジャーのことを考えながら顔をしかめて耐える。

親知らずと言えど元気な歯を抜くので、筋力のない私の首は歯につられて動きそうになるが、先生のびっくりするくらいの握力で顎を固定されているので、この時は顎の方が痛い。歯がずれる感覚がする。歯が移動する、というか、なんか存在感が無くなるのがわかる。体感一瞬、本当に30秒とかからず抜けた。

 

「持って帰る? 歯」

「いらないです(こんなに綺麗に発音できてはいない)」

傷口に抗生剤を放り込まれた後、今まで噛んだことのないどでかいガーゼを口に突っ込まれ、頭を倒したまま10分それを噛み続けた。そしてガーゼを取り替えてから、今度は体を起こして20分。あまりに噛まされているガーゼがデカイため、口の中がガーゼで渋滞し、周りの、例えば頬の肉とかの方が痛い。力がかかるべき歯が無いため、どれくらいの強さでガーゼを噛んだら良いかわからず戸惑う。「強く押さえなければ止血にならない」と先生。麻酔が効いているので、ガーゼを噛んでいる感覚が薄く、不安感がある。

最後にさらにチェックされ、新しいガーゼを噛み帰宅。30分程度したらガーゼを捨てて大人しく寝ようと思いつつ、ご褒美にキュウレンジャーを見る。

今週のキュウレンジャーはとてもメサく、バランスとナーガの幸いを願うばかりだが、今時の子はこのようなハードなものを見ているのかと思うと大層恐ろしい。

 

キュウレンジャーも半分を過ぎた辺りから、「あれ……歯(の跡地)、痛くない……?」と薄々痛いことに気付き始めたので、大人しく寝ることにする。ロキソニンと抗生剤を細々としたわずかな水で飲み、いそいそとベッドに横になる。痛い。最初に痛み始めた時とは違う。なぜなら歯がないから。周りの歯をグイグイ押して痛いわけではない。大穴がズキンズキンと痛む感覚。血の味がする。洗面台に吐き出して映画みたいな気分を味わおうかと思ったが、歯医者を出るときに先生に「無闇に吐き出したりして塞がりかけの傷口のかさぶたまで吐き出さないように」という言葉を思い出して、余計なことするのはやめようと思った。

 

その後、麻酔が切れる前に寝ることに成功し、今起きてレポを書いている。

 

今、とても、痛い。

 

寝ようと思うのだが、とてつもない空腹でそれをためらう自分がいる。すごいお腹減った。

痛いのにごはん食べれるのだろうか。

日記

生まれて初めて歯が痛い。

 

「?」という顔をした人もいることだと思う。だが今一度言うが、生まれて初めて、歯が痛い。

これまでの人生で虫歯になったのは一回、それも乳歯でそのあとさっさと抜けた。以後、歯茎の血流の不安はあれども、虫歯とは無縁の日々を過ごしてきた。実に、十年以上。

このまま逃げ切れるーー。私はその自信にあふれていた。このまま逃げ切り、85まで自分の歯で煎餅を食ってやると。

 

ある時、異様に歯茎が腫れていると思った。だがそう思うだけで、劇場と弊社は交互に私を追い立て、気づけばひと月……もしかしたらもっと、経っていたのかもしれないが、とにかく幾日か過ぎていた。

 

あんまりに痛むので、「痛え、痛え」と家族にちょろりと口の中を確認してもらった。ありがとう家族。家族と言えど口の中など確認したくはなかろうに。

 

「親知らず生えてるよ」

 

まごうことなき、絶望であった。前回の歯科検診ではなんともなかったはずだ。

 

親知らずを抜くのは、人生の一大イベントである。親知らずに良い話を聞いたことなど一度もない。まずは聞き込み調査だと話を聞いた。以下はその記録である。

「でっかいペンチみたいなので抜く」「抜けない時はハンマーで砕く」「麻酔の注射がそもそも痛い」「麻酔されてるからうがいも満足にできない」「麻酔切れたら地獄」「すげえ腫れる」……

生まれて初めての歯痛に震える女に、伝えたいことはそれだけなのかお前らこのやろう。

 

あぁ、私の親知らずよ。とんでもない生え方をしているらしい私の親知らずよ。頼むからスムーズに抜けてくれ。頼むからハンマーで砕くようなことになってくれるな。というかなんで生えてきたんだ。最後まで歯茎に埋まっていればこんなことにはならなかったしお前も85まで煎餅を食べれたというのに。

 

こうなったら親知らず抜歯レポしてやろう。そうでもしなければ発狂しそうだ。気を確かに持ち、抜歯に臨むしかない。目を瞑れば煌々と光る診察台のライトが見える。絶対に先生から鼻の穴が見えている。鼻の穴だぞ。人様に鼻の穴見せてんだぞ。どんなストレスだ。

 

だいたい本当に歯が痛いのかわからなくなってきた。

この歳にして初めての歯痛ですでに感覚が狂っている可能性もある。もしかしたら大した痛みでないものを「痛い痛い」と無様に言っている可能性もあるのではないだろうか。

 

いや、やっぱり痛い。

 

そうこう言ってる間にも抜歯の時は刻一刻と迫り、もはや目前にある。

 

親知らずを無事抜歯し、咀嚼に不自由を感じなくなった暁には、フランスパンを食べる。

フランスパンを食べるぞ。

『メサイア悠久乃刻』感想

昂まったので自分ルールを破って更新する。

 

〜これまでのメサイアと私〜

『メサイア暁乃刻』感想 - サニーサイドアップフォーチュン

 『メサイア極夜』感想 - サニーサイドアップフォーチュン

 

「もう二度と会えない人、もう二度と立ち寄らない場所、もう二度と触れないもの、もう二度と聴けない音楽」彼女は窓の方を眺めて目を細めた。「人生は、常にそんな別れの連続ですね」

女王の百年密室森博嗣

とうとう来たなーと思う。何が? そう、メサイアが。

しかし有賀さん、すごい半ズボンだな。

 

 悠久、という響きが良くない。幸せかもしれないと思ってしまう。ハッピーエンドかも、せめて翡翠のようにと。

 何をもってハッピーとするかは、本当はわからない。同じ板の上にメサイアがいるだけで幸せなのかもしれない。もし引き金が彼の指の震え一つで左右されたとしても。

「最後のシーンで」か。

希望のある最後みたいに思えるね。

 

間宮の話は、出てくるのだろうか。いや、避けて通る事の方が不自然か。

不自然かどうかを度外視して、極夜で間宮を描いたのだし。

暁で間宮の名を出したのだから、その責任は是非に取っていただきたい。

でもさー、グッズがさー。

「有賀×加々美 メモリアルフォトブック」って……。

終演後から、というグッズの多さが、卒業衣装や後輩メサイアくんたちの組み合わせを匂わせられていて動悸がする。

 

暁の、自分の感想を読み返したら、「暁には社会がない」と書いてあった。確かに、社会というものに向けられた悪意がないのが、暁だった。と思うけど私の感想でしかなくこれが一般論かどうか判断はできない。

じゃあ今回はどんな話になるのだろう。

出生が再び有賀を苛み、加々美にはまだ雲井の影が付きまとう。ということで、自己同一性の物語なのだろうか、と考えている。

 

思えば二人は、アイデンティティが初めから薄かった。生まれも育ちも、利用されて来た二人だ。誰のために、何のために、メサイアのためにという理由すら、暁で確固たるものになったのなら尚更だ。

暁を経た今、二人を規定するのはお互いがお互いの名を呼ぶ声なのかもしれない。メサイアと呼ぶ、その行為なのかもしれない。

だとしたらやはり、有賀は間宮とでは自己を規定出来なかったのかもしれない。メサイアと片方が呼べば拒絶する二人では、きっと。

「言葉は、言葉だけなのに、でも、結局、言葉が嬉しいわ」

女王の百年密室森博嗣

 

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『煉獄に笑う』感想

納谷健くん出てるので行きました。

発表になった時から西田さん向き過ぎていたけれど本当に向いていた。

ザ・西田演出。

 

・バミリの量

最初の暗転で「???」となるくらいバミリの量が多くて、慄いた。あれを覚えて仕事してるのか!!

今回はセットが細々切れるのでさらに多いのかもしれない。

 

・セットと照明と曲

 相変わらずめっちゃセット動く。

照明も相変わらずとても美しい。

そして相変わらず人の死や信念に関わる時に歌詞のある曲が流れてきて否応無しに心が動く。

ソロデビューについては、崎山さんのファンは大変だなと思うに留まるが、アニメ化もされていない原作のために曲を用意し、それを効果的に使うのは単純にすごいなと思った。だって二幕に出て来て二幕で死ぬ荒木村重の死を、あれだけエモく描くのだから。

 

・ストーリー

漫画途中まで読んでたので全く不自由しなかった(不自由したという感想を読んだので)

ちょうど石田村のクライマックスから読んでいないので、「義兄弟の契りを交わそう!」とか感極まって泣きました。あんなに双子は佐吉をおちょくってたのに、信頼とはなんと美しい……。

確実に次回作あると思う。

 

・殺陣

二幕ずっと斬ってる。

無敵超人じゃない鈴木拡樹氏が久しぶりだったので、新鮮な気持ちだった。雑魚相手には負けたりしないものの、八咫烏(強い敵)には苦戦する。その感じが久々である。けど何かこう、佐吉の人間味は薄いのは、煉獄は英雄譚であるからかなと考えていた。最遊記の方が人間味ある。

前島亜美さんがサイコーにカッコ良かった。女性の殺陣はワカハイ界隈で売りにされる「早い」「多い」な殺陣にならないイメージがある。それはもちろん女性という体の作りの問題でもあるし、もしかしたら私が知らないだけでたくさんの理由があるのかもしれない。

だけど彼女の殺陣は華やかさの中に、武士のように見えたりしてなんというか、とてもかっこよかった。

納谷くんの体の軽さが存分に活かされていたので忍サイコーだと思う。素晴らしい回し蹴りが炸裂する。

 

・演者さん

前述の通り、前島亜美さんかサイコーすぎる。阿国がもしかしたら好きなだけかもしれないが非常にかっこよく、そして色っぽく、時に子供のように可愛らしく、そして曇の当主として在り続ける姿のかっこよさたるや。阿国最高!

納谷くんのちょっとサイコパスな演技、ゾクゾクした。本気で思ってるのかわからない賛辞や助言、罵倒まで、年若い少年が狂っている感じ。最高。アニメ化されておらず、ギリギリドラマCDになっているがまあ聴いていないし誰が出てたかも知らないのだが、納谷くんの一波は正解感あってとてもいいと思った。贔屓目かな?

 

殺陣、エモい演出、殺陣、殺陣、エモい演出って感じで進んでいくため、何を観にきたのかぶっちゃけわからなくなるが、初めから分かっていたといえばその通りだし、私は煉獄のストーリーを把握しているので何の問題もなかった。

繰り返すが、何が起きているのかわからないと言う感想を読んで、まあ確かになと思った次第である。

 

ちなみに、なぜかテレビで生放送する。

おヒマがあればどうぞ。

私はそれなりに楽しみました。

 

 

『神々の悪戯』と『私の頭の中の消しゴム』

 

あんな失礼なブログ書くんじゃなかったかしら。

 

CBGKシブゲキ!!
最後列でも舞台上の演者の表情が分かり、その息づかいが届く距離。
客席数にして242席、近年の渋谷には無かったサイズの劇場空間です。

行ったことないのだけれど、シアターサンモール294席なので想像がつく。

 

行く気が全くなかった。コンテンツでこうも差をつけられると凹むからだ。そんな私がどうして行くことにしたのかというと、

マジかよ。

 

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『モマの火星探検記観』感想

モマの火星探検記観てきました。

 

びっくりするくらい泣いた。

原作未読、初演未見。八割がたポエム。

 

照明

すごく綺麗だった。まず最初から星空が後ろに広がってるのがときめく。星は好きだ。

夕暮れのオレンジ、不穏な赤色、クレバスの底から見える深い青、記憶と現在の境目のセピアみたいなそういうコロコロ照明の色を変えてく板の上が本当に綺麗。

最後の方に光が上から降ってきて、本当に満天の星空になるところがあるのだが、息を飲むくらい美しい。電気のための配線コードと、そのコードの先で点灯してるLEDってだけなのに、暗闇の中で光るだけで星空に見えて、役者が演じて宇宙だと信じられる。

人による科学と大いなる地球という関係が、あの星の光に集約されているみたいだった。

 

衣装

すごく可愛い。ハンガリーの伝統衣装のような 、スペインのマタドールのような、童話みたいに可愛い衣装でフリルと袖を揺らしながらみんな演じている。すごく可愛い。

 

音楽が配信されている。楽日までなので気をつけて欲しい。

ノスタルジーであり、劇伴としての盛り上がりを備えている。映画ともアニメともつかないその感じが、耳馴染みが良い。

何より多用されたベースラインの音がスピーカーから響くたびに、胃の底を揺らし心臓を掴むあの感覚がいい。爆音に身をやつしたことがある人間の、心地よい空気の感覚があった。

 

セット

展開はない。アマテラスのように釣り物が降りてくることも、吉三のようにセットが多いこともない。シンプルなストーンサークルだけだ。

それは岩であり、門であり、扉であった。

照明が時間を示して、舞台の段差が空間を区切る。すれ違うように別の時間軸が、場所が同時に展開されて場面展開のストレスが少ないかもないと思った。

別の方の舞台で申し訳ないが、もふ虎の語りと回想のような、一連の流れを見ている感覚。語り、回想し……を段差で区切るあの感じ。

劇中の言葉を借りれば「繋がっている」ということなのだろう。

 

ストーリー

これもまた申し訳ないが、原作未読であって何がどう表現されているのかを知らない。

どこまでが原作で、どこからが舞台なのか。

ぴーぴー泣いた。この作品において、隠された事実というものはほとんど存在しない。誰が父で、誰が子か。よほど鈍くなければ幕が上がってすぐわかる。

だからたぶん、この作品にそんなことはどうだっていいということなのだろうと思う。

隠された事実が明らかになる衝撃なんかではなく、ちゃんと繋がっていた(いる)ということが初めから提示されている。

モマがたどり着いた結論があまりにもロマンティックで最高だった。

温暖化で海面は上昇し続けているし、資源を巡って戦争はなされたまま。決して物語と言えど夢物語じゃないのが、ロマンを追う彼らと対比される。綺麗なだけの夢など存在しないんだろうと思う。

 

演者さん

観終わったあと「矢崎氏、鎌苅氏……結婚おめでとうな……」という気分になる。

鈴木氏が見た目とてもブリキのロボットなのだが(アンドロイド、と劇中では表現されていて実際の働きは恐らくロボット)とても可愛らしいし、クライマックスとても泣ける。

谷口さんと子役スティンガーのシーンも大号泣。

 

 イリーナの気持ちを、もっと掘り下げるもの良かったのかなと思う。というか私の理解力問題なのか。何故ユーリたちのロケットを見届けようと思ったのか。それはモマへの恋情だったのか、父を想ってなのか、ユーリへの母性なのか、それとも奥底に眠る憧れなのか。あるいはその全てなのか。

 

 

原作読むかぁ。

良い舞台だった。

 

『東京喰種』感想

東京喰種見てきました。

原作未読、アニメ未見、初演未見、ウィキペディアすら未履修で、つまりは全くなにも知らないまま観に行った感想がこちら。

 

・アニメみたいな映像

オープニング、アニメみたいな映像だなと思った。すぐウユニ塩湖にするところとかピクシブでよく見る光景だと思っていた。

 アニメだった。

あと凛として時雨みたいだと思ったら凛として時雨だった。

映像流れる前の金木くんの独白のさらにその前、その時に流れた曲がすごく良かったと思った。

 

・「食人」という行為(ストーリーの話)

デュルケムは「犯罪行為が存在していること」は「犯罪の存在しない社会がない」故に、「正常な状態」だと述べている。

これがいわゆる、「聖人君子の犯罪」だと思うのだけど。

社会(われわれ)が犯罪であると糾弾することによって犯罪が生まれることから、犯罪のない社会とは、ある行為を「犯罪だ」と区別する基準や価値観が存在しない社会であると言える。一種の「未開状態」、未開社会の文化背景についてはレヴィ=ストロースが論じたんじゃなかったっけ。

反社会的行為も、社会(われわれ)が反社会的だと決めているだけであって、社会から生み出された行為だ。

何が言いたいのかと言うと、喰種にとって共喰いとは犯罪行為に当たるのかどうかがわからない。マダムAは共喰いを忌避するように怒って見せていた。それは喰種としての倫理観において犯罪だったからなのか、それとも騙されたが故の怒りなのか。

人間側から見れば食人という行為は犯罪だ。それは人間の倫理観によって規定された犯罪であって、喰種の倫理観ではただの「食事」ーー犯罪ではない。

喰種の社会において犯罪とはなんなのか。共喰いが罪であればそこ(喰種の社会)には秩序と彼らなりの倫理観があったと言えると思う。

で、なんでこんなこと言いだしたかと言うと、こういう作品は確実に狂ったやつが出てくる。狂ったやつがシリアルキラーさながらの謎思考回路で狂った自分の正義を振りかざしてくる。レヴィ=ストロースはどんな未開社会にも文明があると論じていたような気がするが、秩序ゼロ、倫理ゼロで果たして社会と言えるのか。

喰種であったとしても理性を持つ以上社会的な動物であり、そして人間というマジョリティに狩られる側(っぽい)以上共同体を構成することが一つ手段としてある。ウェーバー曰く「国家は暴力装置」、一人で殺し回れば殺人者、組織で力を振るえばそれはレジスタンス。ノー倫理、ノー秩序でそんな共同体を作れるとは思えない。

故に、すぐ絶滅しそうな種だと、観てる間ずっと思ってた。

あんまりストーリーが好きじゃない。

 

・中二の時読んだラノベみたいなバトル

肉弾戦メインに見えたから地味な絵面だなと思ってたんだけれど、意外と特殊能力出て来てプロジェクションマッピング〜〜って思った。

トーカのカグネ? がなんか羽なのとか「わかるヒロインの特殊能力は羽だよね」って思った。

 

・錦がチョロい。が、どう考えても錦が一番魅力的

錦が「お姉ちゃん」って言いだしてからだんだん成長していく様が、月並みだがすごいと思った。インフェルノでリッカの子供時代をそのままアフレコしてた時の、あの会場の微笑ましい雰囲気は一切無く、ただただ「お姉ちゃん絶対に死ぬやん……」という虚無感がジワジワと悲しかった。

で、そんなことがあって、人を殺した錦が、貴未に心をあっさり開いてることが心配である。錦が優しすぎる。そんなんじゃいつかその優しさにつけ込まれて錦は傷つくと思う。

おばさんは心配です。

あとヨモさん?も「もっと強く止めておけば」とか言ってたけどほんとに止めてた?

漫画特有の詰めの甘い登場人物に不安が募る。

錦はどう考えても大人気キャラだと思うのだけど、どうだろう。金木くんがどういうつもりで行動してるのかが私には分かりづらくて、その反対に錦は分かりやすくて魅力的だ。錦が幸せになれる世界が来たら良いと思う。

 

・月山どうした

アニメもあんな感じなの? と途中から不安に襲われていた。めっちゃ歌うけど?

あとなんかこの変態のキャラクター、変態と思っていいのかわからなかったんだけど、みんな金木くんの「変態!」に笑ってたから良いらしい。

あと月山、人間の食べ物食べれないくせに人間の書いた食事への渇望の文章諳んじまくりだったし、人間になりたいのかなぁ(妄想です)。

なんにせよヒデ様お疲れ様です。

 

プロジェクションマッピングとセットと衣装チェンジ

プロジェクションマッピングとっても綺麗だった。ステンドグラスやカグネの表現が、ナルステーープロジェクションマッピングというある種の工夫でこそ出来たことなのだろうなと思った。

衣装替えが多いのとか、その衣装が久々の現代劇であるが故に地味なところとか、なかなか新鮮だった。貴未の靴の色、あれで正解なの?

血が流れる、というのも生々しくて良かったと思う。見慣れた殺陣の舞台で血を流す事ってそうそう無い(真剣必殺くらいかな)し、想像で補うのではない「血を流す」「傷つく」という表現が、生と死、喰べる喰べられるということを生々しくしてるんだろうなって思った。単純に、流れる血を見慣れてないからギョッとする。

 

・ゴミ箱の蓋

サンドイッチを頬張った金木くんが、カウンター裏に駆け込んでゴミ箱の蓋を開ける。程なく音がする。吐き出した音が。

トーカはヨリコの料理を食べ、みんな水を口にする。コーヒーの匂いがする。

喰べる作品であるからして、食べる描写に手を抜かないところがすごいなと思った。

舞台の上は客席とは隔絶されてるはずなのだが、ミートボールにしろ、ペットボトルの水にしろ、サンドイッチにしろ、コーヒーにしろ、日常的なものがそこーー即ち舞台の上にあるということが、食べるという事を考える要因の一つになる。と思った。わからんけど。

 

勝吾氏演じる錦が魅力的だったのと、カテコの挨拶でクソ長いサブタイトルを流れるように読む松田氏がスゲェと思いました。

 

ベートーヴェンの『月光』を戦闘シーンに使っていた本舞台に、最後にこの言葉を贈ろう。

月も出ていない、死者の脂が燃えて雲底を紅く照らし出す地獄のような夜には、皮肉としか言いようのない美しい曲だ。

p55『虐殺器官伊藤計劃

インスタ画像はなし、感想薄め。書き直すかもしれないと思いながら多分書き直さない。

これからいろんな人の感想を読むのを解禁です。